↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
121/145

第98話 《我が炎は浄華灼滅の鉄槌である》

《泡》は激痛に苛まれていた。

 神薙玲於奈に半身を引き裂かれ、その傷口からはとめどなく虹色の血が流れ出している。

 

「                  !」


 音のない絶叫が次元を抉り、200グーゴル(10の100乗)もの直樹が巻き添えで消滅した。


「                        !」


 総身を震わせる《泡》。

 芳人らに向かい、思念波の奔流を叩きつけた。

 仮にこれが地球に放たれていれば、人類すべてが一瞬にして発狂していただろうが、


「傷のせいで全力が出せないのかな? ……効かないよ」


 綾乃の思念波によって相殺される。

 創造神としての彼女は《泡》とほぼ同等の存在であり、この程度のことは造作もなかった。


「           !」


 再び《泡》のまわりで時空が揺らぐ。

 局所的なリセットを起こし、再生を果たすつもりなのだろう。

 そこに、


「権能(コード):【久遠(エタ―ナル)》】――」

「――《時よ凍れ、我が恋人(インフィニティ)のために(・ゼロ)》」


 双子の女神が神威を放つ。

 未亜とミーア。

 神域に昇華された《久遠術式》は、時間という概念そのものを凍結させた。

 続いて、畳みかけるように、


「権能(コード):【虚構(クリエイト)】;《雷鳥は(ゴッドバード)天地(アタック)焦がす(・ストナー)太陽の(・ザ・)如し(サン)》!」


 静玖がその力を解放する。

 銀河に匹敵するほど巨大な雷鳥が雄叫びをあげ、稲妻を迸らせながら《泡》に激突した。

 それだけでは終わらない。


「権能(コード):【虚構(クリエイト)】;」


 ――《暗黒物質形成(アキシオン・)・超重力崩壊(コラプサー)》。

 ――《次元連結・膜宇(ビッグバン・)宙衝突現象《ブラスター》》

 ――《因果地平・(ディスティニー)事象否定(・ホライズン)》。


 ブラックホールの創造。

 多元宇宙の衝突によるビッグバンの再現。

 因果そのものからの放逐。


 追撃に次ぐ追撃。

 いずれも《泡》にかなりの痛打を与え、全身の三分の二を削り落としていた。


「こういう時、必殺技がないと決まりませんね」


 玲於奈が刀を抜き放つ。

《泡》との間にはかなりの距離があるものの――


「権能:【零落(ツァラストラ)】;《神魔覆(ブラスフェミィ)滅刃(・エフェクト)》……とでも名付けておきましょうか」


 斬撃が跳躍し、《泡》の中心部を両断した。

 

「――今だ」


 そして、芳人が疾走を始める。

 彼の後ろに付き従うのは、幾千万の神格たち。

 道を阻む直樹と月を蹴散らし、あるいは仮に追い詰められたとしても、そのたびに主神たる芳人のごとく進化を遂げる。決して斃れることのない、恐るべき軍勢であった。


「                 !」


 迫りくる芳人を前に《泡》はその存在を凝縮させた。

 不定形で半透明の球体から、明確なかたちを持つ存在へ。


 それは鎧を纏った獣だった。

 フォルムは黒獣によく似ているが、その身は純白の体毛に包まれている。

 芳人と《泡》、否、《白獣》が交差する。

 両者がぶつかりあうたび、莫大なエネルギーが放出された。

 無数の宇宙が生まれては消え、その余波で次元に孔が穿たれる。

 次元の狭間の、さらに向こう側さえも戦場にし、両者は衝突を繰り返す。


 戦いの中で芳人は何度も、死を迎えそうになった。

             存在を失いかけた。

             己が誰なのかを忘却しかけた。


 

 だが彼は彼のまま、永遠に等しい時間を戦い続けた。

 それを支えていたのは、ひとえに、


「俺は、ひとりじゃない」


 心を繋いだ者たちの存在ゆえである。

 愛しい彼女らを引き連れ、危機に陥るたび支え合い、覚醒を果たし、そして――


「                     !」


《白獣》が芳人の頭蓋を握り砕いた。

 それまでの彼であれば自己再生を行い、即座に反撃へ移っていただろう。

 だが、何も起こらない。

 両手はだらんと垂れ下がり、力なくその場に膝を衝く。

 まるで魂が抜けてしまったかのような姿である。

 やがてその身体は紅の燐光と化し、あたりにサアッと拡散してゆく。


 最後に勝利を得たのは《白獣》、


「               ?」


 のはずだが、口から漏れるのは、戸惑ったような唸り声。

 やがてその視線は己の頭上へと注がれた。

 

 魔法陣が描かれている。


 かつて芳人だった燐光が集まり、まるで歯(・)車(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)文(・)様(・)を形作っていた。


 ぎち、ぎち、ぎち。

 魔法陣のなかで歯車が回転を始める。



「《我は汝なれば》

 《汝は我なれば》

 《我が真理(審判)を此処に告げる》」



 響き渡るのは、芳人の声。

 静謐かつ荘厳に、呪文(のりと)がひとつひとつ紡がれてゆく。



「《汝は孤独ならず》

 《汝は罪人(つみびと)ならず》

 《唯(ただ)、白痴盲昧(はくちもうまい)の愚者である》

 

 《汝に神座(かむくら)は過ぎたるものなれば》

 《並(な)べて我に捧げるがいい》

 《されば望む未来を授けよう》

  

 権能(コード):【希望(トゥルーエンド)】;

 《矛盾事象(パラドクス)》・《終神召喚(リ・インカネーション)》」


 



 それは、完全なる荒唐無稽。


 自分自身を生贄とし、未来の己――終神本体を召喚する。

 だが同時に終神を生贄とし、己をさらなる上位存在として再誕させる。


 譬(たと)えるなら、2匹の蛇が互いの尾を食い合うようなものである。

 本来ならどちらも傷を負うだけの愚行だろう。

 

 だがこれを成し遂げるのが、伊城木芳人という存在である。


 彼自身が失敗するとはまったく思っておらず、また、彼に寄り添う者たちも可能だと信じている。

 その想いが条理を捻じ伏せ、願う結果を引き寄せる。


 紅蓮の輝きが、ありとあらゆる次元を満たした。

 生まれ出ずるのは、ひとのかたちをした炎。


「――《我が炎は浄華灼滅の鉄槌である》」

 

 放たれた拳が《白獣》を貫く。

 傷口から炎が広がり、完膚なきまでに消滅させた。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おお?インフレで戦闘描写や召喚描写の意味がよくわからないけど主人公は消えて未来の自分に選手交代って感じかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。