第68話 髭剃り、改良。
朝食を終えた俺は、髭剃り型魔導具の改良をするため、作業部屋へ移動した。
ちなみに二人は、午前中、それぞれのんびり過ごすみたいだ。
……さて。
とりあえず、持ち手から改良していくか。
今の持ち手より一回り大きくしてみよう。
薄型鉄板に魔力を纏わせ、楕円状に形成していく。
……。
もう少し大きくても良さそうだな。
……こんなものか。
柔軟樹脂を巻き、固定していく。
次に、持ち手部分に魔導回路を描いて……
よし。
とりあえず、ヘッド部分はさっき試した髭剃り型魔導具のでいいか。
刃や振動、保護板は問題なさそうだったんだよなぁ……。
子供や女性でも使える、肌に優しい髭剃り型魔導具か……
あ。
前世で気になってた最新の髭剃りがあったな。
高くて買えなかったけど、あれを再現するのはどうだろう。
確か、回転式は敏感肌の人も使いやすいって、記載されてた気がするんだよな。
そうなると、往復式と回転式の二つから、肌質によって使うものを選べるようにするのは、ありだな。
これもアレク叔父さんと要相談だ。
……あ。
……忘れるところだった。
肝心の洗浄機能を。
ヘッド部分の内側に、水属性と風属性の魔法陣が接触しないように組み込んでいく。
一番細いペン先でも接触しそうになるくらい、細かいな。
魔力を流して、調整する。
……よし。
持ち手部分に、ヘッド部分を取り付けて……起動。
あぁ――……違うな。
洗浄機能を作動させるスイッチを、別でつけるべきだな……。じゃないと、剃りながら洗浄することになる……。無駄に魔核を消費させるだけだし。
起動停止スイッチの下に、洗浄機能を作動させるスイッチを付けようかと思ったけど……。そうすると、持ちづらくなるよな?
んーー……
起動停止スイッチと洗浄機能スイッチで、魔核を挟むように上下に付けるのが無難か。
……でも、ヘッド部分にスイッチが近すぎるんだよなぁ。
スイッチをすごく小さくするか、洗浄機能のスイッチだけヘッド部分に付けるか……。
……でも、ヘッド部分にスイッチを付けたら、上の方を持つときに邪魔になるよなぁ。
持ち方を考えると、起動停止スイッチも小さくして、横に並べるのが一番良さそうだな。
薄型鉄板で、人差し指の爪ほどの大きさのスイッチを二つ作った。
……このスイッチに柔軟樹脂を貼ったら、もっと押しやすそうだな。
でこぼこを作って、起動停止か洗浄機能か、触って分かるようにするのもありか。
前世では、シャンプーのポンプ部分に触って分かる突起があったりして、なんだかんだ便利だったし。
それならスイッチを覆うように柔軟樹脂をつけるより、細かくカットした柔軟樹脂を、突起としてボタンに取り付けるのが良さそうだな。
起動停止は十字型に、洗浄機能は横線になるように、柔軟樹脂をカットした。
ん――……
なんか、ダサくなったな。
まぁ、いいか。
アレク叔父さんに指摘されたら、いい感じに突起を付けるように言えばいいし。
突起をつけた二つのスイッチを魔核の下に取りつけて……完成だ。
……剃り心地は、変わらずいいな。
これなら問題なさそうだ。
あとは、洗浄機能の確認だな。
洗浄機能のスイッチを押したら、すーっと風と水が流れたような気配の後、ヘッド部分が綺麗になった。
コンコン――
「フィン様、昼食のお時間です」
「……今行く」
良かった。キリがいい所まで出来て。
食堂へ行くと、すでにウィルとガレスが席に着いていた。
「お待たせ。 食べようか」
今日のメニューは肉厚なハンバーガーとポテト、あとはサラダとスープだ。
「これ、サンドイッチに似てるけど、別のものか?」
「うん。前世ではハンバーガーって呼んでたんだ」
「へぇ。 ということは、カトラリー使わなくていいやつか?」
「あぁ、サンドイッチのように、かぶりついていいよ」
「私は、カットして食べようかな」
俺たちは、さっそく一口食べた。
……肉汁すごいな。
「うまいな、これ!」
「……本当だね。肉の旨味がすごい」
……あ。
肉汁が溢れ出るように、ゼラチンで固めたものを、タネの中に入れて焼いたのかな。
俺の曖昧な説明で、よく再現したな。
さすが料理長だ。
「フィンは昼も、作業部屋にこもるのか?」
「そのつもり。改良は出来たけど、まだ試したい事があるから」
「私たちは昼から飲もうかって話してたんだ。 フィンも気が向いたら、応接室に来てね」
「実は、ちょっといい酒をいくつか持って来てたんだ!」
「……それって、レイグレン伯爵が集めてる酒じゃないよね?」
「……」
「もしかして、勝手に持ってきたのか?」
「……数本くらいバレないだろ!」
「レイグレン伯爵が酒を集めるのが趣味なのは、周知の事実だよ? それくらい酒好きなら、数本でもなくなってたら、すぐに気付くと思うけど……」
「ガレス、今回はうちにある酒にしておけ」
「……せっかく持ってきたのに。 しょうがないか……」
食事を終え、俺は作業部屋へ戻った。
二人は昼から、ちびちび飲みながらリバーシをするつもりらしい。
第68話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回は髭剃り型魔導具をさらに改良しました。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




