第72章 疑惑のワンルーム
第72章 疑惑のワンルーム
「えっ?茅春ちゃんって、紡くんの友達やろ?」
「……まあ、友達よりは少し上の関係だと……思うけど」
「じゃあ、決まってるやん。好きな男の部屋に別の女の影がないか、紡くんの部屋を、隅から隅までチェックしなあかんって!」
「好きな男ってなによ!?それに、そんなことしたら……」
よく考えてみると、紡の部屋に別の女の影がなかったことはない。
それに、わたしには紡を『変態芸能マネージャー』の道から更生させなければならない義務がある。
——その為の証拠集めよ!
「……まずは、ベッドから……かな」
わたしは、紡や彼女たちの為に仕方なく立ち上がった。
じっとベッドを見つめると、シーツの上に紡の短髪とは明らかに違う、明るい色の長い髪の毛が落ちているのが目に留まった。
「……これは、金髪。……それに、この長さは」
「茅春ちゃん、いきなり見つけるなんてすごいやん!」
「クレハちゃん、あなたのでしょ!?」
「そういえば、さっきまで寝転がってたからなぁ」
「さっきまでって……あんた、真っ昼間から男のベッドで何やってるのよ!?」
やっぱり、クレハちゃんが一番の強敵だ。
友達感覚を装った確信犯的な距離の詰め方が、本当に恐ろしい。
「……ダメ。もっと決定的な、言い逃れのできない証拠を見つけなきゃ」
「茅春ちゃん、隠すならこういう所か?」
クレハちゃんがベッドの下を覗き込む。
「ふっ、クレハちゃん甘いわね。そこは一番の発見されやすいベタな場所なのよ!」
「そうなんや、茅春ちゃんって、やっぱりすごいんやな」
「……ふふっ、今はデジタルの時代よ。証拠はきっと、パソコンの中よ!」
「ウチ、スマホは使えるけどパソコンは無理やわ、茅春ちゃんって何でも出来るんやな!」
わたしは、紡のゲーミングチェアに腰掛け、パソコンを立ち上げた。
スタンバイ状態だった大画面のモニターが、すぐに明るくなる。
「なんか、すごいパソコンね。……モニターがふたつもある」
圧倒されながらも、デスクトップに並ぶアイコンに視線を走らせる。その時、一つのフォルダ名に目が止まった。
『エヒメマル秘!画像集』
——これよ!ついに証拠を見つけたわ。この中にはきっとエヒメちゃんの……。
クレハちゃんがモニターを覗き込んできた。
「クレハちゃん!あなたは、これは見てはダメ!」
「えっ!なんでなん?」
「え……あの……なんていうのかな……刺激が、強いというか……。とりあえず少しの間、後ろを向いておいて!」
彼女は残念そうに後ろを向いた。
わたしは意を決して、そのフォルダーをクリックした。
画面に広がったのは、『お取り寄せご当地スイーツ』の美味しそうな写真の数々だった。
「どこが、マル秘なのよ……!」
「これ、姉様がたまに見てニヤニヤしてるやつやな」
クレハちゃんは、いつの間にか振り返りモニターを覗き込んでいた。
「茅春ちゃん、やっぱりこっちやで!」
クレハちゃんがベッドの方を指差した。
「そ、そうかも知れないわね。……一応チェックしておきましょうか」
わたしは、ベッドと床のわずかな隙間に手を差し込んだ。
奥の方を弄ってみると、指先に何か触れるものがあった。
——紡、ついにあなたの尻尾を捕まえたわ。観念しなさい!
わたしは腕を伸ばし、ソレを掴み勢いよく引き出した。




