第102話 あったらいいけど。
「それで、どんな絵を書いて欲しいの?」
「昼は丼物とかうどんを出そうかなって思ってて、夜はお酒に合うようなメニューを考えてるんだよね。前世の料理を再現するつもりだから、知らない料理でしょ?メニューを見て、絵があったら分かりやすいかなって」
「そうね」
「カラーで、本物をそのまま絵にして欲しいんだ。写真詐欺――じゃなくて、絵詐欺……? にならないように」
「絵詐欺?」
「実物より豪華に描いたり、量を多く見せたりすることかな」
「フィン兄様。誰もそんなことなんてしないわよ……」
それもそうか。
「まぁ、まだメニューがちゃんと決まってるわけじゃないから、決まったときにまた声かけるよ」
メニューが決まって、料理人に一通り作ってもらってからの方がいいよな。昼はだいたい決まってるけど、夜のメニューだよなぁ。まだ少ししか考えてないから、もっと数を増やしたいし。
酒に合う料理……。
……俺も前世でもっと料理をしておくべきだったな。
炊飯器で簡単に作れる料理なら、作ったことあるけど……。そう考えると、やっぱり炊飯器の魔導具化は必須だな。
あっ!角煮があったら、昼は角煮丼で夜はつまみにもなるんじゃ?!俺も普通に食べたいし。
あぁ―……手羽元のさっぱり煮とかもいいよなぁ。……肉以外も欲しい。
サバの味噌煮……これは定食で食べたい。
丼物とうどん、それから日替わり定食にするのはありか……。
……日替わり定食いいかも。その時々によって仕入れられるものも変わるだろうから、日替わり定食ならそれに合わせやすい。それに季節物を考えやすくもなる。
……炊飯器の魔導具は多めに準備した方が良さそうだな。
夕食の時間になり、俺たちは食堂へ移動した。
食事をしながら他愛もない話をした。
久しぶりに家族との食事。なんかほっとするのは前世と同じだな。
正月くらいしか、実家に帰ってなかったけど。
「ねぇ、フィン兄様。食事処は昼と夜の営業なのよね?私も行ってみたいけど、友人を誘って行けるような雰囲気のお店になるの?」
「……どうだろ。令嬢たちが通うような雰囲気ではないかも。でも、温かみのある店にしたいとは思ってる。……あっ!昼と夜の合間の空いてる時間は、別の人に貸して、カフェを開くと思うから、その時に行くのもいいかも」
「そうなの?カフェだと入りやすいわね!」
「席を区切れるようにも考えてるから、周りを気にせずゆっくり出来ると思うよ」
「どうせなら各席に消音魔導具も設置してほしいわ!」
「そんな高価なものを設置できるわけないだろ……。自分で購入して、持参しろ」
……妹とは怖いものだな。
高価な魔導具を食事処に置けとは……。いや、でも……確かにあったら便利だよな。とくに夜は酒も出すし……。
まぁ、完全個室を二、三作るから、そこにだけ設置するのはいいかも……?
ウィルフリード殿下が来るなら、それも安全対策になりそうだし。
……でも高い。
「フィン兄様は、消音魔導具を作れないの?」
「あれは魔導具師の領分じゃなくて、魔導師だな」
「じゃあ、フィリップ兄様に作ってもらえば、お店に設置出来るんじゃない?」
「……いや、フィリップ兄さんは自分が楽しいことしか興味ないだろ。今さら消音魔導具を作ろうなんて思わないと思うけど」
既存の、それも十年前くらいからあるものにフィリップ兄さんが興味を示すとは思えない。
「……それもそうね」
あっ、でもBGMとかあったら、多少は周りの話し声を気にしなくなるか。……でも誰かを呼んで演奏してもらうのは……ちょっと違うんだよなぁ。
いっそのこと、ギターを作って、俺が……っ!
……そんな、ふざけたことは出来ないな。
まぁ、この辺りもゆっくり考えればいいか。まだ春まで時間はあるし、それまでにどうにかならなくても、別に困ることでもないし。
第102話を読んでいただき、ありがとうございます!
あれもこれも欲しくなる回でした。
次回も楽しんでいただけると嬉しいです!




