掌話 浮遊都市の試運転 二
第四位階上位
目指す神殿は炎の祭壇とやらがあるらしい。
神殿の先には、ヴェルガノン神の神性を象徴する火山がある。
その火山には、何でも噴禍神殿と言う更に高難易度のダンジョンがあるらしいが、そこは対象レベルが高いので後々で良いとか。
人智を越えた幻想的な景色をちょっと観光気分で進む。
女子は暫くその光景を眺めて感動していた様だが、今は既に金一封を目指してアレコレ話し合ってる。
まぁ、今後いつでも見れるしな。
程なくして、神殿に着いた。
そこにいたのは……ケンタウロス? みたいな騎士の女性。
馬に乗ってるんじゃなくて下半身が馬だ。間違いない。初めて見た。
ケンタウロスの女性は、此方に気付くと軽く手を上げてカッポカッポと歩いてくる。
「やぁ、君達が派遣されたエインヘリヤルかい? 私はオーダム。ただのオーダムだ」
「よろしくお願いします、オーダムさん」
伸ばされた手を握り、しっかりと握手する。
握られた手はうちの女子達と比べると大きくて、体型から見ても大人の女性と言った感じだ。
長い金髪をポニーテールにしていて、爽やかな笑みを浮かべている。
「敬語はよしてくれ、かつては騎士団に身を置いた私も今はただの一兵卒だ。気楽にオーダムと呼んでくれ」
「分かった、オーダム。今日は宜しく頼む」
「うむ、此方こそだ」
黒霧さんの情報によると、このオーダムさん含む、各神殿に派遣された傭兵達は、あくまでも俺らの補助としてついて来るらしい。
レベルもずっと上で、単純な技量も高く、物凄く強いとか。
俺の限界突破でも勝てるかどうか……無理だな。
例の神様達が宿った状態なら余裕だろうが、俺だけじゃまともに戦って勝てる相手じゃない。
まぁ、後ろに立ってくれるなら安心ってもんだ。
「それじゃあ早速出発しよう」
皆の応える声を聞き、豪奢な神殿の中へと進んだ。
◇
火神殿は、その名の通り、神殿の様なダンジョンだった。
赤みがかった石畳の床に、綺麗な装飾の施された壁と柱。
広間や通路は普通のダンジョンと違ってしっかり整備されており、そしてあちこちに火が焚かれていた。
正に火の神殿と言うに相応しいダンジョンだ。
そんなダンジョンを潜る編成は、基本陣形と比べると異色と言わざるを得ない編成だ。
前衛に俺とタダト、中衛はアコとアケミ、後衛がリエとエミリー、そして殿がオーダム。
一見すると、タンクなしでヒーラー多目の攻撃特化布陣だ。
その実より詳しく言えば、俺はアタッカーとタンクの兼任。タダトは純アタッカー。アコは索敵と投擲手。アケミはデバファーと敵が抜けた時の時間稼ぎ。リエは所謂コンダクターとヒーラーの兼任。エミリーが純ヒーラー。
割としっかりバランスは取れている。
それこそちょっと前だったら異色も異色の色物パーティーだが、今はこれが正当だ。
現時点では、三層まで来ているが、特に連携で怪しい所はない。
出てきた魔物は、一層が赤いスライムと赤いゴブリンと核がある飛んでる火。
二層は、通路が少し広くなり、若干大きめな赤いスライムと武器を持ったり魔法を使ったりするゴブリン。大きくなった飛ぶ火に赤いドール、赤い犬と鳥が出た。
三層からは、敵が大きくなったり群れで連携してきたり、犬や鳥が火を吐く様になったりしているが、見たところ一番の脅威は赤いオークだ。
通路も広いんで群れの最大数らしい3匹とまともに接敵するし、それを処理してる間に、音を聞きつけたらしい機動力のある犬が来てついでに鳥も来てと……まぁ、多分探索者が増えれば敵も分散されて楽になるんだろう。
一層は、地図を見ながら真っ直ぐ進んで、度々の戦いを経ておよそ10分。
まともに探索したら15分から30分ってところか。
一層上がる毎に、少しずつ範囲が広くなっているらしく、おおよそ5分ずつくらい探索時間が伸びている。
普通の人が探索する場合は、敵の戦闘力も上がって行くからもっと時間がかかりそうだ。
◇
赤いトロールが振り下ろす一撃を、剣で受け止める。
「ぐぬ……思ったよりパワーが」
俺が止めてすぐ様に、タダトが剣を振るい、トロールの腕を切断した。
「ユウイチ、ここからは受けない方が良さそうだ」
「だなっ!」
言いつつ、トロールをズタズタに切り裂いた。
1匹を倒した事で、もう1匹が雄叫びを上げて棍棒を振り上げる。
唐突に、トロールがピタリと停止し、次の瞬間、アコが投げたフラッシュグレネードが炸裂した。
鈍い悲鳴を上げ、目元を手で覆うトロール。
俺は身体強化を発動し一息に距離を詰めると、既に駆け出していたタダトに先んじて、トロールの太い足を叩っ斬る。
タダトは僅かに遅れて逆の足を切り飛ばした。
足を絶たれたトロールに苦戦する筈もなく、戦いは直ぐに終わった。
「っにしても、でっかい魔物はやっぱ面倒だな」
「そうだね、やっぱり一撃じゃ倒せないし」
「それにパワーもある。大型魔物はレベルの割に強いですね」
「コレ、改良案として提案しても良いんじゃないっすか?」
「いや……最後まで潜ってみてからの方が良いんじゃないか?」
直前がオーガとかで急激に強くなった訳では無いんだし。
……強いて言うなら、火の怪物とゴーレムが強い。
ゴーレムは弱点となる核があるが、それを破壊する為には十分な攻撃力が必要だ。
火の怪物も核はあるが、あれは敏捷型だからゴーレムとはまた違った力が必要になる。
他の大型犬くらいの動物魔物は、厄介っちゃ厄介だが、巨人、ゴーレム、亜精霊のトップ3と比べればそう難しくはないな。
取り敢えず感想をメモに纏めてと……深部まで行ってみようか。





