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侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜  作者: 西 悠希


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第63話 新たな魔導具作り。



朝食を終えると、俺は作業部屋へ戻った。


……さて、だいたいの構想は練られたから、とりあえず本体を作ってみるか。


本体は無難に薄型鉄板で、問題ないだろう。大きさは手の平に収まるくらいがいいな。


薄型鉄板に魔力を纏わせて、形成していく。


……一旦、円柱型にしてみたが少し握りにくいか。もう少し楕円の方が良さそうだな。


楕円形に整え、実際に握ってみる。

……うん。こっちの方がしっくりくる。


ただ、前世では握りやすく滑りにくいように、持ち手にゴム製の部分があったんだよな……。


……今持っている素材だと、絶熱樹脂だけど、本体自体は熱くならないはずだ。

それなら、わざわざ絶熱樹脂を使う必要もないか。別の素材で、握りやすく滑りにくいものを探した方がいいかもしれない。


……柔らかくて滑りにくい素材なら、柔軟樹脂が使えるか。 確か、少しだけ残っていたはずだ。


棚から柔軟樹脂を取り出してみる。


……やっぱり、これだけか。


残っている量を確認すると、髭剃りの持ち手を作るには十分そうだが、これを使い切ればほとんど残らない。


またリリエン商会に素材を買いに行かないとな……。


柔軟樹脂を持ち手の周囲に合わせてカットし、芯材に巻き付けながら固定していく。


……よし。これなら持ちやすいな。


さて、次は刃だな。


今ある剃毛用の刃を使えば、刃を用意する手間は省ける。 ただ……あれをそのまま左右に動かして、本当に上手く髭を剃れるだろうか。

前世の往復式は、もっと細かな刃が並んでいたはずだ。


……やっぱり、刃そのものから考えた方がいいか。


剃毛用の刃には、確か刃鋼が使われていたはずだ。 ……なら、刃鋼を加工して作ればいいか。


……あれ?


刃鋼、残ってたっけ?


棚を確認してみるが、目当ての素材は見当たらない。


……ないな。 仕方ない。昼からリリエン商会に買いに行くか。


そうなると、ヘッド部分を先に作っておいた方がいいな。


ヘッド部分は薄鋼板で、刃を固定する部分と、その周囲を覆う部分に分けた方がよさそうだ。


刃が肌に直接触れないように、薄い保護板を間に入れる。 そこに細い隙間を作れば、髭だけを刃に触れさせられるはずだ。


……よし。これならいけそうだな。


あとは刃を取り付ければ完成だけど、肝心の刃鋼がない。

……なら、先にヘッド部分に魔導回路を描いておくか。


ヘッド内部に魔力が行き渡るよう、魔導回路を引いていく。

扇涼《ヴェント》ほどではないが、これも細かく描く必要があるな。


魔力の通りを確認しながら、丁寧に描き込んでいく。


……。


……あ。


曲線になってるから、描きづらいな……。


歪んだ箇所を何度か訂正しながら、ようやく描き終えた。


……よし。魔導回路はこれでいい。

今出来るのはここまでだな。


魔導時計を見るともうすぐ、昼食の時間だ。少し早いけど、食堂へ行くか。



食堂でお茶を飲みながら待っていると、しばらくしてウィルとガレスもやってきた。


「久しぶりに、二度寝できてスッキリした!」


「良かったね、ガレス。私も、ずっと気になっていた本をやっと読めたよ」


「俺も、キリのいいところまで魔導具作りを進められた」


そう話していると、使用人が料理を運んできた。


料理をテーブルに並べ終えると、使用人は一礼して食堂を下がっていった。


「なんだ、これは? 麺料理なのは分かるけど」


「素麺だよ。 このつゆに浸けて食べるんだ。 お好みで、薬味とかも自由に入れてみて」


「……!この薬味……だっけ? すっげぇ、さっぱりさせてくれるんだな」


「それは、おろし生姜と茗荷だ。 結構いけるだろ? こっちの小ネギもいいアクセントになるから、おすすめだ」


「シンプルなのに、すごく美味しいね。 ていうかこれ、ワサビだよね? 結構貴重なものだけど」


「たまたま手に入ったらしい。せっかくだから、素麺と食べたいと思って」


「へぇ……そんなに貴重なものなのか。俺も食べてみよう!」


「……あ!そんなに食べたら!」


「……?! かっっっら!!」


止める間もなく、ガレスがワサビの犠牲になった。


「こんな辛いのが貴重なのか?! 一瞬、毒かと思ったぞ」


「わざわざガレスを毒殺なんかしないよ」


一瞬、三人の間に沈黙が落ちた。


「……っ、ははは!」


「ふふっ……!」


「はははは!」


三人とも堪えきれず、思わず吹き出した。




「他にも豚肉とか鶏肉、錦糸玉子もあるから、食べてみて」


「お、じゃあ次は鶏肉を入れてみるか!」


「私は錦糸玉子をもらおうかな」


それぞれ好きな具材を素麺に乗せながら、三人で昼食を楽しんだ。


「そういえば、フィンは午後からどうするんだ?」


「リリエン商会に、素材を買いに行こうと思ってる」


「そうなのか。じゃあ、俺たちは屋敷でゆっくりしてるか」


「私は、もう少し本を読んでいたいかな」


「じゃあ、俺は……リバーシの攻略だな!」




昼食を終えると、二人を屋敷に残し、俺はリリエン商会へ向かった。



第63話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、新たな魔導具として髭剃りの制作を始める回でした。

次回も楽しんでもらえると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
男子中高生~大学生のノリが素敵……だけどコイツラ就職した成人なんだよな? 素麺フォークで食べる自信ないんだけど、箸文化あるんだろうか? フィンの前世って平成中盤生まれ(令和没)の人なのかな? 平成後…
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