第47章 新しい信仰
第47章 新しい信仰
——エヒメのやつ、完全に俺に押し付けやがった。
困ったことになったと頭を抱える。
アナハは今まで一番の問題児……いや問題神だ。
風呂に入ったアナハの声が、浴室から聞こえた。
「主様、準備できましたわ」
「何の準備だよ!おとなしく入ってろ!」
ターゲットが俺に移ったのを喜んでいるエヒメが、その様子を見て笑っていた。
「エヒメ、何とかしろよ、妹分だろ?」
「すまぬ、紡。しかし……さすがオトの刺客じゃ。おぬしへの懐き方が半端ではないのう」
「他人事みたいに言うなよ」
「しかしな、紡。あまり長居させてはならぬぞ」
「早く出ていって欲しいのは俺だよ。でも、なんでだ?」
エヒメが話し出そうとすると、また浴室からアナハの声がした。
「主様、早くしないと、上がっちゃいますよ」
「ほうれ、アナハが呼んでおるぞ。ぬ・し・さ・ま」
「行かないからな!」
きっと、エヒメも昔、こんな感じだったんだろう。
……いや、あいつもここまでされて、よく今まで正気でいられたな。
暫くして、アナハが脱衣場から出てくる。
バスタオルを巻いただけの姿に俺は反射的に目を逸らした。
「なんて格好してるんだよ」
「……主様、バスタオルが邪魔でした?」
「服を着ろって意味だよ」
「アナハは身一つで主様のところへ嫁いで参りました。替えの服などありませんわ」
「嫁いできてないからな、ちょっと待ってろ」
俺はクローゼットを漁ったが、彼女の体型に合いそうなものはなかった。
——また、佐藤さんに借りるか。
俺は部屋を出て、佐藤さんの部屋のチャイムを押した。
中からドタドタと走る音がして、ドアが開いた。
「佐藤さん、悪いけど……」
「川崎さん!あなたついに!?」
「『ついに』……ってなんだよ?」
佐藤さんの視線は俺の奥を見ていた。
俺は彼女の視線の先を辿る。
バスタオル姿のアナハだった。
「違う!違うんだ、佐藤さん」
佐藤さんがドアを締めようとするのを阻止した。
「そんな小さい子まで、それに私に何を見せようとしてるの!」
「落ち着いて、佐藤さん」
偶然通りがかった管理人の婆さんの姿があった。
「管理人さん修羅場じゃないですから!」
「わしのセリフをとるんじゃない、静かにやっとくれ」
婆さんはニヤリと笑い去っていった。
「アナハ、そんな格好で出て来るな、部屋に戻れ」
今まで閉めようとしていたドアが勢いよく開いた。
俺はドアに頭をぶつけて、床に屈みこんだ。
「アナハって、あの穴織様!」
「痛ててっ、そうだよ。彼女に合う服を貸してやってくれ」
「お安い御用です。穴織様、小汚い場所ですがお入りください!」
彼女はアナハを部屋に入れ、ドアを閉めた。
「佐藤さん、そいつ危険だから気を付けて」
俺の声が届いたのか分からなかったが、数分後に彼女は満面の笑みでドアから出てきた
彼女の後ろから、アナハも出てきた。
アナハはトラ柄の耳のついたパーカーを着ていた。
「ふむ、この素材悪くないですわ。平織なのに綾織みたいにしなやかですわね」
「さすがです、穴織様。今日はこれでお許しください」
彼女に会わせるべきではなかったと後悔する。
佐藤さんに新しい信仰ができてしまった。




