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永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」  作者: 蒼龍 堅明


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第19話:安らぎの山寺と、底に潜む恐怖の「要塞」

地獄の十二月を乗り越え、辞令が下ったのは静かな山寺。ついに手に入れた「穏やかな修行生活」……のはずでしたが、そこには本山の鬼和尚よりも恐ろしい「数千の敵」が待ち構えていました。

 12月の「臘八摂心ろうはつせっしん」と「成道会じょうどうえ」という、修行生活最大の節目を越え、年が明けた頃。私に新しい辞令が下りました。

 足の状態を考慮していただいたのか、本山の喧騒を離れ、永平寺の末寺である「吉峰寺きっぽうじ」へと転役することになったのです。


 そこは、これまでの「戦争のような毎日」が嘘のように、まったりとした穏やかな時間が流れる場所でした。

 朝の坐禅にお経、当番制の簡単な炊事、そして静かな雪かき。

 観光客も訪れない真冬の山寺で、私はようやく術後の足を休めつつ、修行僧としての静かな日常を取り戻していました……。


 ただ一つ、あの「恐怖の生き物」がいなければ、の話ですが。


 その正体は、カメムシ。

 とにかく、尋常ではない数なのです。アットホームなお寺の雰囲気とは裏腹に、そこはカメムシたちの巨大な要塞でした。

 朝起きてもカメムシ、掃除をしてもカメムシ。油断すれば、あの独特の刺激臭が鼻を突き、私の安らぎを容赦なく奪っていきます。


 毎日、毎日、毎日……。

 自分の寝床の周りから奴らを遠ざけるため、私は終わりのない戦いに明け暮れていました。

 ある意味では、本山での激務よりも精神を削られたかもしれません(笑)。


 人生ではどんなに平和に見える場所にも、必ず「向き合うべき相手」が登場します。

 それは必ずしも大きな悪の組織だけではなく、日々の生活を脅かす小さな、けれど執拗な存在だったりするものです。


 20年たった今でもカメちゃんはトラウマです。


合掌

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

雪深い吉峰寺での生活は、足の静養には最適でしたが、精神は常にカメムシの動向に注がれていました。どんなに環境が変わっても、悩みや戦いが尽きることはない。それが人生というものなのかもしれません。


次回は、そんなカメムシとの戦いを経て、急遽舞い降りた意外過ぎる転役、生粋の田舎育ちの私を大都会は歓迎してくれるのか!?


乞暇(卒業)まで「あと四話!」

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