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侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜  作者: 西 悠希


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116/128

第116話 現場の声は大事。



翌日。


昼前。


「こんにちは」


「いらっしゃい!あれ?フィン様も一緒でしたか」


「ん?なにが?」


「ブルーノ様と侯爵夫人があちらにいらしてますけど……お連れ様ではない?」


「あー……別だね」


前に言ってたデート、今日だったんだ。


「じゃあ、好きな席にどうぞ」


「うん。あっ、いつものお願い」


「あいよ!」


変わらずカウンターの奥の席へ。


そういえば、食事処で使う食器類も考えないといけないよなぁ。……センスないのにどうしよう。

料理人が決まってから、一緒に選んでもらう方がいいか。俺が選んだら、無難に白い皿ばっかりになるだろうし。


グラスは……あっ、グラスじゃなくて、あれ、なんだっけ?冷たいのが持続する……タンブラーだっけ?もしかしたら、あの素材を使えば作れるんじゃ?


二重構造の間に断熱性のある素材を入れれば――


「お待ちどうさま!」


煮込み肉とパン 、それからスープのセットだ。


「ありがとう。いただきます」


……美味い。


そういえば、この店の食器類は店同様、温か味を感じる物ばかりだな。こだわって選んでいるんだろう。



そんなことを考えながら美味しい食事を終え、店主に声をかけた。


「えっ、調理場の理想ですか?」


「うん。改装をする予定なんだけど、俺、料理できないから調理場のことも分からないんだよねぇ。だから、どんな感じだと使いやすいとか、こういうのがあれば便利だとか、そういったことを教えてもらえたらなって」


「なるほど。そうですね……俺の場合だと身長が高いので、それに合わせて調理場の高さがあると料理がしやすかったりすますね」


そういえば前世でも、身長に合わせてシンクの高さとかを選べたりしてたな。

……でも、料理人が決まるのはまだ先だから……あっ、高さを変えられるようにするとか?……いや、そうなると水や火を使うのに危なそうだな。

アレク叔父さんに料理人の候補者を一旦聞いてみて、だいたい決まってたらその人の身長に合わせて作る……とか?


「あと、食器類の収納は思っている倍くらいあったほうが安心かなと」


「倍?そんなに?」


「忙しい時間帯だと、洗い場に手を回せなかったりするので、多めに食器を準備するんです。そうすると、その分食器棚もって感じですね」


「なるほど」


空き店舗の調理場、広かったし、その分収納スペースも確保出来そうだな。


「まぁ、洗い場担当を雇うのもありですけどね」


「確かに」


前世でもキッチンとホールに分かれて求人が出てたりしてたな。


「あっ!あと、床!料理をしてるとどうしても床が油っぽくなったりするんですよ。だから、滑りにくく掃除しやすい床だといいですね!」


……前世で学生時代に飲食店でバイトしてた時、床が滑って転けた記憶が……。持ってた食器も割っちゃったし、あれは恥ずかしかったな……。食器を割ったのも申し訳なかったし……。


床、大事だな。


「今のところ思いつくのはそれくらいですね」


「ありがとう。参考になったよ」


考えることがいっぱいあるな。


「あら、フィン様。お久しぶりですね」


「こんにちは。……あっ、おめでとうございます」


「まぁ、ありがとうございます!」


店主の夫人だ。

この前来た時もいなかったのは、そういう事だったのか。


「一人で出歩いたら危ないだろう!」


店主が夫人にかけより、椅子に座らせた。


「もう、心配性なんだから……。安定期に入って悪阻も落ち着いたから大丈夫よ」


この夫婦には確か子供が三人いて、一番上は十六歳くらいだったはずだ。

子供たちが小さい頃は店にもよく居た。

フィン兄ちゃんって、懐いてくれていたな。


「あっ、いた! 兄ちゃん、母さんいたよ! 父さんの店!」


次男が駆け込んできた。その後ろから三男も続く。


「母さん! 心配したじゃないか! 用事があるなら俺たちが代わるから!」


「……はぁ。あなたたちみんな過保護すぎよ。すみません、フィン様。騒がしくしちゃって」


「いや、みんな元気そうで良かったよ」


「あっ、フィン兄ちゃん!」


「おい、こら!フィン様だろ!」


「いいよ、別にフィン兄ちゃんで」


一番上の子は、ある時からフィン兄ちゃんって呼ばなくなったんだよな。年頃だからか。


「お腹の子が女の子の可能性があるってお医者様に言われてから、みんなこんな状態なんです……」


「なるほど。そういえば、うちも末っ子が女の子だった時の喜びようがすごかったって聞いたことがあるなぁ。まぁ、みんないまだに妹に甘いけど。

まぁ、女の子だったら、みんなますます甘くなりそうだね」


「ふふっ、そうなりそうですね」


店主も夫人も、子供たちも、みんな嬉しそうだ。


……元気な子が生まれるといいな。


「じゃあ、俺はそろそろ行くね」


「はい、またいらしてください!」


「うん。ご馳走様」



……さて、リリエン商会に向かうか。


第116話を読んでいただき、ありがとうございます!

調理場の床の大事さを思い出した回でした。

次回も楽しんでもらえると嬉しいです!

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