第40話 実に15秒 ※会話時間を含む
第七位階上位
エヴァの夜食は、原海に出現する牛鬼と言う名の大型魔獣、その上位種であるエリアボスの塵輪鬼なる大怪牛の肉が使われていた。
格としては、獄峰深部のエリアボス、ラルヴァレパーノと同程度であり、その肉は豊潤な魔力を含んでいる為非常に美味。
並大抵の生物なら、食べて間もなく文字通りの昇天する事間違いなしである。
……愛属性を練り込めば、多分食べても死なないだろう。
聖剣・ワトワイアの使い道が包丁に決まった瞬間である。
さて、ではエヴァは何故その肉を大量に持っていたのか。
ドロップアイテムは全て僕が自動的に回収しているので、エヴァにドロップアイテムを入手するタイミング無かった筈。
その問いに対して、エヴァはこう言った。
——皆やってる。ウルルも。
……要するに、殺す前に剥ぎ取る事で物資を回収したらしい。
それをするとドロップアイテムの品質が落ちるのだが、ウルル達等の肉食魔獣は、敵を攻撃する手段の一つとして噛みちぎって食らうと言う物があり、エヴァはそれならば回収しても良いと判断したらしい。
……まぁ、良いけどね。錬金術の変換や錬成を使えば品質の低下も数で補う事が出来るから。
エヴァの様に計算高い子達はそれで私腹を肥やしているかもしれないが、気にしないでおく。
一応皆にはお給金出しているが、それは精々趣味や何かで遊ぶ金であり、重要な装備や消耗品は僕のハンドメイド。
幾ら私腹を肥やそうがお金を貯めようが散財しようが僕には関係の無い話である。
一頻り食べて満足したらしいエヴァは、あれだけ食べたのに膨らみすらしていない腹部を摩り、無表情で満足気だ。
知識の訂正はしない。
マレビトは加護によりインナーを脱げない様になっている為肉体的な接触による繁殖は原則不可能だが、精体的な接触による繁殖は可能であり、そしてエヴァは新人類たる機構人類を繁栄させようとしているっぽいからだ。
もっと分かりやすく言えば……子供をポンポン作られても困るからだ。
現状では、スノー国巨民およそ400万以上が蘇生待ちなので、エヴァの子供を武装する資金は無い。
よって、僕は思考を止める。
へー、アジムスってそうやって増えるんだ。シラナカッタナー。
◇
ご機嫌なエヴァと共に塔を目指して森を歩み始め、間も無く、唐突に背後から声を掛けられた。
「もし……聞こえますか……?」
《【運命クエスト】『迷い小人と花の園』が発令されました》
《
【運命クエスト】
『迷い小人と花の園』
参加条件
・小人と遭遇する
達成条件
・小人を花園へ導く
失敗条件
・無し
・備考
迷子の小人の行き先は? そこには春があるでしょう。
小川を跳ねる小魚と、お空で踊る蝶々と、なにより咲う妖精の。
そこには夢があるでしょう。
・主な出現魔物
スワンプトード
ウェネラナム
エスケープスカラブ
スカラビドゥス
シャープモール
タルグィス
》
振り返ると、そこにいたのはエプロンドレスの可愛らしい女性。
ウェーブがかった金髪の美少女だ。
そして小人である。
森の草に紛れて見え辛い程に小さなサイズである。
ソーセージよりも小さい。一口サイズの小人だ。
「……じゅるり」
「……どう調理しますかと問います」
「ひぅっ」
「いや、冗談だよ」
草陰に隠れた少女、小女は、僕の方をチラチラと確認する。
彼女も神の一種なのだろうか?
気にはなるがそれはともかく、クエストを進めよう。
「……た、食べないですか?」
「食べて欲しい?」
「い、いやです!」
「エヴァは食べて欲しいと報告します」
「え゛!?」
驚愕に目を見開く小女。
取り敢えずエヴァは無視だ。
「それで、何をすれば良いのかな?」
「え、あ、あの、その……は、花園に——やややっぱり良いです……!」
「オーケー、花園に行けば良いのね」
何故か草叢に引っ込もうとした小女を鷲掴みして捕まえ、取り敢えず道なりに進んでみる事にした。
機械翼を展開したエヴァに抱っこして貰い、低空飛行で出発。
「どう調理しますかと問います」
「た、たた食べないでぇ〜〜!!?」
「……食べないって」
聞こえて無いだろうけど。
今しばらく、小さな悲鳴が僕の手の中でこだました。
◇
しばらく行くと、湖に着いた。
エヴァは止まる事なく、湖へ熱線を射出。
湖は水蒸気爆発を起こして瞬く間に蒸発した。
後に残ったのは、茹で蛙と茹で大蛙だ。
その後、更に高速で飛行し、草原に着いた。
クラスターミサイルがボコスカ撃ち込まれ、草原は焦土と化した。
あたりに甲虫の破片が転がっていたが、それももう後の事。
また暫く飛行し、今度は荒野に着いた。
川の様に射出された無数の魔力矢が荒野をひっくり返し、全ての生命反応が駆逐された。
そして、花園に到着し、火炎放射器を取り出したエヴァを制して着陸。
……最後、何で花畑燃やそうとしたの? イタズラなの? 真相はエヴァのみぞ知る。
ともあれ——
「——これでクエストクリアだね」
と、小女に声を掛けると、小女は……。
「きゅう〜〜」
目を回して気絶していた。
《【運命クエスト】『迷い小人と花の園』がクリアされました》
最速タイムだ。
そして小女は何を言う暇も無く、目を回したままふわりと宙に溶ける様に消え去った。
……なんか次があるっぽいし、その時に文句言われそうだな。





