第58話 三人で過ごす午後。
「よし! 次こそ俺が勝つ!」
アイスを食べ終え、食後のお茶もそこそこに、俺たちは再び応接室に戻ってきた。
「これ、前世のゲームを再現したんだよね?と言うことは、フィンはやり込んでるよね?」
「まぁ……リバーシは子供でも出来る簡単なゲームだったから、みんな小さい頃からやってるゲームだったと思う」
「なら、必勝法とかもあるんじゃないか?」
「あぁ――……」
……角を取ることくらいしか知らないな。
「まぁ、実際にやってみた方が早いか」
「おっ、フィンもやるのか?」
「うん。見てもらった方がいいと思って」
俺は二人の向かいに座り、盤面を整えた。
「じゃあ、俺が先にやってみるよ」
「よし!俺が相手だ!」
ガレスが意気込んで向かいに座る。
「……フィン、手加減は?」
「必要?」
「いらねぇ!」
「じゃあ始めよう」
ゲームを進めていくうちに――
「……そこを取るのか?」
「うん」
「あ……こっちもひっくり返された!」
「なるほど。こうやって相手の動ける場所を減らしていくのか」
ウィルが横から盤面を覗き込む。
「だから角を……。そういうことか」
「え、俺まだ分かってないんだけど! ……角を取る方がいいのか?」
「そうみたいだね」
「あ! 角、全部取られた! もっと早く教えてくれよ!」
「……聞かれなかったから」
「そういう問題かよ!」
ウィルが苦笑する。
「では、次は私がフィンとやってみようかな」
「お、いいな! ウィルもやってみろよ! あっ、やられた!」
ガレスとの勝負は、俺の圧勝で終わった。
「じゃあ、次はウィルと俺だな」
「あぁ。手加減はいらないよ」
「分かってる」
盤面を挟んで向かい合う。
「では、始めよう」
「うん」
ウィルは一手置くたびに盤面をじっと見つめる。
先ほどまでとは違い、かなり慎重に盤面を見ている。
……さっきの俺の手を参考にしているのか。
「……ここだ」
ウィルが駒を置く。
「なるほど」
俺も駒を置く。
「……やっぱり、フィンは強いね」
「そう?」
「さっきガレスと対戦していた時より、明らかに考えさせられているよ」
「ウィルがちゃんと考えてるからだろ」
「それでも、簡単には勝てそうにないな」
ウィルが思っていた以上に善戦している。
……ちゃんと俺の手を覚えてるのか。
さすがに、一回目から負けるわけにいかないし、とりあえず角は取っておきたいな。
「……」
「あ、角……。 狙っていたのに、難しいな」
……よし。
これなら大丈夫そうだな。
「……負けたか」
「初めてにしては、かなり強かったよ」
「そう? なら、もう一度やろう」
「え?」
「次は勝てる気がする」
「おい、俺ももう一回だ!」
「では、私とやろうか」
「望むところだ!」
二人は盤面を挟んで向かい合った。
「そこだ!」
「……そう来ると思ったよ」
「なっ……!」
ウィルは冷静に駒を置き、ガレスの駒を次々とひっくり返していく。
「くそっ! またかよ!」
「ガレスは少し勢いがありすぎるんじゃないかな」
「うるせぇ!」
この勝負はウィルの勝ちで終えた。
「さすがに少し疲れたな」
「頭を使うからな」
「俺はまだいけるぞ!」
「ガレス、少しは休もう」
「……仕方ねぇな」
お茶を用意してもらい、三人で一息つく。
「それにしても、リバーシって面白いな!」
「そうだね。最初は簡単なゲームだと思っていたけど、考え始めると意外と難しい」
「俺もまだよく分かってねぇけどな!」
「ガレスはもう少し考えてから置いた方がいいと思うよ」
「分かってるって!」
……二人とも、すっかりリバーシに夢中だな。
こうして何も考えずに三人で遊ぶのも、久しぶりだ。
「そういえば、昔もフィンから色々な話を聞いたよな」
「そうだな。前世の話だけじゃなくて、向こうの世界のことも色々聞いた」
「……そんなに話してたっけ?」
「かなり話していたと思うよ」
「俺たち、フィンが話すことなら何でも面白がって聞いてたからな」
「そうそう。知らないものばっかりだったし」
……そうだったか。
前世の記憶を思い出したばかりの頃は、向こうの世界のことを誰かに話せるなんて思ってもいなかった。
魔導具作りに興味を持って作り始めたのをきっかけに、じぃちゃんに怪しまれてバレてからは、家族くらいしかこのことを知らなかったしな。
……まぁ、商売の関係でアレク叔父さんも巻き込み、陛下へ報告することになったけど。
それでも、ウィルとガレスには話してもいいと思ったんだよな。
二人なら、きっと変に思わない。……いや、変に思ったとしても、気にせず聞いてくれると思ったんだ。
……やっぱり、話してよかったんだろうな。
第58話を読んでいただき、ありがとうございます。
久しぶりに三人でゆっくり過ごす回でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




