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第61話 避暑の楽しみ。



食堂に入ると、唐揚げの香ばしい匂いがする。


「っ!唐揚げじゃん!」


「久しぶりに見るね」


「二人とも唐揚げ好きだったよな」


「もちろん!フィンのところで食べてから、好きな料理の一つになったんだよ」


「私も好きだよ。……ただ、これは?」


「おろし唐揚げ。夏だから、少しさっぱり食べられるようにしてみた」


「おろし?」


「大根をすりおろしたものだよ。唐揚げに乗せて食べるんだ」


「へぇ……」


ガレスがさっそく唐揚げに大根おろしを乗せ、一口食べる。


「……うまっ!」


「本当だ。唐揚げなのに、後味がさっぱりしているね」


「だろ?」


……やっぱり夏は、おろし唐揚げだ。


「この魚も美味しいな」


ガレスが箸を伸ばしたのは、焼いた白身魚だった。


「それ、香草焼きだよ。臭みも少ないし、さっぱり食べられるから」


「へぇ。こういう食べ方もあるんだな」


「うん。俺も好きだよ」


ウィルはその隣に盛られていた野菜にも箸を伸ばす。


「この野菜も美味しいね」


「それは夏野菜の焼き浸し。冷やしてあるから、さっぱりしてるよ」


「本当だ。こういう料理なら、暑くても食べやすいね」


「だろ?」


「フィンの屋敷に来ると、本当に食事の時間が楽しみになるよ」


「俺も。新しい料理も嬉しいし、こうやって好きな物を出してくれるのも最高だよな!」


二人とも次々と料理に箸を伸ばしていく。


「このスープも美味しいね」


ウィルが椀を手に取る。


「こういう温かいものもあると落ち着くよ」


「本当、良く考えつくよな。なにげにすげぇバランスいい食事だし」


「夏バテは避けたいからな」


「夏バテ?」


ガレスが首を傾げる。


「あぁ……暑さにやられて、ダウンする的な?」


「なんだそれ」


「暑さで食欲が落ちても、ちゃんと栄養を取れるようにしているってことかな?」


「まぁ、そんな感じ」


「前世では夏になると、こういうことを考えて食事してたんだよ。 俺がいた国は四季もあったから、その季節に取れる物を食べるといいって言われてたりもしたし」


「季節に取れる物?」


「うん。夏なら夏野菜とか、秋なら魚やキノコとか。旬の物は美味しいし、栄養もあるって言われてたな」


「へぇ……」


ウィルが料理を見渡す。


「だから、この時期はこういう料理が多いんだね」


「まぁ、せっかくだからな」


この国にも四季はある。けれど、日本ほど酷暑になったり、極寒になったりすることはない。


食事を楽しんだ後、俺たちはそのまま食堂で食後のお茶に移った。


「……食べすぎた」


「満足した?」


「あぁ! 来た甲斐があった!」


「それ、避暑に来た感想としてどうなんだろうね」


「いいじゃん。美味い飯が食えるんだから!」


ウィルが苦笑する。


そんな二人を眺めながら、俺もお茶を口にする。

……俺も唐揚げ食べすぎたな。


「失礼いたします」


その時、使用人が食堂へ入ってきた。


「ウィルフリード殿下。お手紙が届いております」


「ありがとう」


差し出された封筒をウィルが受け取った。


「マティからだね。……二日後、仕事が終わってからこちらに向かうそうだ。三日間、休みを取れたみたいだね」


「おっ、じゃあマティも来るのか!」


「うん。帰りは私たちと一緒になりそうだね」


「……猶予は二日か。ウィル、フィン! それまでリバーシの特訓だな! マティから一度は勝ち取りたい!」


「……ガレスは俺たちに勝ててもいないけど」


「……二人にも、絶対一勝はしてやる!」


「でも、ガレスが上手くなるのと同時に、私たちも上達するんだよ? それに、ガレスの考えてる事はだいたい分かる」


「ガレスって、俺たちといる時は気を抜いてるのか、本当に分かりやすくなるよな。普段は貴族然としてるのに」


「そう言われると恥ずかしいんだが! そりゃあ、友達の前くらい素の俺でいるだろ」


「まぁね。私もだ」


……俺は――


「フィンはあまり変わらないね」


「いや、ちゃんと貴族対応できるぞ?」


「そうだけど、フィンはなんて言うか……フィンなんだよなぁ」


「うん。公式の場で言葉を改めていたけど、フィンはフィンだった」


……よく分からん。


「まぁ、今日はかなり遊んだし、そろそろ休もうか」


「そうだな。俺、部屋に戻ってもう少しリバーシのこと考えてみる!」


「まだやるの?」


「だって二日しかないんだぞ!」


「……ほどほどにね」


「分かってるって!」


ガレスはそう言うと、意気揚々と食堂を出ていった。


「じゃあ、私も部屋に戻るよ」


「あぁ。また明日な」


「うん。おやすみ、フィン」


「おやすみ」


ウィルを見送った後、俺も自分の部屋へ戻った。


……マティアスが来るまで、あと二日か。


トランプはマティアスが来るまで、取っておこうかな。

どうせ今は、二人ともリバーシに夢中みたいだし。



第61話を読んでいただき、ありがとうございます。

フィンたちが久しぶりにゆっくり過ごす回でした。

次回も楽しんでもらえると嬉しいです。

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