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侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜  作者: 西 悠希


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100/105

第100話 いつもの味。

挿絵(By みてみん)




……久しぶりに街にでも出かけようかなぁ。

最近、魔導具のことばっかりで、ゆっくり出来てなかったし。それに夏の暑さも少しだけ和らいできた。


午前中は部屋で本を読んで過ごし、昼前に屋敷を出た。

馬車じゃなくても扇涼《ヴェント》があれば、全然歩いても大丈夫な気温になってるな。


貴族街を抜け、商業区へ向かった。


さて、どこで昼食を食べようか。新しくできた店も気になるけど、やっぱりハズレたら嫌だし……いつものところかな。


店のドアを開けるとベルの音が鳴った。


「こんにちは」


「いらっしゃい!…… おっ、フィン様!お久しぶりですね。どうぞ、好きな席に座ってください!」


「あぁ。いつものをお願いするよ」


「あいよ!」


ここに来るといつも座るカウンターの奥の席に座った。

まだ昼食には早かったみたいだな。俺の他には二人しかいない。混む時間を避けられて良かった。


最後にここに来たのが夏前くらいだから、三……四ヶ月ぶりくらいか?思ったより街にでていなかったな。

いや、リリエン商会にはちょくちょく行ってたか。


ちなみにこの店は、小さい頃じぃちゃんに教えてもらった店だ。確か、リリエン商会の帰りに寄ったのが最初だったはず。さすがに小さい頃はじぃちゃんと二人で来ていたけど、学園の高等部に上がる頃には、一人でも食べに来ていた。


この店の内装好きなんだよなぁ。木の温かさがあって。

作る食事処も、こんな暖かい雰囲気の店にしたいな。


「お待ちどうさま!」


煮込み肉とパン 、それからスープのセットがテーブルに置かれた。


「ありがとう。いただきます」


……美味い。

よく煮込まれていて、肉がほどけるように柔らかい。

パンもふわふわで俺好みだ。

スープは煮込み料理に合わせてあっさりめだけど、野菜の甘みが染み出ている。

いつ来ても安定の味で、ほっとする。


食べ終えて、食後のお茶も出してもらった。


香ばしさのあるお茶で、前世の麦茶に少し似ている。

店主のこだわりらしく、三種類の茶葉を混ぜてオリジナルを作っているらしい。

昔、気になって聞いてみたけど、秘密だと言われた。


「最近はどうされてたんです?」


「相変わらず、魔導具を作ってたよ」


「あっ!うちも清涼《ブリーズ》を導入したんですよ!料理してたらどうしても暑くて大変だったんですがね、清涼《ブリーズ》のおかげでこの夏の営業もなんとか乗り越えられましたよ」


「今年はいつもに増して暑かったよね。それに耐えられなくて作ったんだ」


「いや〜本当に助かりましたよ!夏場は煮込み料理の売上が少し下がるんですけど、今年はそういうこともなくて」


「それは良かった」


まぁ、確かに夏場はどうしてもさっぱりした物が食べたくなるしな。


「そういえば聞きましたよ。店を出すって話」


「えっ?もう知ってるの?」


「はい。リリエン商会のアレクシス様が、自ら食事処を出す場所を探しているって話で持ち切りですよ! 新しい店ができるとなると、俺らも気になりますからね。今後ライバルになるわけですから。で、その店を出すのがフィン様だと」


「……もっとひっそり店を出したかったんだけど」


「いやいや〜それは無理ですよ!でもこの辺りじゃなくて、貴族街に近いところに店を考えてるんですよね?そこはありがたい。この辺りに作られたら、客が取られてしまいそうですからね」


「うん。貴族街に近いところがいいかなって思ってる。俺もふらっと寄れるような店が理想だから」


「自分の店が出来ても、たまにはここにも食べに来てくださいよ!」


「もちろんだ。ここの煮込み肉はいつ食べても美味いからな」


「ありがとうございます!またいつでも来てくださいね!」


「あぁ。また来るよ」


食後のお茶を飲み終え、店主に代金を払って店を出た。


さて、午後はどうしよう。

せっかく久しぶりに街に出てきたんだし、少しぶらぶらしてから帰るか。


商業区の通りを歩きながら、店先に並んだ商品を眺めていく。最近はリリエン商会に用事がある時くらいしか街に出ていなかったから、こうして目的もなく歩くのは久しぶりだ。


新しくできた店がいくつかあるな。今度、あそこに寄ってみるのもありか。


のんびり見て回る、こういう時間もたまにはいいな。



なんだかんだ、ゆっくり見て回って、屋敷に帰ってきた時には夕方前になっていた。


夕食まではまだ時間がある……あっ、そういえば本体に受け部分を作ろうとしてたな。それに一度組み立ててみた方がいいだろうし……。

よし、少し作業するか。


……やっぱり玄関ホールでやるしかないよな。


外装、扉、部品を順番に玄関ホールへ運んだ。

扉をここに付けるから、受け部分は……この辺りか。魔力を纏わせ、外装の受け部分になるところを形成していく。

……ちょっと小さいか?いや、ちょうど良さそうだな。よし。組み立ててみよう。


…………。


土台はもう少し大きくても良さそうだけど……軸に関してはこれでいいな。扉もぴったりだ。

あとは洗濯槽と魔導回路、属性の組み込みをリリエン工房の方ですれば――


「……フィン、こんなところで何をやっているの?」



第100話を読んでいただき、ありがとうございます!


7月24日に投稿を始めて、今回で100話になりました。

当初は100話を一区切りにして、その後は週1回くらいの更新にしようと思っていたのですが、たくさんの方に読んでいただけていることを実感し、もう少し毎日投稿を続けていこうと思います!


ここまで続けてこられたのも、読んでくださる皆様のおかげです。本当にありがとうございます!

これからもフィンたちの「快適」な暮らしを楽しんでいただけたら嬉しいです!


ちなみに、IF作品『推しは異世界で今日も「快適」に暮らしている。』も投稿しています!

本編では描かれていないフィンの学園時代などを、本編読者だった主人公・ルカの視点から描いているお話です。


本日21:00に第10話を投稿予定なので、よかったらこちらも覗いてみてください!


次回も楽しんでいただけると嬉しいです!

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