第2話 夢想神
第七位階上位
しゃんしゃんと軽快な音を鳴らし、赤いソリは虹の尾を引いて灰色の空を飛ぶ。
空からは灰色の雪が降り、虹の粒子はそれに色を与える。
ゆっくりと落ちる虹の雪は幻想的で……痕跡丸わかりであった。
改めて、僕を助けてくれた少女と向かい合う。
白いファーの付いた真っ赤な服に身を包み、サンタ帽を被った赤髪ツーテールの美少女。
星の様に煌めく金の瞳からは……ちょっと金の神の匂いがするぞ。
……それはともかく、サンタ帽少女、仮称はニコラ……としておく。そのニコラは、ニッコニコとそれは嬉しそうに僕を見ている。
「……助かったよ。ニコラで良いのかな? ありがとう」
「んふー。気にしなくて良いんだよー? ニコラは良い子のミ・カ・タ☆ そだっ! 良い子にはプレゼントあげようね〜」
ニッコニコのニコラは徐に、ソリの荷台に積まれた大きな白い袋をガサゴソと弄り始めた。
しばらくガサゴソしていると、急にピタッと動きを止め、バツの悪そうな笑みで振り返った。
「え、えへへ……あげちゃだ……」
両手を合わせて瞳をうるうるさせつつちょうだいのポーズをする僕を見て、ニコラはピシッと硬直した。
「あ、あうう……」
初対面の人を困らせるのは此処までにしておこう。
「まぁ、良いけどね」
「うう、ごめんね! あげたいけど、メダルと交換じゃ無いとダメなの……」
メダルと言うと、ニコラメダル。
そう言えば、最後の迷宮攻略クエストをクリアした時にも出たな。
色々と気になる事もあるし、ニコラと交流しつつ情報収集と洒落込もう。
◇
ニコラから聞いた話によると、ニコラは初代夢想神らしく、その本名は不明。因みにソリを引くトナカイの名前はルドルフ。
また、この迷宮はさっきまで居た場所とはまた別の迷宮で、その名を奈落の世界と言うらしい。
勿論、不思議の世界をクリアした人は出入り自由だ。未クリアの人にはそもそも見えもしない仕様だとの事。
他にも、先程の戦いは所謂負けイベントと言う奴で、本当は死なない程度にボコボコにする予定だったと僕の巧みな話術によって吐いた。
台本によると、その後レベル700の皆は各地の自分の領域へ戻る様なので、ちゃんと各個撃破出来る仕様だとの事。
クエストクリア報酬は、スキルポイント10P。ニコラメダル2枚。
これで、ニコラメダルは丁度100枚になる。何と交換出来るのだろうか?
ニコラは良い子だーとしきりに僕の頭を撫でさすり、謎のプレゼントあげたい欲求を我慢している。
我慢なんてしなくても受け入れるのに。などとは言わない。
どうやら、ニコラの謎な欲求は神性が根本的な原因であり、更に性格もそれに沿う様な形で、『良い子にプレゼントをあげる』ととっても嬉しくなる様になっているらしい。
夢と幸福の化身。それがニコラだ。
そうこうニコラと戯れてる内に、目的地に到着した。
ソリはゆっくりと減速し、地上に降り立つ。
そこは、迷宮の最初のエリア、ぬいぐるみの街。
その中にいつのまにか建っていた、人サイズの小さな小屋の前。
ニコラはヒョイっとソリから降りると、僕をエスコートしてから小屋に誘う。
引かれるままに小屋に入った所で、ニコラはニッコニコと振り返った。
「ようこそ! ニコラのお店へ!」
そこは、外と打って変わって様々な色で溢れた部屋。
幾つかの強力なアイテムが並んでいる。
「何でも持って行って……じゃなかった、買って行ってね!」
「ふむ」
ざっと見た感じ、全部買ったら丁度ニコラメダル100枚になる。
「じゃあ、全部頂こうか」
「毎度ありー! おまけもあげちゃおうねー☆」
ニコラメダルを100枚手渡し、全てのアイテムを回収する。
入手したアイテムは、『幸運の宝珠』『幸福の宝珠』『虹の宝珠』『夢の宝珠』。
それから、枕元に置いておくと幸せな夢が見られるらしい四つ葉のクローバーの置き物『夢見の聖石』。枕元に置いておくとぐっすり眠れるらしいピンクの羊の置き物『快眠の聖石』。枕元に置いておくと強敵と戦う夢を見れる『試練の聖石』。
スノードームの様な形状の持ち運び型お茶会会場『ティーパーティーへようこそ』。主演の皆の形をした、溶けないアロマキャンドル『夜を払う灯火』。同じく皆の形をした缶で中に個包装されたアメが自動補給される『甘い夢』。
そして最後に……おまけと言って4つのオーブを合体させて出来た『至福の星珠』。
渡されたレッドゴールドの輝きを纏う虹色の星珠を観察していると、ポンッと音を立てて、デフォルメされたニコラが現れた。
「おおー」
「んふふー」
『にゅふふー』
似た様なポーズで得意気の2人。おそらく、ベルツェリーアの様に分体の様な物を仕込んであると言う事だろう。
良い物を貰った。
ニコラと星珠のニコラを撫でていると、それは唐突に僕の背後に現れた。
「ゆーきーちゃんっ!」
「むむ?」
背後から僕に抱き付いて来たのは、僕と同じくらいの身長の美少女。アリ——んん、ちゃんだ。
「えへへ、また会ったねー」
「……んん?」
振り返ってみると、アリな少女は何故か2人いた。
方やさっき戦った子。方や、その子と比べるとやや目付きが鋭く、大人びた雰囲気の子。
まさか、この子も二重魂魄型の神なのか?





