第34話 祖父との制作。
「これが扇涼の仕様書で、こっちが制作中に書いてたメモ」
「……なるほど。送風機を元にしているのか」
「うん。清涼機も、送風機を応用して作った」
「あれの仕様書も見せてくれ」
「はい」
清涼機の仕様書を手渡す。
「……見比べると、この二つは結構似ているな」
「そうだね。送風機の応用が清涼機で、清涼機の応用が扇涼かな」
「清涼機の方もつくってみたいものだ」
「二人にお土産として、清涼機を持って帰ってもらおうと思ってたんだ。それを二人が滞在中に作る予定だったんだけど、それなら、じぃちゃんも一緒に清涼機作ろう」
これなら、清涼機を作るには、ちょうどいい口実だ。
「そうだったのか。ありがとう」
「まぁ、俺一人じゃ、じぃちゃんの屋敷中に設置する分の清涼機は作れないから、手伝ってもらえるなら助かるよ」
「では、滞在中は清涼機と扇涼の量産だな」
「……え?」
……え?
え――っと……
「そういえば、じぃちゃん。リリエン商会に寄ってから来るんじゃなかったの?」
「あぁ。その予定だったのだが、今、商会が凄く忙しいらしくてな。『職人は何人いてもいい!』とアレクシスが言うもんだから……」
……あぁ。 アレク叔父さん、じぃちゃんを職人側に引き込んで、清涼機と扇涼の量産を手伝わせようとしていたのか。
……なのにじぃちゃんは、自分の屋敷分の量産を、俺に手伝わせようとしているのか。
似た者親子だな。
「ん?こっちは時間指定と書いてあるが……起動・停止か。この機能は便利そうだな」
「使わない時は停止にしておいて、使いたい時間の30分前くらいに起動するように設定しておけば、部屋が快適になってるよ」
「なるほど……使用者の生活に合わせて動作を変えられるのか」
「うん。朝起きてから起動させて、部屋が涼しくなるのを待つより、寝る前に設定しておけば、作業部屋に入った時には快適な温度になってるから」
「上手いこと考えたものだな」
「まずは清涼機から作る?」
「うむ」
薄型鉄板を魔力で纏い、形を整えていく。
「清涼機を四角に形成した理由は?」
「中に回路や魔核を組み込むなら、四角の方が空間を無駄なく使えるからね。外装も作りやすいし、修理もしやすい。あと、壁際や棚の上にも置きやすい」
「……なるほど。本体が小さくても確かに魔導回路を描き込みやすいな。では、なぜ魔導回路描写ペンのペン先を、そこまで細くした?仕様書を見る限り、わざわざ難しくしているようにも見える」
「細い方が、回路同士の間隔を詰められるから。回路を密集させても干渉しにくい。小型化するには、この太さがちょうど良かった」
「……試作を重ねた結果か。そうなると……夜会などで使われる大広間なら、本体を大きくして、魔導回路も太いペン先で描けば、広い部屋用の清涼機も作れそうだな」
確かに前世でも、広い部屋用の大型エアコンあったし、こっちでも需要はありそうだな。
「夏の社交シーズンも始まるし、試しに大広間用の清涼機を作ってみるのもいいかもね」
「そうだな。滞在中に一度試してみよう」
じぃちゃんが制作をしながら問いかけるのは、昔から一緒だ。
そうする事で、俺の頭の中も自然と整理されていく。
本体形成の次は、魔導回路だ。
「フィンが言っていた通り、ペン先を細くする事で、回路同士の干渉を避けているな。……相変わらず無駄のない魔導回路だ」
……じぃちゃんにこうやって認められると、何だかくすぐったい。
「だが……老眼には少し厳しいくらい細かいな」
「……老眼鏡の魔導具を作る……とか? 近くを見る時は自動で調整してくれるような」
「……ほぉ。それは面白そうだな。それが出来れば、遠くを見る時にも自動で調整される眼鏡型魔導具もできそうだ。だが、作るとなると……目に関する知識と、医師への確認も必要になってくるだろう」
作る前に、そういうことまで考えないといけないのか。
..... なるほど。こういうところも、アレク叔父さんと似ている気がする。
..... いや、アレク叔父さんが、じいちゃんに似たのか。
「次は送風と冷却の組み込みだな……」
やっぱり、じぃちゃんの魔導具制作のペースは早い。確認し、調整しつつ丁寧だが、迷いがないというか……すごい。
その後も操作盤の制作、調整、確認を進め、俺とじぃちゃんは、それぞれ一台ずつ清涼機を完成させた。
「……寒いな」
「……うん」
すでに作業部屋は清涼機のおかげで快適だった。
そこに、先ほど完成した二台を試しに起動してみたのだが……。
流石に三台同時起動は、作業部屋には強力すぎたらしい。
第34話を読んでいただき、ありがとうございます。
久しぶりに祖父と一緒に魔導具を作るフィンの回でした。
次回も楽しんでもらえると嬉しいです。




