第10話
ミナミは、西村望美に呼び出された。
連れていかれたのは、校舎の裏だった。
「実は、私、彼氏がいるの。」
「えっ?」
ミナミは狼狽した。
一瞬何を彼女が言っているのか解らず、返事に困った。
「えっと、冗談か?」
ミナミはやっと言葉を発した。
「いいや。」
と西村は言うと、定期入れから、写真を出した。
そこには、西村望美と、別の男が写っていた。
二人がキスしているプリクラ写真もあった。
「どういうことだ?」
ミナミの顔がこわばった。
「私、コミュニティーサイトで、いつも一人で旅をするって書いているから、寂しいんじゃないかって思って、付き合っていただけだったの。」
「なんだと!それじゃあ詐欺じゃないか!」
ミナミは怒鳴った。
「本当は、私、ここまで発展するはずじゃなかった。」
「だったら…。」
「だったら?」
「一緒にデートしようとか、今日の放課後下校デートとか言うんじゃねえよクソ野郎!」
ミナミは怒鳴って、その場を逃げるように立ち去った。
午後の授業に、力が入らない。
ミナミは、希望を一気に奪われたことで、やる気が起きなくなってしまった。
ミナミにとって、西村望美は希望だったのだ。
ホモによってこられ、ミナミは精神的苦痛を患っていた。女友達もいたけど、交際になかなか発展できず、そんな自分が嫌だった。
だが、そこへ現れた西村望美は、ミナミにとって救世主だった。
初めて体験するデートや、恋愛感情等にミナミは興奮し、すっかり楽しんでいた。だが、それが一気になくなったのだ。
(こんなときに、女友達と会話したいけど、そうはいかないだろうな。)
と、ミナミは思った。
ミナミは、放課後、大宮駅で寝台特急「カシオペア」を待った。
西村望美が一緒に乗りたいと言っていた列車だ。
寝台特急「カシオペア」が9番線に入線する。
ミナミは、彼女と撮ったプリクラ写真の一部をペンで汚して、車内に放り込んだ。
発車メロディーが流れる。
寝台特急「カシオペア」は発車した。
ミナミは涙をこらえて、列車を見送った。
「よう。」
と、頭をつかまれた。
振り返ると、ミナミによってくるホモの一人がニヤニヤしながら立っていた。
(こんなときに、なんでこんな奴に遭遇するんだよ!くそったれ!)
ミナミは怒った。
ミナミは、電車に乗ろうと思って、ホームを歩く。
「待てよ。」
ホモはミナミの頭を叩く。
「あんたなんだよ?」
ミナミは顔をこわばらせて言った。
「なんだじゃないだろおい。」
ホモは頭を叩く。
ミナミは、怒りが込み上げてくる。
「今お前なんか求めていない。」
「本当は求めているんだろ?」
「うざい。どっかいって。」
「ホントのこと言え!」
ホモは言うと、ミナミを突き飛ばし、勢い余ってミナミは線路に転落した。
その時、列車が目の前に迫っていた。
ミナミは、とっさに線路脇に逃げた。
ホームでは、ホモが他の乗客に取り押さえられていた。
この騒ぎで、列車が20分遅れた。
ミナミは、遅れてきた列車に乗り込んだ。
ホモは、埼玉県警察に逮捕された。当たり前だ。
だが、ミナミは、生きる気力をほとんど失ってしまった。
(なんで、俺はホモに接近されるんだ。女友達は居るが、恋愛関係にまで発展出来ない。その反面、ホモはまるで砂糖に群がる蟻みたいによってくる。せっかく恋愛関係になった望美とも、あっけなく別れ、そしてそれを待っていたかのようにホモと遭遇。俺、生きていても楽しくない。馬鹿だし、モテないし、ホモのエサになるなら、生きていても仕方が無い。)




