第126話 負けた魔導具。
「このタレ、野菜や貝にも合うわね!」
「だよな。前世で食べてたタレによく似てるんだよ。材料はうろ覚えだったけど、皆がいろいろ試してくれたみたいで。さすがローゼン侯爵家の料理人たちだ」
「それに酒も進むな!」
あー……あんなに勢いよく飲んで……。もう少し酔っ払ってきたら、惚気け始めそうなくらい飲んでるな……。
「この焼肉は、他のお肉でも美味しく食べられるのかしら?」
「うん。鳥系や豚系でも美味しいよ。まぁ俺は焼肉だったら断然、牛がいいけど」
「そうなの?だったら次に焼肉をする時は、ロックバードとかを試してみたいわね!」
……高級食材を焼肉か……いや、前世の感覚でいえば普通なのか?でもそうなると、他の魔物でも試してみたいかも。
「いいね!次やる時は美味い肉をいろいろ試してみようよ。その時の仕入れによって、食べられる肉も変わるだろうし」
「その時は、エミール兄様やフィリップ兄様も一緒だといいわね!」
「エミール兄さんは美味しいものが食べられるよって言えば、帰ってきそうだけど……フィリップ兄さんは……」
「新しい魔導具で、美味しい料理が食べられるとかなんとか言えば、フィリップ兄様も帰ってきそうな気がするけれど? 新しい魔導具には興味を示すでしょうし」
「……確かに」
フィリップ兄さんの場合、新しい魔導具だったり、新しい魔法が好きだからなぁ……。
……そうなると、やっぱり兄さんたち用の魔導具も作った方がいいのか?……いや、フィリップ兄さんに見せて興味を持ってもらって、自分で作ってもらう方が楽だな。
あっ、でもその場合、フィリップ兄さんが魔導具を寮に持って帰りそう……。そうなったら、やっぱりもう一台必要になるな……。いや、その場合はエミール兄さんも寮に持って帰りそうだな。……まぁ、いいか。気が向いた時にでも複数台作れば、屋敷のみんなも使えるだろうし。
ジュウジュウと肉が焼ける音が響く中、俺たちはそれぞれ好きな肉や野菜を焼いていたが……。
最初は気にならなかった……だけど、しばらくすると食堂の中に少しずつ煙が漂い始めた。
「フィン兄様、換気を稼働させてるのよね?」
「あぁ。窓も開けて、対策をしてたんだけど……。やっぱり焼肉だと煙が出やすいみたいだな。換気は半年前に点検してるし……」
魔導具はだいたい二、三年ごとに点検するのが一般的だけど、俺は屋敷の魔導具は年に一度は確認してる。だから、故障は考えにくい。だとすると、換気の対応が追いついてないということか……。
出力が焼肉に負けた……と。
「フィン兄様が着替えをするように伝えてくれていなかったら、お気に入りのドレスが悲惨なことになるところだったわ……。だけど、カーテンなどの処理が大変そうね」
「あー……確かに。あっ、でも洗濯機型の魔導具をこの前作ってただろう?あれがあれば、カーテンの洗濯も楽に終わると思う。リリエン工房に置いてるから、明日にでも屋敷に届けてもらえるように、手紙を出しておくよ」
ちらっと母さんを見ると、ご機嫌にワインを片手に肉を堪能していた。
……今回は怒られずに済みそうだな。
「フィン。この焼肉は食事処でも出す予定だったりするのか?」
「いや、出さないよ?」
「そうなのか?騎士たちが喜びそうなメニューになると思ったんだが……」
「今見てもらってる通り、焼肉だと、どうしても換気問題が付いてくる。昼から夕方までの間に店舗を貸し出す予定だから、掃除とか間に合わないと思うし。それなら、専門店を作った方がいろいろやりやすいと思う」
「じゃあ、その専門店を――」
「いや、食事処がまだ出来てもないのに無理だよ」
「そうか。残念だ。もし、専門店を作る時は早めに教えてくれ。次は少しくらい支援したいからな!」
「あー……うん」
……なんかすごく期待に満ちた目で見てくるんだけど。
「あぁ、そうだ!忘れるところだった!食事処の近くの街灯の件だが、要望は出ていた。だが、それほど多くはなかったな。お金に関しても、まだ難しい段階だそうだ」
「そっか。春までに少しでもいいから、どうにか出来たらいいんだけどねぇ……さすがに無理なのかな」
空き店舗が思っていたより安く済んだから、街灯のほうに少しお金を出す……か?
いっそのこと、俺がいい感じの街灯を作って……いや、作ったところで勝手に設置なんてしたら怒られるだけだろうな……。
「それなら、ローゼン侯爵家から王都の管理を担う者たちに、街灯の設置について支援を申し出てもいいぞ。私から話を通してみよう」
「えっ?ローゼン家から?いいの?」
「あぁ、もちろんだ。治安維持のためでもあるし、貴族として公共の利益に貢献することは大切だからな」
「ありがとう、父さん」
これなら、俺が街灯を作る必要は無さそうだな。
第126話を読んでいただき、ありがとうございます!
焼肉を楽しむ中で、換気魔導具の課題や街灯の話も出てきました。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




