第65話 三人で過ごす夜。
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夕食の時間になり、食堂へ向かった。
「あれ? なんかウィルやつれてない?」
先に食堂へ来ていたウィルが、心なしかぐったりしているような……。
「……昼、読書を終えてガレスのところへ行ったんだけど……今まで休憩なしで、リバーシの相手をさせられていたんだ」
「だって、マティが明日の夕方には来るんだぞ。それまで、リバーシの特訓に力を入れるべきだろ?」
……どんな脳筋だよ。
「だとしても、休憩は必要でしょ。 避暑に来たはずのウィルが干からびかけてるよ」
「……確かに」
「いや、そこまでではないよ……」
そう言いながら、ウィルは苦笑している。
その間にも、使用人たちが次々と料理を運んできた。
「本日はフィン様ご希望の生姜焼きでございます。料理長から、良い豚肉が手に入ったので、そちらを使わせていただいたとのことです」
「お、それは楽しみだな」
「なんの肉だろうね」
「レッドボアあたりか?」
「肉と脂身のバランス的に、グレートボアじゃないか? それに、レッドボアの生姜焼きは食べたことあるから、わざわざ『いい肉が手に入った』なんて言わないと思うし」
使用人が料理を運び終え、下がった。
ナイフで生姜焼きを一口サイズにカットした。
柔らかく、切れ味もいい。
口に運ぶと、肉の旨みと脂の甘みが、生姜とよく合っている。
「っ!うまっ!」
「……美味しい」
「米が進むな!」
「そうだね。 生姜焼き……だっけ? これ、王城の食堂にあったら最高なんだけどなぁ」
「あぁ、確かに。騎士にも文官にも人気が出そうだな。 結構簡単だからレシピを渡そうか? ちゃんと料理長に書いてもらうし」
「……そうなると、フィンの発案ってことになるから、勝手に王城へ持ち込むわけにもいかないか。ちょっと相談しておくよ」
「分かった」
生姜焼きって、前世では家庭料理だったからか、そんな大事にするのは不思議というか、なんというか……。
「もし、今回の相談が上手くいけば、他のレシピも王城の食堂で……」
「あぁ。俺は別にかまわないよ。 そうなれば、父さんや兄さんたちも食堂で食べられるようになるわけだしね」
「俺は、唐揚げがあれば嬉しいな!」
「……ガレスは王城の食堂で食べないでしょ」
「いや、たまに登城する時があるんだけど、その時に食堂に寄ったりしてるぞ」
「え、それっていいの?」
「マティが一緒だからな」
「文官をしてるマティと一緒なら、問題にはならないけど、あまりいいことでもないね」
「俺、食堂の料理長とか仲良くなったから、大丈夫だろ」
「……そういう問題?」
俺とウィルは苦笑いをした。
「実は、前にこの話を父上にしたことがあるんだ。王城でも食べられるようにならないかって。でも、その時は発案者のフィンがまだ未成年だったから」
「そうなのか? 別に良かったのに。 それこそ、父さんにでも言えば、嬉々として協力してくれたと思うけど」
カツサンドで喜ぶくらいだからな。
「王城の食堂もいいけど、フィンが店を開けばいいんじゃないか?」
「いや、俺、魔導具師なんだけど……」
「いい案かもしれないよ! フィンが店を出して、王城の食堂にレシピの許可を出してくれたら、スムーズに話が通ると思うし」
「それに、リリエン商会に伝手があるんだから、上手くいくんじゃないか? フィンはレシピを渡して、試食するだけでいいんだから」
「えぇ――……」
「そうなったら、俺の屋敷の近くに店を出してくれ! 毎日通うから!」
……自分の欲に忠実だな。
その後も三人で話をしながら食事を続け、食べ終えた。
「なぁ、食後に少し飲まないか?」
「いいね」
「俺もいいよ」
食事を終えた俺たちは、そのまま応接室へ移動した。
使用人に酒とつまみを用意してもらい、三人でソファに腰を下ろす。
ついでに、作業部屋にある髭剃りの魔導具も取ってきてもらった。
「二人に見てもらいたいものがあるんだった」
「ん? なんだ?」
「これ」
そう言って、テーブルの上に完成した髭剃りを置いた。
「……なんだこれ?」
「あ、作っていた髭剃りの魔導具かい?」
「そう。」
「もう出来たのか?! さすがだな!」
「明日の朝、二人に使ってみてもらおうと思ってるんだけど」
「おぉ! 使ってみたい!」
「私も興味がある」
「とりあえず一つ作ったんだけど……朝、髭剃らずに俺の部屋に集合でいい? 使用感とか聞きながら試して欲しいから」
「あぁ。フィンの部屋へ行くよ」
「俺たちが行く時には、ちゃんと起きてろよ」
「……分かってる」
「私たちが起こすことになりそうだね」
……こんな時、ノアがいれば。
休暇中だから仕方ない。
起きられるとは思うが、一応使用人に起こしてもらえるように、あとで頼んでおこう。
このあとも、三人で酒を飲みながら、楽しく過ごした。
第65話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、三人で楽しく過ごす夜のお話でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




