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第11話

 ミナミは、自宅の最寄り駅から、家までの道を歩いた。

 せっかく出来た彼女と、呆気なく別れ、そして、ホモのために死にかけたミナミは、生きる気力も何も無かった。

 ただ一つ、彼は、北陸地方の風景を思い出していた。

 特急「サンダーバード」の車窓から見た日本海や、立山連峰。

 そして、あの日、5月3日に「サンダーバード」に乗ったとき、富山駅で出会った、女の子の事を。

 家に着く直前だった。

 携帯が鳴った。

(望美か?)

 と思った。

 メールの着信。

 コミュニティーサイトからだった。

(友人追加リクエスト。)

 と言う題名。

 内容は、

(初めまして。私は、富山に住んでいる鉄道好きな女子です。私もサンダーバードが好きです。683系が来たら大興奮です。もしよかったら、友人に追加してください。)

 と言う事だった。

 送ってきたのは、富山に住んでいるというミナミと同い年の女の子だった。

 ミナミは、何気なく友人に追加した。

 それから、ミナミは、家の鍵を開け、家に入る。

「ただいま―。」

 ミナミは言ったが、返事がなかった。

 玄関に、靴は無かった。

「まだ、母さんも父さんも仕事か。」

 とミナミは呟いて、革靴を脱ぎ、それをきちんと揃える。

 また携帯が鳴る。

(うるせえな。なんだよ。)

 ミナミは携帯を開く。

 さっき追加リクエストを送ってきた女の子からのメッセージだった。

「私のメールアドレスです。」

 と書かれ、その下には、メールアドレスが書かれていた。

 ミナミは、下手にメールアドレスを教えないように注意しているが、この子はすぐにメールアドレスを教えてきた。

 ミナミは、そのメールアドレスにメールを送って、なぜメールアドレスを教えたのかとメールで訊いてみることにした。

 それから、メールアドレスを教えようとしたが、メールを送信した時になって、発信元のメールアドレスが相手に伝わってしまうことに気がついた。

(うわっミスった。まあいい、なんかあったらメールアドレス変更しよう。)

 とミナミは思った。

 それから5分後メールが来た。

「実は、何回か貴方のサイト見てました。私と同じサンダーバードの愛好家であるということや、貴方を紹介する書き込みを見て、いい人そうだなと思って今日思い切って追加リクエストしました。そして、もしもよかったらメールしたいなと思ってメールアドレスを送りました。驚かせてごめんね。」

 と言う内容。

(おいおい、バカかこいつ?出会い系じゃねえんだよ出会い系じゃあったく。まあ、同じサンダーバードの愛好家ってことだし、メールぐらいならいいか。)

 ミナミは思った。

「そうですか。では、同じサンダーバード愛好家同士で仲良くしましょう。」

 と返信した。

 それっきり、彼女からメールは来なかった。

 ミナミは、軽く勉強した。

 6時30分になった。

 まだ、母は帰って来ない。

 台所には、解凍されたステーキ肉が置いてあった。

(そういえば、今日はステーキだって言っていたな。)

 ミナミはそう思って、自分でステーキを作ることにした。

 コミュニティーサイトに、

「これから自分でステーキ作る。焼き加減はどうしますかー?」

 と書き込んだ。

 それから、自分で調味料等を冷蔵庫から引っ張り出して、調理を始めた。

 調理が終わると、盛り付けた。

 それを写真に撮り、

「自分で作りましたー。成功です。」

 とコミュニティーサイトに書き込んだ。

 その時、さっきの、作りますという書き込みにコメントが付いているのを見つけた。

「私は、レアで。ツバサくんは?」

 と書かれていた。

 さっきメールしていた、女子からだった。

「ウェルダンで。」

 と返信した。

 自分で作ったステーキを食べたあとに、コミュニティーサイトを見ると、さっきと同じ子からコメントがまた来ていた。

「ツバサくん料理上手だね。」

「そうかな?」

 ミナミは返信した。

「上手だよ。それに盛り付けも美味しそうに盛り付けできている。」

 またコメントが来た。

「本当に?」

「うん。」 

 ミナミは少し嬉しくなった。

 その後、ミナミは彼女のコミュニティーサイトのページを見てみた。

 特急「サンダーバード」が好きだと言うだけあり、「サンダーバード」や「しらさぎ」の写真が沢山アップされていた。

 それらの写真はどれも見事に撮れていた。

(こりゃぁ、本当にただの鉄道好きのようだな。でもさ、こう簡単に連絡先やら送って来て不用心だよ。何かあったらどうするつもりだよ。)

 と、ミナミは思う。

 だが、サイトの中に彼は気になる物を見つけた。

 彼女が書いた日記である。


(今日も学校。いつもと同じ。学校に行っても私は孤独で友達も出来ず、そして一人孤独に廊下の窓から、北陸本線を走る特急列車を眺めていると、チャラチャラした不良男によってこられる。これは一度や二度ではなく、何度もされていた。私はこの行為が大嫌いだ。人が電車を見ているところにちょっかい出してくる。こんなことを普通はするだろうか?人が何かに熱中しているところに、ちょっかい出してくる。やる人は楽しいだろうけど、やられる人は、嫌な思いをする。私は、(やめて)と言う。でも、連中は「かわいい」と言ってさらにちょっかいを出してくる。それがだんだん痴漢に近いことになる。私は先生に訴えた。だが、先生は見て見ぬ振りで、何もしない。私は学校に行くのが嫌になり、勉強もうまくいかなくなってしまった。勉強に集中しようと私は塾に通い始めた。だが、ここでは塾の熱血すぎる先生に、殴る蹴る等の暴力を振るわれ、挙句の果てには「死ね!」と怒鳴られた。私はみんなに、死ねと言われたり、ちょっかいされるだけの存在なの?私は、そんな存在なら、生きていくのも嫌だ。)


 この日記を読んだミナミは、

(俺と同じように、苦しい生活をしている人がいるんだ。なるほど。それで、トチ狂って俺にあんなことを。いるところには、いるもんだなぁ。バカが。)

 と思った。


 次の日、学校に行くバスの車内で、白鳥あずさと井川ひばりに会った。

 二人は、ミナミを見つけると、

「ツバサ。また新しい彼女出来たんでしょー。」

 と言ってきた。

「何のこと?」

 ミナミはポカンとして言った。

「サンダーバードの女の子。」

 二人合わせて言った。

 それを聞いて、昨日、友人追加リクエストを送ってきた子のことだと思った。

「いや、彼女ってわけじゃないよ。」

 ミナミは照れながらも否定した。

 そもそも、白鳥あずさは、まだミナミと西村望美は交際していると思っているはずだ。

「私、望美から聞いた。望美にフられたんでしょ?」

「―。」

「んで、私が励まそうとしたら、なんか書き込みのコメントがおかしいなと思って見てみたら、新しく友人に追加された女の子とコメントで会話していたから、止めた。」

「そうなんだ。」

「んで、私、この子の事をもっと知りたいなと思って、友人追加リクエストを送ったら、見事に追加リクエストに答えてくれた。」

「あっメルアドとか、送られてきたか、訊かれたりした?」

 と。ミナミは訊いた。

 白鳥あずさは「えっ」という顔をして、

「そんなことは無かったけど、まさか送られてきたの?」

(しまった!)

 とミナミは唇を噛んだ。

「なになに!あの子にメルアド聞かれたの?」「マジで、サンダーバード愛好家同士で仲良しカップルだね!」「ツバサ、やるねえ!」「顔写真見たこと無いけど、どんな子かな?」「見てみたい!」

 女の子二人はギャアギャア言う。

(うるせえ。)

 と、ミナミは笑った。


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