表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

新人

今日病院で松葉杖渡されたけど使ってないです

 シュゥゥ、という音とともに扉が開く。

 そこにクロユリ、ガレイ、ススキ、ヨモギが入っていく。


「つきましたね。では、旦那様。指揮官級の個体はこちらになります。ついてきてください」


「……ああ、わかった」


 現在、ガレイたちは軍施設内にあるバイオロイド保管区画に来ていた。

 新たなバイオロイドを起動させるためだ。


 クロユリたちが眠っていた施設は民間の物だった。それゆえ、数世紀もすればほぼ機能を停止してしまうような環境とシステムだった。

 だが、ここは軍の施設である。構成する建材も構築されたシステムも、民間と比べれば格段に頑強なものである。

 ここに眠る数百体のバイオロイドは、すべてまだ『生きて』いた。


(絶対にこんな数、名づけらんねーぞ……。いっそ数字でも名前にしてやろうか)


「……ふむ、どうやら過去に起動していたようですね。最上位の官位は大尉ですか。旦那様。まずはこの個体から起動をお願いいたします」


「わかった。……起動、俺が主のガレイだ」


 ガレイはそのバイオロイドを見て少し驚いた。

 そのバイオロイドは男性型だったのだ。

 だが少し驚いたものの、今までがたまたま女性型だっただけで、男性型があっても何もおかしくはないかと思い、いつものように起動させた。


「……大陽帝国陸軍所属、戦闘型バイオロイド、クロノ大尉、ただいまより任につかせていただきます! ……情報取得。どうやら私はもはや軍属ではないようですね」


(!? 名前がある!)


「私はクロユリと申します。クロノ大尉、大陽帝国はもはや滅びました。よって軍もありません。これからはあなたを再起動した新たな主にお仕え下さい」


「……了解しました、クロユリ。新たな主人、ガレイ様。AIは初期化いたしますか? ご存知かもしれませんが、我々軍に属していたバイオロイドは通常の個人所有のバイオロイドとは違い、個人に忠誠を捧げるのではなく、国民の安寧のために尽くすことをこそ命題としていました。よって通常の個人所有のバイオロイドでは必要な処理である、主人の変更の際のAIの初期化をせずとも新たな主人に仕えることにさほど支障はありません。むしろ、これまでAIに蓄積された経験をそのまま引き継げます。どうなさいますか?」


「……お前は名前があるんだな?」


「あった、といったほうが正しいですね。つい名乗ってしまいましたが、今はガレイ様が新たな主人となりましたので、ガレイ様に名付けていただくまでは無名となりますね」


「そうなのか……。その名前をそのまま使えないのか?」


「ガレイ様が新たに同じ名前、私の場合はクロノで名付けることは可能です」


「わかった。AIの初期化がどうとか言っていたがあれは何だ?」


(よっしゃー! これで名前で頭を悩ませなくてもいい! 助かったぜ!)


「旦那様。AIの初期化の必要はないかと思われます。今得ました情報によりますと、初期化したら今までの蓄積された経験が消える分、パフォーマンスが落ちるようです。軍属だったバイオロイドは初期化せずとも問題ございませんので、初期化せず経験を引き継がせることを提案いたします」


「よくわからんがわかった。クロノ。お前は今からクロノだ。経験は引き継げ。……これでいいな?」


「はっ! 名をくださり、ありがとうございます。このクロノ、これよりガレイ様の指揮下に入り、そのご命令を遂行するため全霊を尽くします。また、AIの初期化をせずにいてくださいましたこと、感謝いたします」


 AIの初期化はそのAIの人格の『死』にあたる。

 クロノは軍属だっただけあり、死に対する心構えはできていたが、やはり死なずに済んで内心ではかなり安堵していた。


「これからよろしく頼みます、クロノ」


「私はススキです! よろしくです!」


「ヨモギと言います。よろしくお願いします、クロノ」


「クロユリ、ススキ、ヨモギ、これからよろしくお願いします。……ところで、先ほど情報収集のために軍のネットワークにアクセスしたのですが、クロユリが最上位級の権限を持っていたようですが一体……?」


「上位権限を持つ方が軒並みいなくなっておりましたので、私が掌握させていただきました」


「いや、上位権限を持つものがいなくなったからといって、そんな簡単に……」


「私は世界トップオブバイオロイドコンテスト用に造られました、三洋重工製、超多目的型ハイエンドモデルバイオロイド、黒型、授かった名はクロユリです」


「世界トップオブバイオロイドコンテスト……。なるほど、把握しました。とんでもないものが出来上がったようですね」


 そう言ってクロノは苦笑した。



◆◇◆



 クロノを起動した後、ガレイたちは中尉と少尉も起動させ、クロノ含め3体のバイオロイドが増えた。

 これで尉官はすべて起動させた。前文明期にこの場所にあった国、大陽帝国ではバイオロイドは尉官が最高位、佐官以上は人間が付く役職だったので、元軍属のバイオロイドの陸軍トップ3を起動したことになる。


 中尉がカガリ、少尉がキリという名の女性型バイオロイドで、そのまま名付けた。AIも引き継いだ。


「クロノ、カガリ、キリ。お送りした情報の共有は終わりましたね? あなたたちの仕事は警備、治安維持といったところです。旦那様の幸福のためには、この崩壊した文明を再生する必要があります。いくら何でもこの世紀末状態は良くありませんので。その一歩として、今では失われております『国家』を作ります。すべては旦那様のために!」


「「「はっ! 新たなる主人、ガレイ様のために!」」」


(……こっかってなんだ?)



◆◇◆



 【新たな】バイオロイドローカル掲示板 その923【仲間!】


 ・ガレイ様に絶対にバレてはならない

 ・ここのノリを外で出さない

 ・必要以上に喧嘩しない

 ・次スレは950が立てること

 ・ルールは随時追加される


 ・45 クロノ

  本日よりガレイ様の従者となりました、クロノです

  これからよろしくお願いいたします


 ・46 カガリ

  同じく、カガリと申します

  戦闘でしたらお任せください


 ・47 キリ

  キリといいます

  これからよろしくお願いします、先輩


 ・48 マリー

  マリーといいますわ

  3人とも、これからよろしくお願いいたしますわね


 ・49 ツクシ

  ツクシと申します

  これからよろしくお願いいたします


 ・50 クロユリ

  はい、とりあえず挨拶は終わりましたね

  新たに入った3人は主に住人の対応をお願いすることになります


 ・51 キリ

  その住人にガレイ様は含まれていますか?


 ・52 クロユリ

  いいえ、含まれておりません


  この新国家に来た住人の素行などを見ていただきたいですね


 ・53 カガリ

  ガレイ様のお傍に、とかは……


 ・54 クロユリ

  旦那様のお傍には私がいますのであなたたちの出番はありません


 ・55 キリ

  なっ!?

  それはあんまりですよ!


 ・56 マリー

  あなた方を起動した理由が

  『ガレイ様から誰も離れたくない!』

  ですからね……



  頑張ってくださいまし


 ・57 ススキ

  ごめんね!


  ガレイ様のお風呂画像データあげるから!


 ・58 カガリ

  はぁ!?

  

  ガレイ様はまだ12歳ですよね!?

  それにその画像データはガレイ様の許可はとったんですか!?


 ・59 クロユリ

  問題ありません



  私が法だ


 ・60 クロノ

  ……現状の世界情勢は理解しました

  クロユリの権限がほぼ最上位なことも


  ですが法はガレイ様では?


 ・61 クロユリ

  旦那様はまだ法など難しいことは理解できておりません

  ですので今しばらくは妻である私が代行いたします



  旦那様は裸を見られることにやっと少し恥じらいを覚えてきました


 ・62 ヨモギ

  今までガレイ様は裸を見られても何とも思ってませんでした

  それはそれで無知なところがそそりました



  最近はさりげなく見えづらくしてくるのでさりげなく見える位置に回り込みま

  す

  恥ずかしがるところがそそります


 ・63 カガリ

  な、なんて破廉恥なことをっ!


 ・64 キリ

  私もガレイ様とお風呂一緒したいです!


  画像データはありがたくもらっておきます


 ・65 カガリ

  キリ!?


  相手は12歳の少年ですよ!?


  今すぐその違法画像データを捨てなさい!


 ・66 ツクシ

  今の世界に法はありません


  ゆえに、違法ではありません


 ・67 クロユリ

  カガリは画像データいらないのですね?


 ・68 カガリ

  ……………………


 ・69 クロユリ

  ススキ、カガリはいらないそうですよ


 ・70 ススキ

  いらないんですか!?


  ボディソープがいい感じに隠してるような隠してないような奇跡の一枚とかも

  あるのに!


  恥ずかしそうにはにかんだ全裸とか最高なのに!


 ・71 カガリ

  …………さぃ


 ・72 クロユリ

  聞こえませんね


 ・73 カガリ

  っ!

  く……ださ、ぃ


 ・74 クロユリ

  もっとはっきり


 ・75 カガリ

  うぅ……

  画像データ、ください……


 ・76 クロユリ

  ふむ

  具体的にどのような感じのものが欲しいのですか?


  大きな声でどうぞ


 ・77 カガリ

  っ~~~!?


  ああもうっ!



  12歳の少年が全裸でお風呂で恥ずかし気に微笑んでる画像データをください!

  お願いします!


 ・78 クロユリ

  まったく、仕方ないですね



  最初からそう言わなかったのでお預けです


 ・79 カガリ

  な、そんな!?


  前文明期では見たくても目にすることなんて絶対できなかったのに!


  お願いします!

  何でもします!


  ですから12歳の少年の裸体を!

  成長途中の未発達な肢体を!

  まだ皮をかぶった幼いあそこをぉぉぉぉおお!


 ・80 キリ

  うわぁ……

  すごいです!


  ありがとうございますススキ先輩!


 ・81 カガリ

  キリ!?



  そ、その画像データをよこせぇぇぇええええええ!


 ・82 クロノ

  …………俺はこんなやべーやつを部下にしてたのか


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どうせクロノもいつの間にご主人ハァハァになるから、今のうちやで
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ