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思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません  作者: 紅花うさぎ


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【エイデン視点】本編55の後の話

 この胸のぬくもりをなんと呼べばいいのだろうか?


 物心ついた時から俺に母はいなかった。母というものが存在しないわけではなかったが、俺にとってはメイドよりも遠い存在でしかなかった。


 まさかジョアンナが俺の事を大切に思ってくれていたとはな……


 何か温かなものが胸の中にじんわりと湧き上がってくる。


 思い出せる限りにおいて、ジョアンナはとにかく俺に対して口うるさかった。あーしろ、こーしろ、本当に煩わしいったらなかった。


 それでも俺の事を恐れずに近寄ってくるというだけで、ジョアンナが俺にとって貴重でありがたい存在だったのは事実だ。


 本当に分かりにくいな。母のような気持ちを持ってくれていたなら、もっと早くに伝えてくれればよかったのに。


「似た者同士だね」 


 二人きりになった部屋でレイナが笑った。


 誰が!! あんな口煩いババアに似ていてたまるもんか……そう思いながらも、何だか口元が緩んでしまう。


 孤独だと思っていた子供時代、意外にも俺は守られていたのだと思うと、何だか救われたような気がしてくる。


 俺の顔を見ていたレイナがふふっと可愛らしく笑った。


「何だよ?」


「エイデンが一人で微笑んだり眉間に皺をよせたり、表情がコロコロ変わるのが何だかおかしくって」


 そんなに変な顔してたか? 慌てて表情を引き締めた。


「レイナ、今日は悪かったな……」


 レイナはサンドピークに来るのを本当に楽しみにしていたのに。まさかこんなことになってしまうとは。


「ううん。それよりごめんね。私のせいでお母様と喧嘩しちゃったよね?」


 まったく……レイナは人がよすぎる。自分が傷つけられたのに、俺と母親の関係を心配してどうするんだ? 


 そもそも俺と母とは無関係なのだから、今更関係が悪化することもない。


 ジョアンナがレイナを連れて部屋に戻ってくれたおかげで、母とサンドピーク国王にしっかりと文句を言うことができた。さすがに政治的内容を含んだ嫌みたらしい話をレイナに聞かせるのは気がすすまない。


 国土のほとんどが砂漠であるサンドピークが豊かなのは、フレイムジールの協力があってのことだ。その辺の事をネチネチと話して思い出させておいたから、もう二度と気に触るようなことは言わないと思うが……まぁあの母のことだから油断はできない。


 青い顔をして頭を下げるエメリッヒ国王の横で、今にも泣き出しそうに瞳をウルウルさせている母には心底嫌気がさした。いい年して泣けばいいと思っているのだろうか。


 だがおそらくエメリッヒ国王が母を責めることはないだろう。再婚してからずいぶんたつが、いまだに母に夢中なのは明らかだ。


 エメリッヒ国王もバカだよな。あんな見た目だけの女に夢中になってんだから。


 それに比べてどうだ? 俺のレイナは見た目だけではなく、性格まで最高じゃないか。


 レイナは安心したように瞳を閉じて、俺の胸に頬を当てている。その穏やかな顔を見ていると、それだけで優しい気持ちになってくる。


 自分にこんな穏やかで優しい時間がやってくるなんて思ってもみなかった。レイナの素直で分かりやすい愛情を感じていると、空っぽだった心が温かなもので満たされていく。レイナの笑顔のためならば、何でもできるような気すらしてくる。


 心が満たされた余裕からなのか、レイナが喜ぶからなのか分からないが、最近ではレイナ以外の人間にも優しい気持ちが持てるようになってきた。


「明日から大国会議で一緒に過ごせないし……今日は俺もここで寝るかな」


 だいたい俺じゃなく、ジョアンナと同室なんておかしいだろ。とは言えジョアンナとは寝室は別なのだから、俺がこのままレイナの寝室で寝ても何の問題もないだろう。


「でも……」


「何か問題あるか?」


 レイナが困った顔をしたことに、なんとなくムっとしてしまう。俺はこんなにもレイナと離れがたく思っているのに、レイナは違うのか?


「問題っていうか……ここはサンドピークだし、エイデンと一緒に寝てるのを知られるのは恥ずかしいから……」


「別に毎日一緒に寝てるんだから、そんなの気にすることないだろ」


「でも……」


 まだゴネるレイナを横抱きに抱えベッドに運んだ。


「レイナは俺といるのが嫌なのか?」


「そうじゃないけど……」


 ごにゃごにゃ言ってるってことは、レイナの中にも葛藤があるのだろう。押しに弱いレイナの事だ。きっと最終的には俺を受け入れるはずだ。


「……私も一緒にはいたいけど……エイデンと一緒だと寝れないっていうか……ジョアンナ様が隣の部屋にいるから……」


 レイナの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。あまりの可愛さに、今すぐ押し倒したい欲望に襲われる。


「俺はただ一緒に寝るだけのつもりだったんが……レイナが期待してるんならこたえなきゃいけないな」


 そう言ってベッドに体をのせ、シャツのボタンに手をかけた。


「き、期待なんてしてないわ」


 頭から湯気でも出るんじゃないかと心配になるくらい真っ赤になったレイナを見て、思わず笑い声が出てしまう。


 本当に可愛いな……

 絶対にレイナだけは手放せない。

 そう思いながら、レイナを優しく抱きしめた。

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