第33話 久しぶりの再会。
「フィン様、おはようございます。朝食のお時間です」
「……おはよう」
ぐっすり寝たような気がするけど……もう少し寝たい。
「本日はゲレオン様とクラウディア様がお越しになりますから、早めに朝食を済ませて、準備なさいませんと!」
「……何時頃到着するか、聞いてる?」
「午前中には到着される予定です。昼食は、皆様ご一緒されることになると思います」
昼食か……。
そういえば、ばぁちゃんに食べてもらうアイスは用意できているだろうか。
アイス作ってあるか、料理長に確認しておこう。
食堂に向かうと、みんなもちょうど席に着いたところだった。
「おはよう、フィン」
「おはよう」
いつも通りの朝食だったが、今日は少しだけ屋敷の空気が違う。久しぶりに祖父母が帰ってくるからだろう。
まだ到着まで時間はある。 身なりを整え、作業部屋の最終確認をする。
..... これで、ばぁちゃんが来ても問題ないはずだ。
「フィン。ちょっといいかしら」
「ん?母さん。どうしたの?」
「先ほど侍女から聞かれたのだけど、お義父様とお義母様がお使いになるお部屋には、清涼機は置かなくていいのかと」
「あ。そういえば……この暑さだし、領地より王都の方が暑いと思うし、作った方が良さそう」
「ぎりぎりになってしまって、フィンには悪いけれどお願いできるかしら」
「うん、分かった。でももうすぐ到着予定だよね?挨拶だけ済ませて、すぐに制作に取り掛かるよ。
とりあえず、俺は部屋用と作業部屋用で二つ持ってるから、そのうち一つを応接室に持って行こう。
そこで、ばぁちゃんを足止めしている間に作る」
「……足止めって。分かったわ。それじゃあ、よろしくお願いするわね」
そんなことを話していると、そろそろ到着されるとのことで、ノアに呼ばれた。
俺は、ばぁちゃんに贈る扇涼を手に、玄関へ向かった。
玄関には、すでに父さんと母さん、兄さんたちが集まっていた。
やがて馬車が到着し、扉が開く。
「父上、母上。お久しぶりです」
「あぁ。元気そうでなによりだ」
「久しぶりね……」
ばぁちゃんは、家族の顔を順番に見渡したあと、最後に俺へ視線を向けた。
「フィン。今回はちゃんとお出迎えができたのね。いつもは作業部屋から出てくるのが遅いのに。大人になったのかしら」
「……とりあえず、二人とも疲れたでしょう?応接室でお茶にしよう」
俺の話をこれ以上膨らまされる前に、ささっと応接室に誘導した。
応接室の扉を開け、二人を中へ促すと――
「……おぉ!涼しいではないか」
「まぁ!本当ね」
「父上、母上。これはフィンが作った魔導具で、清涼機です」
「そうか。フィン、いい物を作ったな」
「うん。最近暑いから」
久しぶりに、家族全員が揃った。
じぃちゃんとばぁちゃん。 父さんと母さん。 エミール兄さん、フィリップ兄さん、ティアナ。
そして、俺。
当主交代前は、この屋敷でみんな一緒に暮らしていた。 今はそれぞれの場所で過ごしているけれど、こうして集まると、昔の記憶が自然と蘇ってくる。
……そういえば、忘れるところだった。
「あ、ばぁちゃんには扇涼を、贈るよ」
「まぁ!扇子ね」
「これも魔導具なんだ。試しに扇いでみて」
「……とっても涼しいわね」
ばあちゃんに続いて、母さんとティアナも自分の扇涼 《ヴェント》を手に取り、扇いでみる。
「素敵な魔導具を、ありがとう。とっても気に入ったわ」
「扇子自体は、アレク叔父さんと一緒に選んだんだ。ばぁちゃんの濃い緑色のドレスに、この深紅が似合いそうだって」
「まぁ……アレクシスも一緒に選んでくれたのね」
ばあちゃんは扇涼 《ヴェント》を大切そうに眺めた。
聞いたことがある。 ばぁちゃんは、末っ子であるアレク叔父さんには特に甘かったらしい。
ちょっと意外だった。 アレク叔父さんは、昔から自由奔放だったと聞いている。そんな人に、ばあちゃんが甘かったというのは少し想像しにくい。
……いや。そうでもないか。
父さんと母さんも、ティアナに甘いし。
末っ子とは羨ましいものだな……。
そんなことを考えていると――
「私には扇涼とやらはないのか?」
「じぃちゃんの分は、一緒に作ろうと思って。扇子、何本か持って来てるでしょ?その中から、気に入ってる扇子を使って扇涼を作らない?」
「おぉ!そうだな。さっそく作りに行こ」
よし。これでスムーズに作業部屋へ戻れる!
「まぁ……ゲレオンったら。着いて早々……本当に二人は昔から似ているわね」
「老い先が短いのだ。気になったら、すぐに行動に移さねば」
「何を言っているのかしら。フィンの教育にも良くないですから、変なことは言わないでくださいね」
……ばぁちゃんは俺をいくつだと思ってるんだ?
もう成人して、数ヶ月経つんだが?
「分かっている。だが、昼までまだ時間がある。フィン、行くぞ」
「え、うん」
そう言うと、じぃちゃんは返事を待つことなく、さっさと作業部屋へ向かった。
第33話を読んでいただき、ありがとうございます。
久しぶりの祖父母との再会回でした。
次回も楽しんもらえたら嬉しいです。




