第3話 奈落の世界を蹂躙せよ
第七位階上位
仮に、子供っぽい方をアリーチェ。大人っぽい方をアデルと呼ぶ。
アリーチェとアデルが此処にいる理由は、単に暇だったから。
どうやら、彼女等は三重魂魄型の神だったらしい。
何でも、アデルは転生者で元男、アリーチェはアデルの魂魄と『原典』が結び付いて生まれた特異個体。
そして、もう一体が詩片を取り込んで肥大化したエピックの中から発生した幻想竜ジャヴァウォックちゃんなのだとか。
おそらく、アデルには転生時点で魂魄の処理能力を増やす様な、補助人格的なスキルを持っていたのだろう。
それも、自分の魂魄の容量を圧迫しない形で補助人格を増やしつつ、魂魄ががっつり混じり合っているので力自体は目減りしないと言う……凄まじく複雑なスキルだ。
表層因子だけ取っても、再現するのには相当な技術と経験が必要になるだろう。
残念ながら今の僕には組み合わせたりちょっと誘導するぐらいの事しか出来ない。
「それはそうとユキ」
「何かな?」
ティーカップ片手にアデルに応じる。
するとアデルはニヤリと笑い——
「お前、俺等の事、好きなんだって?」
——などと言ってきた。
「……まぁね」
遠い昔の事を思い出す。あの時はあまりに暇な物で、ウサギの替わりに猫を追い掛けてみたりと色々やった。
まぁ、正確には好きでは無く憧れと言う物であり、即ち未知を行く者は羨望の対象と言う事で、それはつまり……好きって言うか羨ましいよね。
子供ながらに羨ましい……と言うかずるいなって思ったぞ。
「……」
「……う、なんか寒気が」
アデルが腕を摩っている……黒い面が溢れ出てしまっていた様だ。
アリーチェの方は僕に抱き付いたままだが。
「で、好きだったらどうだって言うのかな?」
「あぁ、なんだ……別に? 何でも?」
「嬉しいって」
突然のツンデレか。
ツーンとあらぬ方向を見て、若干慌てるアデル。
「ち、違うってっ……まぁ? 嬉しく無い訳じゃないけど?」
「私は嬉しいよ♪」
「アリーチェよしよーし」
「えへへ」
……思ったんだけど、僕、神にも好かれやすいんじゃないかな? ……それだけ希少価値があると言う事?
取り敢えず、視界の端でソワソワうぞうぞしているニコラも撫でておく。
「えへへ♪」
「んふー☆」
「……アデルも欲しい?」
「い、いや、俺は別に……どうぞ?」
照れながら頭を差し出して来たアデルも、一緒に撫でてあげた。
◇
さて、一頻りアリ何某と戯れた所で、早速攻略に移る。
名残惜しい思いもあるが……待機してる配下の子達の事を考えると、今夜中にも迷宮を攻略してしまいたいので仕方ない。
話を聞くに、ジャヴァウォックの力を抑えるには、他の主役達を撃破し、世界に色を取り戻す必要があるとの事。
数もちょうど良いし、一気に攻略してしまおう。
ニコラが机の上にばさりと地図を広げる。
ちゃんと全エリアが網羅された、若干古めかしい地図だ。
そこへ、アリーチェとアデルが手際良くピンをさして行く。
敵の数は、ジャヴァウォックを加えた21体。
裸王。蛙彦。ジャック。ベルベル。四王。泉の女神。リヨン&エラ。花の小人さん。謎の茨の怪物。お菓子の双子。ヒメ。グンハ。金剛。まめちゃん。千結子姫。釣竿法師。シャオロン。ジャヴァウォック。
若干数2人セットの奴がいるが……まぁ問題は無い。頭数でも勝っているし、うちの主力の六精帝にはおまけで使徒も付いてくるからだ。
そんな訳で、先ずは南西エリアから派遣する。
裸王には、ヴェルガノンが良いだろう。
ヴェルガノンはオーブや精髄、領域の鍵等の強力な装備を持っているので、神性やその他の補助効果を十全に使えれば、裸王に勝つ事は可能だ。
その直ぐ隣にいる蛙彦には、セバスチャンさんの一番弟子、リアラを送る。
有能なリアラなら、ヴェルガノンの使徒と協力すれば勝てると思う。
南西エリアで厄介だと思われるのは、ベルベルとジャック。
此方には、飛びっきりの戦力を派遣しないといけないだろう。
おそらく多彩な技を行使してくるであろうジャックに送るのは、やはりセバスチャン。
彼ならばジャックにも勝てるだろうと信じている。
南西エリアで一番強いと目されるベルベルの相手は、勿論ウルルだ。
ベルベルが相手だと、ウルルでも大いに苦戦するだろうが、勝てる筈だ。
続いて、南東エリア。
ハートの王に派遣するのは、アスフィン。
相性は悪くないが……正直心配だ。
クラブの王には、レミアを送る。
此方も相性は悪くないが……心配だ。
と言うか、この姉妹は総じて心配だ。何故だろう。ポンコツとドジだからだ。
厄介であると目されるのは、ダイヤの王とスペードの王。
はっきり強敵だとわかるスペードの王には、水精三姉妹全員を派遣する。
3対1だが、これでようやく互角と言った所だろう。
ダイヤの王には、正直力量が不明なのでどうすれば良いか分からないが、取り敢えず六精帝からアウラを派遣しておく。
最後、泉の女神には、ハイネシアさんが良いだろう。
おまけで色々心配な南東エリアの補佐役としてリッドを置く。
次、北東エリア。
茨の怪物は、初見だがやたらと強い力を持っていたので、六精帝最強のイテアを派遣。
花の小人さんには、ルメールが丁度良いだろう。
お菓子の双子は、グリドアを送り出す。
一番の問題であるリヨン&エラのペアは……なんか軍団を率いているらしいので、十分な余力を持つイェガにやらせよう。
最後、北西エリア。
先ずグンハには白羅。これが最適解だ。
シャオロンは硝子組同様ちょっとした軍団を率いているらしいので、クリカを送っておく。
まめちゃんにはラーベスタが良いだろう。
金剛丸は物怪丸とセットでくるらしいので、2対1になるが、メロットに頑張って貰おう。
千結子姫は、妖怪の群れを使役して来るようなので、ディルヴァを送り出す。
何気に強いヒメには、シャルロッテを送っておく。
適性と適正の都合上余ってしまったアラビスは、釣竿法師と当たらざるを得ないが、正直僕はアラビスさんの地力を把握し切れていないので、どうなるかは分からない。
ただ、釣竿法師は相当に強い部類の人材だし、アラビスの図体では分が悪いだろう。
そこら辺は、北西エリアに派遣したトップ戦力達がどうにかしてくれる事を期待しておこう。
それらが全て終わったら、いよいよ僕がジャヴァウォックを討つ。
心配は今の所無い。
何せ此方には、『夢の星珠』『至福の星珠』『死神の星珠』『玄帝の星珠』の4つがあるからだ。
なんなら都市の核からも力を借りる事は出来るし、全てを使えば例え邪神竜・アジ・ダカーハとでも互角に渡り合える……筈だ。
少しでも精神力を回復しておきたいし、その時が来るまで、僕はしばしの休憩としよう。





