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 土埃を上げ、体操服とビブスが入り乱れボールに群がる。人一倍無駄に走り回り体力を浪費して終わるのが常のサッカーだが、そんな気力も起きず後方に構えているといつもよりこぼれ球が足元に転がって来る。やけくそ気味にクリアーしたら

「今日はいいとこいるじゃん」

 と味方に褒められた。なんなんだよ、もう。

 プレハブ部屋ができたのは去年だから、橅が星で聴いたのが俺だとすれば場所は中学の部室ということになるが、アートセンターからは距離があった。曲が一致しただけでも奇跡で、件の奏者と言われても興奮しきりな橅の言葉を鵜吞みにはできなかった。他県の金賞団体のCDを聴かせ、宇宙人でも分かるはずだと自分の演奏がいかに稚拙か説明したものの、「間違いない、繰り返し聴いてきたんだもん」と橅は譲らなかった。

 一昨年の野外コンサート、文化ホールの屋外ステージは風が強く、楽譜が飛ばされないようクリップで固定するのに四苦八苦した。

 大人数で吹いていても自分の音は聴き分けられる。よもや本番中は文句なしだと思っていたのに、翌日録音を聴いたらテンポはぐだぐだ、音程は下がりっ放し、鏡に映った姿に酔い痴れているみたいで恥ずかしさの余り死にたくなった。あんなはずじゃなかった、と思い出すだけで耳たぶが発火しそうだ。身体の中で流れる音と外へ出ていくのは全く違うのだと、思い知らされた曲だった。

 すげない対応に気を悪くしたか、橅が「私だってショックだったんだよ」と漏らしたのが癇に障り、「下手だって自己申告したよね」の語気が荒くなってしまった。きまりが悪くなり、拗ねる橅を残して自室に戻った挙句、今朝は何も告げず顔も合わせず、そそくさ家を出てきた。呆れてたよな、橅。最低過ぎるだろ、俺。見限られても引き止められないし、とっくにいなくなってたり。考え始めたらいてもたってもいられなくなった。

 切れた息が収まるのも待ちきれず、玄関を開ける。

「あれ、早いんだ」

 洗濯物の詰まった籠を抱え、橅がきょとんと立っていた。

「今日は、午前で終わりだったから。あと、昨晩はごめん」

 籠の一番上に乗っている、穴が開いた靴下と柄物のトランクス。パンツは自分で洗うって言っときゃ良かった。

「もう一回聴かせてくれたら、許してあげる」

「籠の僕畳むから、それからでいい?」

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