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第5話 新1年生スタート

 次の日、4月10日。外は風が強く、天気予報では雨の予報も出ていた。

 僕は、早過ぎず、だけど余裕を持って学校へと向かう。寮のエレベーターを使って下に降りると、昨日部屋に来た男子2人組と遭遇した。


「おはよう、優斗、和也」

「あ、おはよう、蒼。昨日は急に押しかけてごめんな」

「大丈夫だよ。美味しかったよ、優斗の親のケーキ」

 優斗とそんな話をしていると、和也がいないことに気づく。


「あれ、さっきまでいたんだが……?」

 と、優斗がキョロキョロすると、何やら男子を1名捕まえて戻って来ていた。


「お、2人とも。慎二の体調戻ってたのにズル休みしそうだったから連行してきた」

 と言いながら、首元を掴んで男子を引っ張ってきていた。


「ごめんね、和也がちょっとやんちゃで……。この子は荒川慎二。すごいことに幼稚園からずっと一緒なんだよ」

「僕は宮本蒼。よろしく」

 少し慎二の反応が薄いが、結構体調が悪かったということがよくわかる。


「ごめんね。一応これでも主席合格したすごいやつなんだけどな。昨日の緊張からか、こんなになっちゃってて」

「は、はぁ……」

 そのあとは慎二がぶっ倒れそうになったこと以外、何事もなく、学校へ着いた。


 ◇ ◆ ◇  ◆ ◇


 寮から学校までは徒歩数分。昇降口はまだ人影もまばらだった。四階の教室に入ると、担任の広川先生がすでに黒板の前に立っていた。


「おはようございます。みんな、早いねぇ。熱心なのはいいことですよ」

 僕ら四人の席は少しバラバラではあるけれど、和也と僕、慎二と優斗が偶然にも近かった。


(……寝てしまったこと以外は、案外いいスタートかもしれないな)

 そう思ったのも束の間――。広川先生が黒板に「今日の予定」と書き出したとき、ふと背筋に冷たいものが走った。

 ――窓の外。制服姿の上級生が数人、無言でこちらを見ていた。一瞬、全員が同時にこちらと目が合った気がして、僕は思わず目をそらす。


(……今の、誰? いや、そもそも……なんで教室を覗いたんだろう?気のせいか……?)

 自分の中の違和感が、昨日の“記憶の空白”と、無意識に繋がってきていた。


 ◇ ◆ ◇  ◆ ◇


 朝の会が終わると、広川先生が手を叩いた。


「じゃあ、今日はクラスで自己紹介をしましょう。昨日は全体の場で一言ずつだったからね。せっかくだし、ここではもう少し詳しく話してもらおうか」

 そう言い、先生の自己紹介から、出席番号順で自己紹介が始まる。

 そこでふと、中村さんのことを思い出す。見つけてくれたんだし、あとでお礼を言わなきゃなと思っていると、すぐに自分の番が回ってきた。

 僕は席を立ち、前に出て、話し始める。


「宮本蒼です。出身は県内の新利根川市。趣味は読書で、特にラノベが好きです。あと、小学生のころから朝ランニングをしていて、今でも続けています。運動はそこそこ得意なので、体育の授業とか頑張りたいです。よろしくお願いします」

 よし、普通に喋れた。それだけで、もう成功と言っていい。まあ、和也に「寝ることは好きじゃないんですか〜〜?」と大きめの声で言われ、みんなに笑われた。(ちなみに和也は怒られていた)


 自己紹介が一巡すると、自然と教室の雰囲気も和んだ。大声で部活仲間を作るためか部活動勧誘を始めるやつもいれば、メモ帳にひたすら書き込んでいる女子もいる。楽しい中学校ライフが送れそう。そう確信した。


 ◇ ◆ ◇  ◆ ◇


 午前中は学校オリエンテーションが続いた。一時間目に学年集会を行い、そこから先生の案内で学校中を回った。図書館や食堂を通り、体育館やグラウンドも確認する。学校が広いため、歩くのが大変だった。

 そして、最後に足を止めたのが「旧館」と呼ばれる古い建物の前だった。窓は板で打ち付けられ、草が茂っている。


「ここは現在使われていません。立ち入りは絶対禁止です」

 先生はそれだけ言って歩き出した。理由を尋ねる生徒もいたが、「絶対にダメとしか言えません」と言い、答えはなかった。慎二が一瞬だけ表情が強張ったような気がしたが、ここで何かあったのだろうか。


(立ち入り禁止……なんでだろ。事故とか、そういうのがあったのかな)

 そう思いながら、先生についていこうとすると、フェンス下に、少し濡れた手紙が置いてあることに気づく。不審に思い、僕はそれを拾い上げる。すると、昨日から続く頭痛が少し酷くなった気がした。


「何やってんだ、蒼?行くぞ」

 と、和也の声で僕は、列に戻った。手紙はポケットの中に入れてしまった。

 隣の慎二は「心霊スポットっぽいな?」と少しテンションを取り戻したように言い、和也と優斗も「夜に忍び込んでみるか?ぜったいだめって言われたら入りたいじゃん。」なんて冗談を飛ばしている。僕は笑いながらも、なぜか胸がざわついていて、ここに居てはいけないような気がした。

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