↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様たちと紡ぐ日々~忘れないでくれ~  作者: 空白朔名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/121

第75章 会うべき人

 第75章 会うべき人


 ある日の夜。我が家でいつものように賑やかな夕食を終えた後のことだ。

 

 座卓の片隅で、佐藤さんがクレハの隣に座りながら、何やら小さな布地に向かって熱心に針を動かしていた。

 服飾学校の課題か何かなのだろう。

 静かな部屋に、小気味よい布擦れの音が響いていた、その時だった。


 「あっ……またやっちゃった」


 佐藤さんが、困ったように眉を下げて手を止めた。


 「織恵、どうしたのじゃ?」


 ゲーミングチェアにふんぞり返っていたエヒメが、座卓へ近づいてくる。


 「それがね……最近、なぜか針をよく折っちゃうのよね。ミシンの針も、この手縫いの針も」


 「どうれ、我に見せてみい」


 エヒメはどこか厳かで難しい顔をして、佐藤さんが差し出した折れた針の入った小さな袋を凝視した。


 「どうなんだ、エヒメ?」


 俺が麦茶を飲みながら尋ねると、エヒメはしばらく針を睨みつけた後、ふうと息を吐いた。


 「……さっぱり、分からん」


 「姉様でも分からんことあるんやなぁ」


 クレハが隣で感心したようにエヒメを見た。


 「しかしな、織恵はオトの『神御衣(かんみそ)の技法』の継承を受けておるようなもんじゃ。もしかしたら、そのことが原因かもしれぬな」


 俺の脳裏に、かつて佐藤さんがオトから技術を学んでいた姿が浮かぶ。


 「やっぱり……人が神様の技法を受けるのって、まずいことなのか? 体に無理があったりとか」


 佐藤さんの身を心配して俺が聞くと、エヒメは首を横に振った。


 「そんなことはないのじゃ。技法とは本来、神から人に、人から人へと受け継がれるものじゃ。それ自体は至極自然なことなのじゃ」


 「……わたしの技術が未熟だから、道具に変な負担をかけちゃうんだよ」


 佐藤さんは自分を納得させるように苦笑いした。


 「そうじゃ、紡。おぬし、あの方に会ってこい」


 「俺が?あの方って……?」


 「織恵、その折れた針の入った袋を我によこせ」


 エヒメは佐藤さんから折れた針の袋を受け取ると、それを俺の手に握らせた。


 「あの、兄媛様? 針供養はちゃんとしてますよ?」


 「それでは根本的な原因が分からんじゃろ? それに紡、おぬしがこの先のために、一度会っておかなければならない人じゃ」


 「じゃあ、わたしも行きます! わたしの針のことですから」


 佐藤さんが慌てて立ち上がろうとするが、エヒメはそれを制した。


 「織恵はまだ、行かんほうがいい。もう少し技法を我が身に馴染ませて、己の器を安定させてからでよいのじゃ」


 エヒメはそう言うと、最後にクレハのほうを向いた。


 「クレハ、行ってくれるか?」


 「ええよ、ウチもあの方に会うのは久しぶりやからな。楽しみやわ!」


 クレハは嬉しそうに拳を握り、即座に快諾した。どうやら俺とクレハの二人で、その『あの方』の元へ赴くことが決まってしまったらしい。


 「なぁエヒメ、その『あの方』って人はどこにいるんだ?」


 俺の問いに、エヒメはある方角を指差しながら言った。


 「和歌山じゃ」


 「エヒメそれだと逆だぞ、和歌山はこっち……えっ、和歌山!」


 流石に日帰りは厳しい距離だ。現地での移動や滞在を考えれば、確実に泊まりになる。


 俺は折れた針の袋を握りしめながら、ふと、もしこの件が会社で茅春に知られた時のことを想像してしまった。

 『浴衣姿金髪ショートクレハ!和歌山湯けむり旅』

 そんな最悪の脳内企画モノのタイトルが勝手に脳裏をよぎり、俺は和歌山に行く前から、不安に襲われるのだった。

 

この先は今までの日常を回収するロードムービー的な展開です。

散りばめられた伏線を回収していきます。

お楽しみ頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。