その⑨
わたしとディザードはベッドの横の隙間で息を潜めて隠れていた。
わたしはと言うと、色んな爆弾が心に投下され、どうして良いのか分からないでいた。夢の中の人『リッカルド』に偉そうに愛を語っておきながらわたし自身愛とか恋とかあまり分かっていなかったのだ。もし・・・本当にディザードの話しが本当の事であるのならわたしはちゃんと彼に対して答えを出さないといけない。
「しかし・・・おかしいな・・・」
ディザードは難しい顔をして呟く。
「わたしも今・・・凄い頭の中がおかしくなってきて・・・こうクルクルと・・・」
自分の現状を伝えるべく放った言葉に一瞬の間が生まれる。
「いつもならキルドの力が弱まって来たら少し変な匂いがするんだけど・・・」
わたしの言葉を完全にスルーして彼はそう言った。
・・・・すみません、空気読まなくてすみません!!!・・・・
何だか虚しくなり更に顔を赤くさせ心の奥で謝り倒した。
「あいつ何かしたのかな?新しい術を作って・・・とか・・・」
ブツブツとうわ言のように話す彼。
「そー言えば・・・さっき亡くなったおじさん・・不死じゃないんだ?術者は不死になれると思ってたけど・・・・」
わたしの発言に沈黙する彼。
「僕が彼に教えて貰ったことは人身で不死になれる者はいない。どんなに魔力が強かろうが必ず死に至る。だそうだ・・・キルドは特別なんだよ。その事はキルドが一番隠したがってる事だから聞かない方が良いと思う。」
がたん!!!
一階の部屋から大きな物音が聞こえて来る。
「来たな・・・奴の殺気だ。奴の居場所さえ分かれば・・・・」
ディザードはわたしの頭に布団をかぶせ・・・
「ちょっと行って来る!君はここから出るな!」
「え゛!?あ??あ~・・・・行ってらっしゃい・・・」
わたしが止める間もなく彼は虚空に消えた。
・・・・結局加勢に行っちゃうんだ・・・・
わたしは取りあえずベッドの隅で扉の方を睨んでいた。
外は雨が降っていて死体も転がっている。
ゾクっ!
全身で不気味さに身震いする。
・・・恐い・・・
ががががんっ!!!
下から何かが抉れる様な音がする。
・・・・建物の中で戦いとか、潰れないよねこの建物?・・・・
わたしは下の声を拾おうと床に耳をくっつけると・・・
「しまった!!!何処行った!!?」
ディザードの叫びが聞こえる。
・・・え!?見失ったって事??・・・・
わたしは慌てて顔を上げるとベッドの横に額に第三の眼と角を持つ髪の長い男が立っていた。
こいつが誰なのかは見当がついた。
「闇族・・・」
わたしは奥歯を噛み締めどうするべきか考えるが何も浮かばないでいた。
「珍しい奴・・・人か・・・人の子は丁度良い。お前を儀式の贄としよう。来い!!」
男はわたしの手を無理やり取ろうとするが、ディザードが空間から現れ男を蹴り飛ばす。
男は壁に体を叩きつけられそうになるが何らかの見えない力で壁への衝撃を和らげた。
「大丈夫か!?ごめん。僕がキルドの所行ったせいで怖い思いをさせてしまったね・・・」
わたしを守るように立つディザード。
「キルドは?」
わたしはキルドの事が気になり彼にそう訪ねた。
「僕ならここですよ。」
胸元がえぐられ凄い出血でフラフラと歩きながら部屋に入ってきた。
「キルド!!!!
ディザード・・・キルドが・・・!!!!」
わたしの慌てまくる様子にキルドは・・・
「いつもの事ですから気にしないでください。この方は不意をついての攻撃がどうも好きらしく・・・・」
キルドは闇族を睨み付ける。
「大丈夫だよ。キルドは不死身だから・・・」
がんっ!!!
ディザードがわたしに言った言葉を聞いた直後、壁を手で抉りこちら側を睨みつけ・・・
「はっ!笑わせんなよ!!!この人間が不死身なんじゃ無いだろぉが!?」
「黙りなさい!!」
闇族の言葉に顔色を変え怒るキルド。
・・・・こんなに怒ってる姿初めてみたかも、そっちの話しはやっぱりタブーなのね・・・・
「いいや・・・・言わせて貰う!!!俺等の王の力でお前は不死身の身体を手にしてるだけに過ぎない!だからさっさとあの御方を返せ!!」
キルドはわたしの顔をチラリと見て・・・
「忘れて下さい・・・彼の言ってる事は全て忘れて下さい!!」
そう・・・必死で訴えてきた。
わたしは咄嗟に両耳に指を突っ込み・・・・
「聞いてないから・・・うん・・・わたしは聞こえてないヨ?
ねぇ?ディザード・・・?」
わたしは取りあえずディザードを巻き込んで同意を求める。
「そうだね・・・うん。僕も何も聞こえなかったから・・・」
『ね~!』
わたし達は声をはもらせ滅茶苦茶口元を引きつらせながら笑みを浮かべた。
「はぁぁ・・・もう良いです。ミリエルさん・・・外の人には絶対言わないで下さいよ。」
何かが吹っ切れたのかキルドは深い溜め息をつきわたしに何かを話そうと更に口を開いた。
「僕の中には闇族の王が封印されてるんです。封印は僕がしたのではなく、大賢者であった父が施した物なんですが・・・・」
「え??何でキルドの体に?」
わたしは耳から指を外し闇族をチラチラ見ながら彼に聞く。
「何か封印する場所が『王』に潰され、無くなったせいで、人身でありながら結構な魔力を備えていた僕の体が丁度良いと判断したらしく・・・・適当に・・・・」
・・・・あ~・・・・何というかほぼ強制的に巻き込まれた感じよね・・・・
言ってる間もキルドの傷はどんどん癒えていくのが見える。
「ちぃ!!兎に角!!返せよ!!!俺達の王ダーク様を!!!」
「ぐほっ!!!ごほごほっ!!」
闇族の言葉にわたしは驚き咳き込んだ。
「こんな時に大丈夫か?」
背中を擦り心配そうに顔を覗き込むディザード。
・・・・ダークって・・・・あのリッカルドの事よね?・・・・
「あれ・・・夢じゃなかったんだ・・・」
わたしはうっかりと口に出し慌てて両手で口を押さえる。
首を傾げこっちを覗き込むディザードだが、何でもないと手をパタパタと振ってみせた。
・・・・・さて・・・どうしたものか・・・・言ったとしても信じてくれないよね・・・・
わたしはまた一つ悩みが増えてしまうのだった。




