第35話 家族との時間。
「次は扇涼を作る?」
「あぁ。だが、そろそろ昼食の時間だろう。キリがいいから、昼食を兼ねて、休憩にしよう」
まだ昼食まで少し時間がある。
俺とじぃちゃんは応接室へ向かうと、そこにはまだみんなが集まっていた。
「あら、ゲレオン。もう扇涼を作り終えたの?」
そういえば、俺たちが作業部屋へ向かった理由は、扇涼の制作だった。
話しているうちに、じいちゃんが清涼機に興味を持ったから、先に清涼機 《ブリーズ》の制作に取り掛かったんだよな。
「いや。清涼機を作り終えた。扇涼は昼から作る予定だ」
「まぁ、そうなの?」
「フィンが、清涼機を私たちへの土産として持ち帰ってもらおうと思っていたそうだ。ついでに、できる限り制作して屋敷中に設置しようと思ってな。領地の方が王都より涼しいとはいえ、暑いものは暑いからな」
「まぁ……フィンったら。そんなことを考えていたのね」
咄嗟の言い訳が、どうやら上手くいったようだ。
「まぁね。そのためにも、まずは実際に使って清涼機の快適さを知ってもらおうと思ったんだ。二人の部屋にも設置するから、夜も快適に眠れると思うよ」
「……フィンは昔から変わらないわね」
「そうだな。昔から、よく気の利く子だった」
それはそうだ。小さい頃から、前世の記憶があったのだから。
じぃちゃんとばぁちゃんには、優しくしておいて損はない。何かをすれば、いつもそれ以上の優しさが返ってくる人たちだったからな。
コンコン――
「失礼します。昼食の準備が整いましたので、皆様、食堂へお越しください」
「では、参ろうか。ここでの食事は楽しみの一つだからな」
食堂へ向かうと、夏らしい冷たい料理が並んでいた。
トマトとモッツァレラチーズを使った冷製パスタに、サラダと冷製スープ。騎士団に所属する父さんや兄さんたちのために、メインには塩と胡椒で味付けしたシンプルなステーキも用意されている。
「おぉ……冷製パスタか。久しぶりに食べるな」
「そうですね。夏の楽しみの一つでしたね」
それぞれ席に着き、料理へと手を伸ばす。
「やはり美味いな。この暑さで少し食欲が落ちていたが、冷製パスタは食べられる」
「えぇ。トマトもそうですけれど、サラダも夏野菜をふんだんに使っているからでしょうね」
久しぶりに家族全員で囲む食卓は、それだけで賑やかだった。
領地での出来事や、王都での近況。 他愛もない話をしながら、穏やかな昼食の時間が流れていく。
食事が一段落した頃、侍女たちが新しい皿を運んできた。
「まぁ……これは?」
「食後のデザートだよ」
「氷菓子か。珍しいな」
じぃちゃんとばぁちゃんが、チラリと俺を見た。
「最近暑いから、冷たいものが食べたくなって、冷凍する魔導具を作ったんだ。溶けないうちに食べよう」
「「美味い!」」
エミール兄さんとフィリップ兄さんも、初めて食べるアイスを気に入ってくれたみたいだ。
「……美味いな。魔導具を作っていて、頭を使ったからか、甘さが染み渡る」
……分かる!糖分摂取大事!
「……本当に美味しいわね。甘いけれど、くどくなくて、すっと溶けて」
「滞在中にこれも作ってみたいものだ」
「これがあれば、領地にいても氷菓子が食べられるわね」
食後のアイスを楽しみながら、家族との時間を過ごした。
じぃちゃんとばぁちゃんが領地へ戻ってきたことで、屋敷の空気もどこか明るくなった気がする。
だが――。
昼食の時間が終わると、じぃちゃんの意識はすぐに制作へ戻っていた。
「さて、フィン。次は扇涼作りだ。時間がもったいない。早く行くぞ」
「……え。もう行くの?」
……相変わらずのせっかちだ。
第35話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回はフィンとローゼン家の家族団らんのお話でした。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです。




