第60話 もう一人の幼なじみ。
「そういえばさぁ、夜会の帰りにマティに会ったんだけど、あいつすげぇやつれててさ。ちょっと心配になったんだよなぁ」
「あぁ……今は宰相の下で文官として頑張っているみたいだよ。クローデン侯爵のコネだと思われたくないみたい」
「……え? 財務の方に行ったのかと思ってた」
「そのつもりみたいだったんだけど、マティの兄上が魔法師団にいるだろう? だから、クローデン侯爵的にはいずれマティには、宰相補佐になって欲しいみたいだね」
……宰相補佐か。
確かに、マティアスなら向いている気がする。 真面目だし、細かいところにもよく気がつく。
……まぁ、俺にはちょっと細かすぎるけど。
「それで、あんなにやつれてたのか?」
「本人は大丈夫だと言っていたけどね」
「大丈夫には見えなかったけどなぁ。避暑の期間も二、三日しか休めないかもって言ってたし」
……あいつ、昔から真面目すぎるんだよな。
ばぁちゃんみたいにマナーにもうるさいし。
「俺とウィルは、フィンの屋敷でゆっくりするって話したら羨ましがってたけど、結局マティを誘わなかったんだな」
「……三人で決めたことだったから」
「フィン。今の間は、絶対忘れてただけだろう?」
……まぁ、確かに忘れてたというか。
「フィンがいいなら、マティも呼ぶのはどうだろう? そろそろマティも、フィンの前世のことについてクローデン侯爵から聞いてるはずだよ」
あぁ……今後、宰相補佐になるなら聞いてるだろうな。
「じゃあ、これからはマティに誤魔化すこともしなくていいんだな!」
「あぁ。フィンが今まで口を滑らせなかったのが奇跡だよね」
「それ思う!」
「でも、二人に知られるまでは五年くらい、家族と陛下、それに宰相くらいしか言ってなかったんだけど。だから、俺は口が堅いんだよ」
「……口が堅いとかじゃなくて、抜けてると言うか」
……え?
「そうそう! フィンってしっかりしてそうに見えるけど、そうでもないしな」
えぇ――……
「本当に前世では大人だったのかも怪しいよな」
「そうだね」
「……一応、二十六歳くらいまでの記憶はあるんだけど」
「えっ?! そうなのか?!」
「二十六歳……。そんなに大人だったのか……そうは見えないな」
「俺もそう思う!」
「二人とも、ひどくない? まぁ、心が体の年齢に引っ張られてた感じはあったんだけど」
「それなら納得だな!」
……そういえば、他のみんなにも何歳までの記憶があるって、ちゃんと言ってないような気もする。
まぁ俺自身、何歳まで生きてたのか、はっきり分かってないけど。
「……とりあえずマティアスを呼ぶとして。ウィル、手紙を書いてくれ」
「いや、そこはフィンが書くべきだよ。フィンが招待するんだから」
「俺は手紙とか苦手なんだよ」
「分かる! 俺も手紙苦手。要件だけでいいのに、毎回前置きが長々と……」
「それに、俺からの手紙より、ウィルからの方が早く届くだろ?」
「……しょうがない。私が書くよ」
使用人にレターセットを持ってきてもらい、ウィルに手紙を書いてもらった。
「これ、ウィルからだから、早めに届けて」
「かしこまりました」
……よし。完璧だ。
「そろそろ、リバーシを再開しようぜ! 俺、まだ一勝もしてないし。それに、マティが来るならそれまでに少しでも強くなっておきたい」
「そうだね。今のうちにコツを掴んでおけば、マティがリバーシを覚えるまでは勝ち続けられるだろうね」
「……いや、マティアスならすぐにルールを覚えて、なおかつ角を取りに来そう」
「まぁ……確かに。とりあえず出来るだけやり込んでおくべきだね」
「そうだな! 今度こそ俺が勝つ!」
「ガレスには負けないよ」
「望むところだ!」
……二人とも、すっかりリバーシに夢中だな。
それから何度もリバーシを繰り返しているうちに、気づけば夕食の時間になっていた。
「そろそろ食堂へ行こうか」
「あぁ」
「もうそんな時間か!」
俺たちはリバーシを片付け、食堂へ向かった。
第60話を読んでいただき、ありがとうございます。
もう一人の幼なじみ、マティアスを呼ぶことになりました。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




