第42話 夢の入り口
第七位階上位
エヴァは麗震五式、もといエヴァメイクの麗震を応用した数々の飛翔武器を用い、お菓子の双子に対抗した。
飛来するお菓子を粉砕し、危険な液体が飛び散るお菓子は残り少ない遠距離武装を用いて破壊。回避困難な広範囲攻撃はシールドを発生させて防御する。
エヴァは度重なる攻撃に対し、溜め込んでいた消耗品を温存しつつ使い、確実に双子の魔力を削っている。
やはり、子豚化したせいで麗震含む幾つかの神血機装を上手く扱えていないのが痛い。
今、エヴァは子豚化の神呪に対抗するべく多くの演算力を解呪に使っているのだ。
そんな戦いを見下ろしつつ、僕は桃のタルトを食べる。
◇
大地から噴出する灼熱のチョコレートファウンテン。
エヴァは青白い光を放つ球体に守られ、噴き上がるチョコレートの波から脱出する。
——カッと光が瞬いた。
子豚エヴァは、青白い球体の中で元のエヴァに戻る。
奇妙な神性を打ち砕き、元に戻ったエヴァは……静かにブチ切れていた。
エヴァがぶつぶつ言ってる時はキレている時だ。
その後エヴァは、機械神の神性を付与された神血機装を乱発し、お菓子の家を吹き飛ばして森を火の海に沈め、必死に応戦する双子を消し飛ばして機能停止した。
クエスト報酬は、スキルポイント3P。『お菓子の家』。ニコラメダル2枚。
エクストラ評価は、『〜スイートハウス閉店のお知らせ〜』で『魔法のバスケット』。
それぞれ、お菓子の家は、基本形態が名前の通りお菓子の家。しかし、換装で装備するとエプロンドレスに変わる装備だ。
また、装備型と家型両方で、特殊な力を持った調理器具を召喚、行使可能となる。
魔法のバスケットは、魔力を補充する事で小さめなお菓子をランダム生成する事が出来る籠だ。
生成されるお菓子は、リンゴの杖同様僕が手を入れる事で選択可能である。
差し当たって、プシューと水蒸気を吐いてクールダウンしているエヴァへ視線を向ける。
「……」
「……」
エヴァは何故かスラッとした自分のお腹を不思議そうに見下ろしていた。
そのまま首を傾げつつ僕の方へテテテッと歩み寄る。
「……お腹が空いてしまったと報告します」
どうやら、さっき食べた分はエネルギー変換してしまったらしい。
エヴァがそこまでするのだから、随分と追い詰められていたのだろう。
「……じゃあ、お菓子食べる?」
にこやかにそう問う僕に、エヴァは更に首を傾げ……。
「……肉棒じゃない——」
「——お菓子食べる?」
…………。
「肉——」
「——お菓子食べる?」
「……食べます」
バスケットから出たクッキーを2人で一緒にもりもり食べた。
僕の魔力を使ったからだろう。
エヴァは僕クッキーをリスの様に頬ばって、無表情のまま嬉しそうに食べた。
……精体、即ち個人属性魔力。または深層因子。それをを交わらせる事で、高位の生命体は繁殖を行うらしいが……好きな人の魔力が美味しく感じるのは……そこら辺上手く出来ている物だよね。
◇
エヴァは、遺憾ながら撤退すると報告します。と言って送還された。
放っておくと、疲労困憊の現状で資材調達に迷宮へ行ってしまうかもしれないので、黒霧に監視して貰う。
そんなこんなで、北を目指して進む事しばらく。
世界が切り替わり、森を抜けた。
目前に広がったのは、虹色の靄が漂う白い砂の丘陵地帯。
小さな丘や谷が点在し、ボコボコの地面が広がるその先には……虹色の積乱雲の様な物があった。
近付こうと一歩踏み込んだ所で、いきなり地面から何かが飛び出した。
——看板だ。
『この先、危険地帯。夢の入り口。夢の旅人以外の立ち入りを禁ず。※入る場合は自己責任』
「……ふむ」
夢の旅人とはなんだろうか? ……夢の世界の住人の事では無さそうだが……態々立て札が用意されていると言う事は、この迷宮の挑戦者に夢の旅人なる存在がいる事を想定していると言う事だろう。
夢の入り口と言うのも気になる。夢の世界の事では無いのだろうか?
それに、態々立て札を用意したと言う事は……案外本当に危険なのかもしれない。
……しかし、本当に、本当に危険なら、そもそもそんな物自体を用意しないだろう。
僕程の存在がパッと死んでパッと消滅する様なヤバイ物ではない筈だ。
立て札には自己責任って書いてあるし、僕の責任の元、虹の積乱雲へ入ってみるとしよう。
……万が一の場合も……どうにかなるんじゃないかなぁ? ダメかな?
僕はすすすっと白砂の地を滑る様に移動し、虹の靄へと飛び込んだ。





