第16話:温もりを消すための「罰の坐禅」――修行僧への再起動
家族の温もりを腕に残したまま、私は再びお山へと戻りました。
しかし、門をくぐった瞬間に待っていたのは、その「余韻」すらも許されない、静寂という名のペナルティでした。
前回、初めて息子を抱いた感動をお話ししましたが、その余韻に浸っていられるのも、秋田にいる間だけのこと。お山に戻る時には、逃れられない「作法」が待っています。
それは、他出(外出)していた期間に応じて科せられる、一種のペナルティです。
数時間の外出から数日の帰省まで、不在にしていた時間に応じ、「本堂への立ち入り禁止」や「数時間の坐禅」といった罰が科せられます。
「家族に会ってリフレッシュしただろう? さあ、ここからは再び一人の修行僧に戻れ」
そう突きつけられているような、厳格な儀式です。
つい数日前まで、我が子の温もりを腕に感じていた自分が、今は冷たい畳の上で、ただひたすら壁に向かって坐っている。
その急激なギャップに、最初は戸惑いもありました。しかし、不思議なことに、数時間の坐禅を終える頃には、心はスッとお山の静寂に馴染んでいくのです。
温かな家庭という「生」の世界と、自分を律し続ける「修行」の世界。
その二つの間を行き来しながら、私は少しずつ、どちらの自分も大切に抱えて生きていく術を学んでいった気がします。
「日常へ戻る」ということは、単に場所を移動することではなく、自分の心を再び「再起動」し、整え直すこと。この日私はあらためて、緩んだ心に負けないよう修行に励まねば!と心に誓ったのでした。
なんてカッコいいこと言ったけど、本音は「もっと家族と一緒にいたい(涙)」と思っていたことは内緒です。
合掌
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
冷たい壁に向かって数時間、ただ坐る。一見すると冷酷なルールのようですが、あの時間があったからこそ、私は「父親」から「修行僧」へと、心を切り替えることができました。
次回は、これまで隠していた私の身体に迫る黒い影、とある病魔との闘いをお話しします。




