第2話 保健室での目覚め
PVバカ少ない...
かなし
僕、宮本蒼は寝ていた。今日は、これから3年間通う私立桜雲学園中等部の入学式だというのに。
早い電車でここまで来たことは覚えていた。しかし、その後の記憶は、どこか靄がかかったように曖昧だ。確かに学校に着いたはずなのに――何か、見てはいけないものを見たような……思い出そうとすると、頭の奥がチリつく。
たしか、一度ベンチに腰掛けたような気がする。でも、そのあとは……何も思い出せない。
そして、気がつくと僕は保健室のベッドに寝かされていた。
「入学式当日に爆速登校して、だけど先生に運ばれて保健室で爆睡してた新入生なんて初めてよ。桜雲学園の歴史に残るわよ」
優しげな女性の声に驚いて左右を見渡すと、正面に白衣をまとった保健の先生が笑って立っていた。
「すみません、寝不足でちょっと……」
「そのようね。あなたが倒れるところを私見てたし。私が早めに来てなかったら、続々とくる新入生たちに、倒れているあなたのこと見られてたからね」
「す、すみません……」
と、ここで気が付く。
「えっと、入学式は……もう始まってますか?」
「いえ、あと一時間よ。もう各クラスでの説明とかは終わってるけど、大丈夫。まだ本番は始まってないはず」
「……よかった」
「あ、そうそう君のクラスは1-Aね。担任の先生から聞いてるわ。それとちなみに、倒れていたのを一緒に発見してくれた女の子いたから、その子にもお礼言っておいたほうがいいわよ。同じクラスの中村さん?だったかな」
「ありがとうございます。もう大丈夫なので教室戻ります。本当にありがとうございました」
「ええ、でも次は倒れずに来てね? お昼寝は授業中以外でお願いよ〜」
軽く笑いながら手を振る先生に会釈し、僕は保健室を後にした。案内板を見ながら階段を上る。1年生の教室のフロアは四階。想像以上に広い校舎に緊張感が増してくる。
(はぁ……入りづらい。)
もう自己紹介も終わっているはずだ。今さら教室に入るのは、まるで舞台のど真ん中に一人で立たされる気分だろう。……と思っていた矢先、教室の前でフラフラしているところを担任の先生に見つかった。
「お、来た来た。君があの宮本くんですか。遅れてきたけど、ちゃんと自己紹介はしてもらうからね。」
「え……あ、はい。」
半ば押し込まれるように教室に入ると、クラスメイトたちの視線が一斉に集まった。足が震えたが、逃げ出すわけにもいかない。
「えっと……宮本蒼です。柏北東小学校から来ました。一年間、よろしくお願いします。」
パラパラと拍手が起こった。
「席はあそこね。窓際の席の前から三番目。」
指さされた席に向かいながら、胸の奥にじわりとした緊張が広がっていった。
(これが、僕の中学校生活の始まりか……。散々だな。)
だが、このときの僕はまだ知らなかった。わずか数時間前に目にしてしまった“あの光景”が、やがて、僕の波乱な中学校生活のすべての始まりになるということを――。




