第44話 王城へ納品。
さて、清涼機を大型化するには……。
魔導回路は太めのペン先に変えて、魔核は大型……いや。四隅に一つずつ設置するなら、魔核は中型でも大丈夫だろう。
本体を大きくする分、魔導回路もそれに合わせて配置を調整する必要がある。
とはいえ、基本的な仕組みは清涼機と同じだ。 大型化するだけなら、そこまで難しくはない。
「よし。まずは本体から作るか」
鉄板に魔力を纏わせる。
通常の清涼機 《ブリーズ》よりも大きな鉄板だ。
「..... この大きさだと、いつもより魔力の調整が難しいな」
硬い金属が少しずつ柔らかくなったところで、慎重に形を整えていく。力任せに曲げれば歪みが出る。魔力を一定に保ちながら、少しずつ形を変えていく。
ゆっくりと曲げ、箱型に形成する。
「..... よし」
通常の清涼機 《ブリーズ》と比べると、かなり大きい。これを大広間の四隅に置くのだから、このくらいの大きさは必要だろう。
次は、風向きを変えるための羽根部分だ。
「前面の羽根部分は...... 三枚だと少ないか。大型なら七枚くらいある方が、風向きを調整しやすそうだな」
細長く加工した七枚の羽根を、本体へ取り付ける。接合部分に魔力を流し、金属同士を馴染ませる。
そして、羽根が滑らかに動くよう に微調整を加えた。
残る工程は、魔導回路と制御用の魔法陣の組み込みだ。
……ペン先が太いと、魔導回路はやっぱり描きやすいな。
ただ、大型化した分、魔導回路の距離が長くなるから、起動してから広間が冷えるまでに、多少時間がかかりそうだな。
まぁ、元々エアコンとはそういう物だと思うけど。
次は……無属性魔法を基礎にした魔力通信の回路を組み込み、冷却と送風を制御する魔法陣を配置していく。
大型化したことで回路の規模は大きくなったが、基本的な構造は通常の清涼機と変わらない。
「……ここは、少し出力を上げた方がいいか」
大広間全体を冷やすため、冷却の術式を調整する。
とはいえ、四隅に一台ずつ設置する予定だ。 一台で広間全体を冷やす必要はない。
四台それぞれが周囲を冷やし、中央へ向かって冷気を送るように調整すればいい。
……これなら、十分だろう。
最後に中型の魔核を組み込む。
「よし。起動してみるか」
……いや。作業部屋の広さで試す出力ではないな。
……廊下で試してみるか。
起動させる――。
ゴォォォ……。
通常の清涼機よりも大きな音とともに、冷気が勢いよく吹き出した。
「……うん。出力は問題なさそうだな」
音は……まぁ、静かな会議室で使うわけじゃないし、このくらい大丈夫だろう。
それより……寒いな。
廊下の広さで、これだけ効いているなら、大広間でも四隅に一台ずつ置けば十分そうだ。
..... これなら、あと三台作れば問題なさそうだな。
その後は、同じ工程を繰り返して三台を仕上げていく。
大型化したことで多少の調整は必要だったが、基本的な構造は通常の清涼機と変わらない。
そしてーー。
五日後。
大型の清涼機四台が、作業部屋に並んでいた。
「……よし。これで完成だな」
仕様書と共に、大型の清涼機をアレク叔父さんに届けて、やっと一息つけた。
数日後――。
アレクシスは商会の部下たちとともに、王城へ大型の清涼機四台を納品しに訪れた。
王城の指定された場所まで魔導具を運び込むと、あとは王城側の騎士たちへ引き渡す。
その後、アレクシスだけが案内され、大広間へ向かった。
――王城・大広間――
今回、納品の確認をしていただくのは、宰相を務めるアルベルト・クローデン侯爵だ。
「こちらがご注文いただいた大型の清涼機、四台でございます」
「.... なるほど。これが大型の清涼機 《ブリーズ》か」
「はい。通常のものより大型化されており、大広間の四隅に一台ずつ設置することで、広い空間でも冷却できるようになっております」
「……確認した。では、設置を頼む」
騎士たちが四台の大型清涼機を、大広間の四隅へ設置していく。
「では、起動してみましょう」
ゴオオオ......
「..... おぉ」
少しずつ大広間に冷気が広がっていく。
「これは.....確かに、涼しくなってきたな」
その言葉に、アレクシスは小さく頷いた。まずは、問題なさそうだ。
「制作者から、『通常のものより音が少し大きくなっているが、問題ないか?』と聞いております」
「当日は楽師たちも演奏するゆえ、このくらいであれば問題ない」
「それは、よかったです。
冷却効果も問題ありません。これなら夜会でも十分に使えそうですね」
「ああ。これなら問題ないだろう」
クローデン侯爵は、もう一度大広間を見回した。
「では、夜会で使用する方向で進める」
……無事、納品を終えた。
第44話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は大型の清涼機、完成、王城への納品でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




