第6話 家族への贈り物。
魔導具のおかげで、昨夜は驚くほど快適に眠れた。
それもあってか、ノアが起こしに来る前に起きれたし、ちゃんと朝食も取れた。
実に気分がいい。
食後、部屋に戻って寛いでいると、ノアがお茶を持ってきてくれた。
ノアはいつものように紅茶を淹れながら、口を開く。
「今日は早起きされ、朝食もしっかりと召し上がられたので、ほっとしております」
「……これからは起きれるし、食べるよ……たぶん」
「昨日の魔導具のおかげですか?」
「そうなんだよ。睡眠環境は大事だからな。しっかり眠れるだけで、頭の働きも全然違う。おかげで今日は母さんたちの魔導具作りも捗りそうだ」
「そうですか。では、昼食の時間になりましたら、またお声をかけますね」
「あぁ、そうしてくれ」
ノアは部屋を後にし、俺は改良した魔導具を持って、私室の隣にある作業部屋へ向かう。
……やっぱり自分用にもう一つ作って、部屋と作業部屋に置こう。
いちいち持ち運ぶのは面倒だ。
作業部屋の扉を開けると、そこには朝とは思えないほどの熱気がこもっていた。
「……暑い」
昨日は魔導具のおかげで快適だった分、この温度差はつらい。
……作業部屋に置く魔導具に、タイマーみたいな機能を付ければ、この熱気を浴びずに済むかな……。
まぁ、それは後にして、母さんたちのを先に作ろう。
昨日作ったのを元に、母さんとティアナの魔導具は冷却機能を三割ほど抑える。
温度調節が一目で分かるように、温度に反応する目盛りも追加して――
よし、完成だ。
昨日作ったものを少し調整するだけだったから簡単だ。
「さて、母さんに試してもらおう」
完成した魔導具を持って母さんの部屋へ。
コンコン――
「母さん、昨日話していた魔導具が完成したよ」
すると、部屋の中に控えていた侍女が扉を開けた。
「どうぞ、フィン様」
侍女に促され、俺は部屋へ入った。
「はい、これ」
「まあ!もう完成したの?」
「うん、少し改良するだけでよかったから。とりあえず試してみてよ」
侍女に部屋の奥の壁際へ設置してもらい、母さんと侍女に操作盤の説明をした。
「この操作盤を使えば、この部屋の中ならどこからでも操作できるよ。手元に置いておくか、扉の近くのキャビネットに置いておけばいいと思う」
「とっても便利なのね……はぁ……涼しい――」
「今年の夏くらいなら問題ないと思うけど、魔核の交換が必要になったら、操作盤の小さな赤いランプが光るから、その時に交換するといいよ。本体にも同じ赤いランプがあるから、それを目安にしてね」
「分かったわ。ありがとう。この魔導具があれば、夏のお茶会に招いた方々に喜んでもらえるわ」
「じゃあ、俺は父さんと兄さんの分の魔導具も作ってくる」
「えぇ。無理はしないでね」
母さんの部屋を出て、ティアナの部屋へ向かっている途中で、ティアナ付きの侍女を見つけた。
「ティアナの部屋にこれを設置してもらえる?使い方は説明するから」
侍女に設置してもらい、操作盤の使い方を説明すると、俺は作業部屋へ戻った。
父さんと兄さんの分は、自分用の魔導具と同じく冷却機能を二割ほど抑えるくらいでいいかな。
あとは、さっき作った魔導具を元に、同じ要領で作っていく。
父さんの執務室は人の出入りも多いだろうし、少し広めの部屋でも問題ないように出力は維持しておこう――
コンコン――
「フィン様、昼食のお時間です」
もう少しで完成する所だったが、集中していたからか腹が減った。残りは午後に仕上げることにしよう。
「……今行く」
昼食を終えると、俺はすぐに作業部屋へ戻り、制作の続きを始めた。
――完成。
目の前に並ぶ魔導具を見て、少しだけ満足感を覚える。
慣れてくると作るスピードも上がるな。 このまま使用人たちの休憩場用の魔導具も作るか。
お読みいただきありがとうございます。
今回はフィンが家族のために魔導具を作るお話でした。
少しずつですが、侯爵家にも快適な暮らしが広がっていきます。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです。




