掌話 浮遊都市の試運転 三
第四位階上位
「らっ!」
振り下ろされた炎の剣を受け流し、闘気を宿した蹴りをお見舞いする。
すると炎の剣士の下半身が吹き飛んだ。
だが、炎の剣士は俺の攻撃を意に返さず、受け流された剣で斬り上げて来た。
体の構造のせいか、やたらと鋭いその斬撃を避け、次は拳で顔面を吹き飛ばす。
しかし、やはりと言うべきか、炎の剣士は顔が吹き飛ぼうが下半身が無くなろうが、まるで無駄と言わんばかりに剣を振るって来る。
「くっそ、核何処だよ!」
悪態を吐きながら剣を避け、バックステップで距離を取る。
場所は14層。敵のレベルは65から70まで。俺らのレベルが100な以上、普通は負ける相手じゃない。
だが、敵は思っていた以上に強かった。
最初に遭遇したのが、どれも初見の魔物。赤いミノタウロスが2匹に火を吐く狼が1匹。そして炎の剣士が3体だ。
流石にキャパオーバーで、アコがミノタウロスを引き付け、アケミが狼と戦い、タダトが炎の剣士2体と相対している。
俺は、最も数が多い炎の剣士の倒し方を探しているが、それが中々見つからなかった。
なんせ胴体を吹っ飛ばしても平気で襲い掛かってくるからな。
「リエ、どう思う!?」
「うぇ、ちょっと待って……やっぱり体内で核が移動してるとか!?」
「やっぱそうだよなぁ! くそ!」
ならやる事は一つ。
幸い、炎の体は簡単に吹き消せる。
剣士の攻撃を余裕を持って避けつつ、剣に闘気を練り込んで——
「——吹き飛べっ!」
天賢武真流剣術・奥義、飛剣の応用。闘気を集約しない事で分散させる技、名付けて剣風。……元々集約率が甘いから簡単にうてるのが悔しい所だ。
果たして、ぶっ放した剣風は炎の剣士を纏めて吹き飛ばした。
剣に纏わりついていた炎も消え、思いの外細い剣身の剣が、カランッと音を立てて迷宮の床に転がった。
「やったか!」
「フラグ乙」
そんなお約束を言いつつ核を探すが……見つからない。
そうこうしてる内に剣に炎が纏わり付き炎の剣士が復活した。
「……どう言う事だってばよ」
「見えない敵……ゴーストみたいな核無しの精霊なんじゃ……」
「冗談キツいぜ」
それは難易度上がり過ぎだろ。
精霊を倒すには魔法を撃つか闘気でぶった斬りまくるしかねぇ。
消耗を覚悟して剣身に闘気を練り込んでいる時、エミリーから声が上がった。
「あ、あの……」
「どうした、何か気付いたか!?」
「その……ユウイチ、剣が本体なのではないですか?」
剣が本体……。
「「それだっ!」」
そうだ、剣だけ本物だわ! 何で気付かなかった? ……直前まで炎の塊は精霊だったからだ。
コレ、ゴーレムじゃん!?
そうと分かれば、急遽剣に苦手な破壊の闘気を混ぜて、思いっきり剣と切り結ぶ。
「はぁっ! ぐっ、硬い!」
「ユウイチ! 鍔のところに赤い宝石みたいなのがあるよ!」
「オーケー!」
剣と切り結んだまま、拳に闘気を込めて、炎を纏う鍔を殴った。
パキッと何かが割れる音が響き、炎の剣士が霧散する。
剣は音を立てて床に落ちたが、間もなく霧散し、ドロップアイテムの割れた核が落ちた。
「よしっ! タダトーっ!!」
「応!」
弱点が判明すれば早い。
タダトは俺と同じ様に剣へ闘気を纏わせると、剣風を放って2体同時に炎を吹き消し、即座に剣を突き込み核を破壊。
もう一つは足に破壊の闘気を纏わせて、踏み付ける事で破壊した。
流石タダトだぜ。
「アケミ!」
「はいっ!」
俺の声に応じて、アケミは狼から距離を取りつつ、魔眼を発動して狼の動きを阻害した。
俺は身体強化で一息に距離を詰めると、狼の首目掛けて剣を振り下ろした、しかし——
「——浅いか!」
流石はレベル70代と言った所か、アケミの魔眼を受けつつも狼は首を逸らし、思っていた以上に硬かった毛皮も含め、絶命には至らない。
狼は半ばまで首を斬られたにも関わらず、此方へその首を向け、口を開く。
口腔に魔法陣が現れ——次の刹那、タダトの投げた刀が狼の頭を貫いた。
それに遅れて、逆袈裟で今度こそ狼の首を切り飛ばす。
「サンキュー、タダト!」
「動物型とは言え強い。気を緩めるなよ」
「応!」
狼がドロップ品を残して消えるのを見届け、タダトの刀を拾って投げ返しつつアコの元へ急ぐ。
ミノタウロス2体くらいなら何とでもなる。と思う! 援軍が来る前に仕留めよう。
◇
14層を乗り越え、15層に降りた。
襲い来るレベルの上がった敵を適切に処理し、素早い動物型から程々に怪我を負わされつつ進む事しばらく。
地図上では最深部にあたる部屋の前に到着した。
そこにいるのは、炎の戦斧を持った赤いミノタウロスだ。
一体くらいなら余裕だな。さっさと仕留めてクリアしよう。





