表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」  作者: 蒼龍 堅明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

第23話:修行完結・さらば永平寺――誠実さが紡いだ「認可」と「一杓の水」

ついに訪れた卒業の日。修行の終わりを告げる「龍門」には、道元禅師の深い慈悲の言葉が刻まれています。私が一年間の汗と涙の果てに、その門の下で誓った決意をお話しします。修行編、堂々の完結です。

 15か月にわたる修行の締めくくり。永平寺を卒業するためには「乞暇こうか」という最後の手続きを全うしなければなりません。

 そのためには、お山にいらっしゃる老師ろうし方の三分の二以上から、卒業の認可をいただく必要があります。普段お会いする機会の少ない老師も多く、修行僧は皆この認可集めには並々ならぬ苦労をしていました。


 しかし、私には不思議と不安はありませんでした。

 本山だけでなく、吉峰寺の「カメムシ大戦」や、名古屋別院での「ワンオペ修行」といった外寮舎での勤務を経験し、そこで多くの老師方と寝食を共にし、深い信頼関係を築いてきたからです。


 各地でお世話になった老師方から「堅明、よく頑張ったな」と、次々と認可をいただくことができ、本山での手続きも驚くほどスムーズに終えることができました。

 これまでの苦労、怪我の痛み、孤独な夜、そして人との出会い。

 そのすべてが、この「認可」という形になって自分に返ってきたのだと感じたとき、胸に熱いものが込み上げました。


 そして五月末。

 正式な卒業の儀式である「乞暇こうかはい」を執り行い、私は永平寺修行の全工程を無事に終了しました。

 一年前、不安と渇望を抱えてくぐったあの「龍門りゅうもん」を、今度は一人の「僧侶」としての確かな自覚を持って、晴れやかな気持ちで後にしたのです。


 この永平寺の龍門(正門)には、道元禅師の教えを伝える一節が刻まれています。


杓底一残水しゃくていのいちざんすい汲流千億人ながれをくむせんおくにん


 一杓ひしゃくですくい上げた水の残りを、わずかな量であっても元の川へ戻せば、その水はやがて大河となり、未来の幾千億もの人々を潤す恩恵となる、という意味です。

 その門を仰ぎ見たとき、私にはその言葉が「誠実に歩んできた道のりは、決して自分を裏切らない。そしてその歩みは必ず誰かの力になる」と語りかけているように見えました。


 門を出て振り返ると仲間たちが手を振ってくれているのが目に入ります。私も手を振り返しました。あの時の涙に滲んだ雲の形は今でも思い出せます。


合掌

「一杓の水」を大切にする心。その教えを胸に山を下りたあの日から、私の新しい人生が始まりました。自分を律し、誠実に生きることで、いつか誰かの喉を潤すような存在になりたい。その想いは、今も変わりません。


 読者の皆様、一年間の修行記にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 今ならこの波乱万丈の修行経験こそが、今の私を形作っていると断言できます。

 最後に大本山永平寺様、関係各所様、本当にお世話になりました。ありがとうございました。


次回おまけ回、この永平寺での一年間を振り返った今の想い。を最後におまけしたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ