第59話 あの頃の話。
「そういえば、フィンが『向こうの世界には魔法がない』って言った時は驚いたな」
「あぁ。それは俺も覚えてる」
「魔法がないのに、どうやって生活しているんだって聞いたら、フィンが色々説明してくれたよね」
……魔法の代わりに電気があるとか、いまいち説明出来てなかった気もする。
「初めて作った魔導具が乾風だったよな? あれ、母上が喜んでたのを今でも覚えてる。『フィンが作ったんだ!すごいだろ!』って、俺が自慢してたもんな」
「私も、母上やエルーシアに『私の友人は素晴らしいでしょう』と言っていたよ」
……なんとも恥ずかしい話だな。
「そういえば、乾風を作った時、フィンは変なこと言ってたよな」
「……何だっけ?」
「『これで髪を乾かす時間が短くなる!』とか言って、めちゃくちゃ嬉しそうだった」
「あぁ……」
……それは覚えてる。
「フィンは昔から、自分が便利だと思ったものを作ると嬉しそうだったよね」
前世では当たり前すぎて、気にもしてなかったけど。
改めて考えると、ドライヤーって本当に革命的な道具だった。 思い出した途端、ドライヤーの魔導具作りに取り掛かったのを覚えてる。
「あ! あれも驚いたんだよ! 清浄!」
「そういえば、清浄もフィンが作ったのだったな。昔はお腹が弱かったから、あれにはすごく助けられたものだ」
……元々、洗浄トイレがあったから、そこに洗浄機能を追加しただけだけど。
ちなみに、その洗浄トイレを作っていたのが、じぃちゃんだ。
前世の記憶なんてないのに、やっぱりじぃちゃんはすごいな。
「分かる! 俺の場合は、大人の真似して辛い物を食べたりしたからだけど。 拭くのも辛かったから、清浄をフィンが作ってくれた時は感動した!」
「……ガレスが俺に、やたら辛い食べ物を勧めてきて、俺までお腹が痛くなってたし」
「それはフィンが『俺は大人だ!』とか言ってたからだろ」
「……その記憶を消す魔導具を作ろうかな」
「フィン、そんな危険な物は作る許可は出せないよ?」
「冗談だ。 それにそんな物、作れる気もしないし」
……まぁ、陛下にも危険な物は作らないと約束してるしな。
だから今みたいに、前世の記憶があっても自由に魔導具を作らせてもらってるわけだ。
「でも、フィンが前世の話をした時は本当に驚いたよ」
「……まぁ、普通は信じないよな」
「私たちは信じたけどね」
「あの頃の俺たちは、何でも面白がっていたからな」
「ガレスは今でも何でも面白がってるだろ」
「まぁ、そうだけど!」
……本当に、ガレスは昔から変わらないな。
「今でも信じ難いのは、飛行機……だったか? 鉄の塊が空を飛ぶという話だな。魔法もない世界で物を浮かせ、それも大勢を乗せて飛ぶ。魔法があるこの世界でさえ、そんな乗り物はないというのに」
「確かに、あの話は現実離れしすぎてて、俺も信じきれてない。あと、馬のない馬車もな。車……だったか? 飛行機よりは、まだ分からなくもないけど」
……まぁ、そう言われると反論しづらい。
前世では普通に空を飛んでいたけど、この世界では空を飛ぶ乗り物なんて見たことがない。
……いや、ワイバーンに乗って移動することはある。 が、よっぽどの遠出の時に乗るくらいだ。 俺も二、三回くらいしか乗ったことがない。
そう考えると、二人が信じられないのも当然か。
「そういう魔導具は作らないのか?」
……すっごくキラキラした目でガレスが見てきた。
「……車が欲しいなって思った事あるけど、車の構造をちゃんと理解してないからな。どう魔導具に変換するか……難しいところだ。 いつか作れたらいいなって感じだな」
「ぜひ、作って欲しいね。 私が第一号に乗るよ」
「いや、俺が乗りたい!」
……この二人に試乗させたら事故りそうだな。
第59話を読んでいただき、ありがとうございます。
フィンたち三人の昔の話でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




