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侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜  作者: 西 悠希


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125/128

第125話 煙とドレス。



んー……一応、窓開けておこうかな。


換気魔導具から離れた位置にある窓を開けた。


「フィン様?なぜ窓を」


「あー……今日の夕食、焼肉でしょう?結構匂いが付いちゃうと思うんだよねぇ」


「換気《ベンティ》は起動してありますよ?」


「そうなんだけど、念のためにね。焼き鳥の時のこと思い出したんだよねぇ」


「焼き鳥……換気《ベンティ》を作った時のですか?」


「そう。あの時さぁ、煙が充満すると思ってなくて……ばぁちゃんと母さんに怒られて……」


子供の頃、焼き鳥が食べたくて料理長にお願いしたら、厨房だけじゃなくて、食堂の方まで煙と匂いが来て……まぁ、その処理が大変だったみたいで……怒られた。


「それでゲレオン様と一緒に換気《ベンティ》を作られたのですよね?お二人が作業部屋と厨房を行き来していたのを今でも覚えてます。お二人にしては何度も試作をされていましたから」


「あれねぇ……風属性と水属性の調節が難しかったんだよ。どこかの窓が開いてたりすると、効力が上がったり下がったり……」


そう考えると、あの魔導具を作るのが一番時間がかかった気がする……。大変だった。


「まぁ、今回は焼肉だし、焼き鳥より煙が出る可能性が高い。だったら初めから対策をしておけば怒られないだろ?……あっ、ノア!急いで皆にお気に入りの服から着替えてって伝えて!念のために!」


焼き鳥の時、一番怒られたのがドレスに付いた匂いだからな……。よりにもよって、あの日は二人とも新しいドレスだったんだよなぁ……。こだわって作った物だとか、なんかいろいろ、とりあえず怒られた。


まぁ、今回は大丈夫だろう。



「あっ、父さん。お帰り」


「ただいま。先ほど帰宅して着替えたばかりだと言うのに、また着替えさせられたんだが、何が始まるんだ?」


「焼肉!」


「焼肉……肉を焼くのか?それで着替えを?」


「うん。焼き鳥の時、ドレスに匂いが!って、ばぁちゃんと母さんに怒られたから、念のためにね」


「そういえば、そんなこともあったな。あれは結婚記念日にイレーネに送ったドレスだったような……」


「そうなの?こだわりがどうのって二人が言ってたから、自分たちでオーダーしたドレスだと思ってた」


「あー……それは、私のセンスが信用されてなくてな……。イレーネが呼んだ服飾師に、ついでに母上もオーダーした流れだろう」


「そうだったんだ」


それでも一応、結婚記念日のドレスを送ったことになるんだ?自分で注文しても……。まぁ、気に入らないものをもらうより、その方がいいのか……。


父さんとそんな話をしていると、母さんとティアナも着替え終えたのか、食堂へやってきた。


「食堂へ向かおうとしたら、着替えてくださいって言われて何事かと思ったわ。フィン兄様、そういうことはもっと早くいうものよ」


「そうね。昼食の時に、焼肉の話をしていたから、その時にでも言ってくれていたらよかったわね」


「……そうだね」


この世界で焼肉を食べてなかったから、服に匂いがっていうのをすっかり忘れてたというか……ただ、焼肉を食べたいってことだけに集中していたというか……。


使用人たちがテーブルに焼肉の準備を整え、食堂から下がった。


「俺はこっちのプレートでティアナの分も焼くから、そっちは父さんと母さんで好きに焼いてね」


「分かった」


「あと、タレは三種類作ってもらったから試してみて」


「見た目の違いはあまりないのね?……っ!辛い!」


ティアナがタレを味見しようとスプーンですくって、口に運んだが……あれは辛口だな。先に教えるべきだったか……。


「ティアナ、こっちが甘口だ。多分こっちの方が口に合うと思うぞ」


「……フィン兄様。先に教えることを学んだ方がいいと思うわ。いつも後から言うんだから……」


「……そうか?気にしたこともなかったな」


「フィンは昔からマイペースというか、皆が自分と同じ思考をしていると思っている節があるよな」


「え?そんなことないけど」


「無自覚なのがそういうことなのよ。皆が連想ゲームをするわけでもないのだから、フィンのような思考になることはそんなにないの」


「あっ!フィン兄様はお爺様に似たのよ!子供の頃から、お爺様にべったりだったでしょう?」


「べったり……?まぁ、一緒によく魔導具を作ってたけど……」


「確かに父上もマイペースなところがあるな」


……いや、俺はじぃちゃんほどマイペースではない!……はずだ。


「あっ!焦げてる!父さんたちの方も!喋ってる場合じゃない!せっかくの焼肉なのに!」


慌てて肉をひっくり返した。

危なかった……。せっかくの焼肉なのに、肉を焦がしてしまうところだった。


気を取り直して、焼けた肉をタレにつけて口に運ぶ。


……うん!やっぱり焼肉にはこの中辛のタレだな!


「このタレ、美味しいわね!私は甘口が好きかしら」


ティアナは甘口が気に入ったようだ。


「私は中辛が好みだわ。お肉にもよく合っているし」


母さんは中辛か。やっぱりこのあたりは好みが分かれるな。


「私は辛口も好きだな!野菜につけても美味しそうだ」


父さんは辛口か。まぁ、酒を飲みながらだと辛口もいいよな。


それぞれ好みが分かれたようだ。三種類用意してもらって正解だったな。




挿絵(By みてみん)

第125話を読んでいただき、ありがとうございます!

子供の頃の失敗を思い出しつつ、家族で焼肉を囲むことになりました。

次回も楽しんでいただけると嬉しいです!

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