第17話 分からないけど凄い事は分かる
第七位階上位
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【討伐クエスト】
『水辺の大喰らい』
参加条件
・ボス『カリクレクス』と戦う
達成条件
・ボス『カリクレクス』を倒す
失敗条件
・ボス『カリクレクス』を取り逃す
達成報酬
参加者報酬
スキルポイント2P
参加者貢献度ランダム報酬
貢献度12%
・スキル結晶『水耐性』
・スキル結晶『酸耐性』
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ふむ……これは……上位迷宮での狩りを一時的に止めて放置すれば、こう言う特殊なクエストが発生してスキルポイントを稼げるのでは……?
レベル上げが頭打ちになって来たら考えよう。
それよりも、早くチサトと合流する。
「チサト」
ドロップ品を回収していたチサトに声を掛けると、チサトはピクッと反応し、此方を振り返る。
その顔は見る間に笑顔に変わり、嬉しそうに歩み寄って来た。
「ユキ……いつのまに?」
「ボス部屋に入るちょっと前くらい? チサトはどうして山の迷宮に?」
そう問う僕に、チサトはインベントリから亜竜晶を取り出して見せた。
成る程、確かにワームは亜竜だから亜竜系の素材がそこそこ手に入る。
現状、プレイヤー達が直ぐに遭遇出来て比較的簡単に倒せる亜竜はワームしかいないしね。
塔の迷宮のボスである下位火竜は、下位でレベル70とは言え、単純な戦闘力だったら、この山の迷宮の裏ボスであるレベル150のクイーンワームに匹敵する。
リスティアに配置したレベル100の下位赤竜も、地力で言うならクイーンワームとトントンくらいだ。
ワームから亜竜素材を得るのは非常に合理的である。
「それで何を作るの?」
「その事で何だけど……」
少し申し訳なさそうに、チサトは刀を差し出して来た。
「コレ、私達にはちょっと強すぎるわ。ユキには悪いんだけど、腕が鈍っちゃいそうで……」
言い辛そうにそう言うチサト。僕は指を鳴らして微笑んだ。
「ちょうどそれを明日どうにかしようと考えてたんだ」
パチッとウィンクをして見せると、チサトの心臓がキュンと高鳴った。
チサトは胸を押さえ、勤めて冷静に微笑む。
「そうだったの……ありがとう、ユキ」
「お礼を言われる様な事では無いさ」
皆が強くなる事と僕が強くなる事は同義だからね。
微笑むチサトに、僕はニコーっと微笑み返した。
◇
ボス部屋の転移陣から、鍛錬島に戻って来た。
日の照る大通りを歩きながら、チサトに質問をする。
一応周りにはプレイヤーがチラホラ見かけるので、名前はちゃんとプレイヤー名だ。
「センリから見て、今のアナザーでの戦いはどう?」
そんな僕の曖昧な問いにセンリは少し考えてから答えた。
「そうね……やっぱりレベルが上がったからかスキルのおかげか、身体性能が上がっているのだけれど……」
「知覚能力の向上の方がセンリには大きく感じる?」
「そう、それよ! 今まで出来なかった事がどんどん出来る様になる感じ……!」
興奮気味に捲し立てるセンリ。
レベル10や20だと分かりづらいが30以降からははっきりと理解出来る程度にはスペックが上がってくるので、落ち着いて来た今頃はさぞ成長を実感出来る事だろう。
実際の所、様々な剣技こそあれ、それ等それぞれにどれほど迅斬や幻歩、鋼身を加えられるかは人それぞれだ。
その点、さっきみたいに連続でそれ等を取り込む剣技は、余程の練度か才能が必要だ。
アナザーは楽しい? なんてのは聞くまでも無い話なのだ。
「ログインボーナスシステムの方はどう?」
まぁ、どうと言ってもまだ3日目だが。
配る物も、未だ使えないチケットや下級ポーション、ご飯券くらいだ。
流石に日数が少ないから困った様に首を傾げるセンリに、困らせた僕が助け舟を出す。
「初回10日間特別ボーナスで10倍とか、特別な資格を得るとボーナスアップとかをやる予定なんだけど」
「成る程……それなら喜ぶ人も多いだろうし、ギルドメンバーも増えそうね」
通常ではやはり少ないと感じるのだろう。
まぁ、センリのレベルで少ないと感じるなら、新しく入るレベル1には適正か多い位だろうし、問題はない。
特別な資格は、クエストクリアによる対外的な階級の向上以外にも、高レベル者を優遇したり、特別なクエストをクリアしたら一定期間デイリーボーナスが増える様な仕様にするのが良いだろう。
要は、役に立つ奴には日当を増やすと言うだけの極単純な話しだが。
「ところでユキ……」
「なにかな?」
そこでセンリは一拍置いて、意を決した様に、おそるおそる口を開いた。
「……そこまでして人を集めて、なにをするの?」
……沈黙……。
そして僕はニコリと微笑んだ。
「……なにも?」
「え?」
強いて言うなら、プレイヤーに取り返しの付かない問題行動をさせない様、ある程度コントロールする為だ。
何故そんなに驚く必要があるのか。
「折角だから纏めて迷宮攻略とかに運用しようかなって」
「……具体的には?」
「……各地に適正レベルの迷宮を作ってクエストをばらまき全体のレベリングと探索技術の底上げをしつつ情報をリークして主流を誘導し僕の支配地以外の迷宮攻略をさせたり外敵の排除を行わせる予定だよ」
センリ達には、ダンジョンマスターの事もクエストオーダーの事も浮遊都市の事も言っていないので、根本的に理解出来ないだろう。
しかし、センリは一つ頷くと、ニコッと微笑んだ。
「……うん、やっぱりユキだったわ」
爽やかな笑みを浮かべるセンリの頬を引っ張る。
「どう言う事だ」
問い詰める様に頬をむにむにすると、センリは幸せそうな笑顔のまま、無言で僕の頬をむにむにして来た。
……別にはぐらかされた訳ではない。ただ見逃してやっているだけだ。
嬉しそうで何より。





