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見本として持っておく

 ダンジョンを出て、買い取り窓口で魔石を買い取ってもらって、草も見てもらう。

 後から手に入れた方が薬草で、HP を回復したり、状態異常を中和したりする効果がある。


 ただ、ポーションと違って、薬草は食べないといけない。

 ドロップしたそのままだと、食べられるけど美味しくはない。

 食材として調理すると美味しくいただけるが…

 それと、効果がわかりにくいので人気がない。

 食べる量によって HP も上がらない時があったり、毒状態で食べても完全に治りきらなかったり、今の私の[ケア]みたいなものだ。

 なので売価がオーガニック野菜ぐらいなので買い取り価格も安いのだとか。


 先に手に入れた方は[ニセ薬草]だそうだ。

 薬草と間違って食べると身体が痺れたり、ダルくなったりするらしい。

 使い道があるかイロイロと研究されているらしいので、一応買い取ってはくれる。


 調理したら早く食べないといけないが、ドロップしたそのままだと萎れたり腐ったりしない。

 見比べるために、どちらも売らずにとっておこう。

 それぞれの草を入れたジップロックに[薬草][ニセ薬草]と書いておいた。


 [仮眠中] ……… [仮眠中] ……… [仮眠中]


 一旦カプセルホテルに戻って、昼食を食べて仮眠した。


 午後からは予定通り 1層を周る。

 1層はモーニングスターのおかげでなかなかの無双状態で周れる。

 たまり部屋でもほとんど被弾しない。

 棍棒をまた1本手に入れた。


 スライムが時々、核に上手く当たらなくて、倒すのに時間がかかる。

 特に時間がかかって、湯もみ式ではなく、最後は棍棒をうどんかそばを延ばすときみたいにして倒したスライムが宝箱を出した。


 {ぉ、時間かかった甲斐があったな}


 いつものへっぴり腰で宝箱を開ける。

 中には[ニセ]の方の薬草が入っていた。

 [ニセ]の方のジップロックに入れて仕舞った。


 その後も 1層を周って、全部のたまり部屋のゴブリンを倒した。

 MP が上がったが、もうそろそろ出るので[ケア]は使わずに水晶玉の間に帰る。

 ステータスチェック。

 まだレベルは上がっていない。


 退場して魔石と棍棒を買い取ってもらう。

 薬草は軽いし、そんなにかさばらないので、もっとためてからまとめて売るか、おひたしにでもして食べてみようかと思う。


 午後の部は 1層だけだけど、午前と同じくらいのグラム数があった。

 だが、まだまだ午前の部とあわせてもカプセルホテル代にも足りない。


 カプセルホテルに戻って、いつものようにレストランで晩飯(今日はカレーラーメン)を食べていると、ひとりの男性に話しかけられた。


「何度かお見かけしたのですが、()()()もダンジョンに入られてるのですか?」 と、その男性。


 私ぐらいの歳になると、二人称が[ご主人]とか[おとうさん]とか[シャチョーさん]とかになってくる。

 [じいさん]とか[おじいちゃん]は自分が呼ばれたと思わないので返事はしない。


「えぇ、定年退職しまして、セカンドライフをダンジョンで過ごそうとやってきました」 と、私。


「そんなに先輩でしたか。私は 48(歳)で早期退職して、ダンジョンに転職してきました」 と、その男性が頭をかきながらニヘラと笑う。


「ほぅ、ご家族は?」 と、聞いていいのかどうかわからないが、つい、一番気になることを聞く。


「今のところ、まだ三行半は突きつけられていませんよ」 と、自信ありげな顔をする。


 しばらく[単身赴任 2週間目]とか、[これまでの収支報告]とかの話を聞いた。

 その男性はビール片手だ。

 私は 30(歳)過ぎくらいから、酒も煙草もやめている。

 意識高い系の感じで、少し苦手なタイプの人だが、話の内容がいかにもこれからの私にとってど真ん中ストレートなので、ほとんど[聞くだけロボット]状態で聞いていた。


「では、お互いがんばりましょう」 と言って別れた。


 彼とは、その後、、、 たまに会って、軽く会釈し合う程度だ。

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