掌話 浮遊都市の試運転 一
第四位階上位
皆の前で拡声器と資料を片手に、先ずは一つ咳払い。
「えー、こほん……」
改めて正面を見る。
手前には力や知恵を持った幹部クラスが、奥にはそれ以外が並んでいる。
……これ、もはや講堂じゃなくてコンサート会場とかそう言うレベルだよな。
そもそも浮遊都市とか言う時点でアレなのに。この部屋空間拡張とかされてれるんだぜ? ゲームかよ。しかも魔法学園だし。
メイガス・アカデミアとか言って、学園編かよ。
「——イチ、ユウイチっ……ちょっと」
「……あぁ、すまん、ツッコンでたわ」
「ウチも気持ちは分かるけど、今は控えて」
毎度毎度リエには世話を掛けるな。
これ以上迷惑掛ける前にさっさと始めよう。
「あー……皆、まぁ既に知ってるだろうが改めて名乗るぞー。『英霊の集い』代表のジョージことアオヤマユウイチだ。呼び方は好きにしてくれ」
代表と言うか団長だけどな。
8000人近い軍団の。
「さて、それじゃあ今後の方針を通達する。例の浮遊都市の迷宮についてだ」
それだけで、団員達は全部理解しただろう。
勿論当然だ。情報は既に頭に入ってるからな。
「女王ヘイカの指示で、俺達は浮遊都市の迷宮の難易度確認をする事になったのは知っての通り。今回集まって貰ったのは、各迷宮に派遣するメンバーを決めたからそれの発表だ」
まぁ、決めたとか言ったが、実際に8000人を分配するのは、流石に処理し切れないから、トップだけ決めて後は黒霧さんの集計頼りでパーティー毎に潜って貰う予定だが。
「先ずは資料の1ページ目を開いてくれ」
そう声を掛けると、会場中から紙を捲る音が聞こえた。
少し待ってから話しだす。
「……見ての通り、各都市の迷宮の場所を示した地図だ。機密情報だからコレが終わったら無くさない様にクランインベントリにしまっておけよー。んでまー、その中でも一番大きい迷宮に行くメンバーを今から発表する」
行くのは当然トップメンバーだ。
出て来る敵も強力な奴だしな。
何でも傭兵を付けるとか言う事だが、ある程度は自前で出来た方が良いだろう。
◇
今回俺が探索するのは、火の神ヴェルガノンを祀っている神殿にある迷宮。『火神殿』。
一層毎に適正レベルが5ずつ上がって行くと言う迷宮だ。
メンバーは、俺、リエ、アコ、タダト、アケミ、エミリーの6人に、傭兵1名を加えた7人パーティーだ。
傭兵さんは先に迷宮の前にいるらしい。
出発は、メイガス・アカデミアの転移板から飛んだ浮遊都市ヴェルガノンの南部。
まぁ、南部と言っても、あくまでも都市の南部と言うだけで、位置的には浮遊島の中央だ。
地図を見たところ、都市内部にあるのは適正レベル5以下や10以下の雑魚ダンジョン。都市外部には20以下や30以下のそこそこダンジョンが主だ。
都市内外には、微妙に発見しづらい場所だったり、何らかのクエストをクリアする事で入れる若干高位のダンジョンが点在している感じだ。
その中でも、今回俺達が探索するのは、都市北部にある、全15階層に及ぶそれなりに大きなダンジョン。『火神殿』だ。
何でも、各都市に存在する神殿と名の付くダンジョンに入るには、それぞれの神の信徒にならなければいけないとかで、信徒になるにはそれぞれの都市にあるレジャー施設で手に入る勲章が必要になるとか何とか。
信徒になって一定の功績をあげるとより高位の勲章が貰えて、自前の騎士団を結成出来る様になるとか何とか。
つまり、この国は宗教国家なんだな。
「いい? 気付いた事があったら言うんだよ? 金一封だからね」
「ユウイチ、気になっていたのですが、きんいっぷうとはなんですか?」
「金一封って言うのは、簡単に言えばお金っすね。それもそこそこの額の」
女子が姦しくそんなやりとりをしている。
黒霧さん曰く、都市や迷宮の改善案が採用されれば、貢献度に応じたそれなりの額のお金が入金されるんだとか。
これは是非にと団員全員が張り切っている。
要はβテストって奴だな。元ベルツ大陸の現浮遊都市民達も、同じ指示を出されて試験的に生活しているらしい。
俺は良く聞いてないんで覚えてないんだが、一応各都市にはその都市を管理する大公爵なる元王族達がいて……演技指導とかされてるらしい。
他にも、神殿を統べる神殿長が大司教とかで、それ以外に各神から最も恩寵を受ける神子とかがいたりして、何かと権力が渦巻いている。
そこに全てを裏で牛耳っている黒霧さんの運営する冒険者ギルドがあり、三大勢力の様な形で纏まっているんだとか。
王国系クエストとか宗教系クエストとか、その他のギルドクエスト、隠しクエスト等々が、最終的には帝王であり神であるユキさんに集約する事になるとか何とか。
まぁ、なんもかんもが神のみぞ知るだな。





