第22話 授業参観
第七位階上位
一限目の授業は『文』。
既に魂魄に存在する情報を、上手く取り出して実演する。
これは言語だけで無く、算術や武術にも通ずる授業なのだ……システム的にね。
情報のインプットにもやり方と言う物がある。
単純に情報だけを入力する極簡単な方法と、情報だけで無くそれを実践したと言う情報も入力する少し面倒な方法だ。
後者は、各々の体の情報も不可欠なので、手間で言うなら5倍以上の面倒臭さである。
なにぶん人数が人数なので、後者の方法は重要な事のみに施している。
一限目の文の授業は、記憶を思い出し、それを実践する。と言う極当たり前のプロセスを覚え込ませる意味合いもある。
そんな一限目のテーマは『手紙』である。
『ママ、だいすき!』と真ん中に大きく書かれた手紙は、うーたんから。
『みつけてくれて、ありがとう』と丁寧な文字で書かれた手紙は、めーたんから。
……しょうがないから抱き締めて額にキスしてあげた。まったく。しょうがないしょうがない。好感度上がるしね。
あーたんは、丁寧な文字で色んな事を端から端まで書いていた。種族がいいんちょなのは伊達ではない。
このままいいんちょに進化してちびっ子達の指揮頭になってくれ。
ぐーたんは、少し、まぁまぁ崩れた文字で、主に戦闘技術関連の感謝が感嘆符多めで書かれ、更に闘気法やら他の武術やらを教えて欲しいと感嘆符多めで書かれていた。
ぐーたんは男の子だなぁ。
しゅーたんは……何気に一番上手く言葉を操っていたが、要するに……このままずっとぐーたら過ごしたいので養ってください。と書かれていた。
……彼女は常に寝ている様に見えて、その意識はいつも思考の海を泳いでいる。僕が与えた情報を反芻し、理解を深めているのだ。深化し進化する。それがしゅーたんなのだ。
勿論養う。嫌と言っても逃さない。
ニヤニヤしてるこのみの懐に仕舞われた手紙は『おねえちゃん、だいすき』と書かれたミルクリスちゃんの手紙。
ニヨニヨしてる美人メイドが持ってる手紙は、アーシアことユヅルからのメイド達全員に向けた感謝の手紙。
ニコニコしてる双子の様な美少女、メイリンとメイコは、お互いに向けた手紙を大事そうに鞄に仕舞った。
そんなこんなで、一限目の文の授業も終わり、少しの休み時間後に二限目の算術が始まった。
◇
なんと言う事はないただの四則演算をする授業を終え、三、四限通しで行われる体育の時間である。
準備運動と軽いランニングを終え、その後剣術、槍術、体術の基本動作と立ち回り訓練を行い、満を侍して試合が行われた。
とは言え、いくら戦闘知識があったとしても、所詮は子供の試合である。
魔法を使わない単純な武力のぶつかり合いは、有り体に言って未熟であった。
実力で言うなら精々レベル20くらい。冒険者ならDにいけるかどうかで……まぁ子供なら情報量自体が少ないのでこんな感じだろう。
まともな試合になったのは、メイ親子とミルクリスちゃん&ユヅルくらいの物である。
だがまぁそれも仕方ない。
何せ彼等とそれ以外では、潜ってきた修羅場が違うのだ。
メイ親子やミルクリスちゃんは見ていただけだが、ユヅルとこのみは参戦した。
それ以外は戦いがあった事しか知らないのだから。
で、別の意味でまともじゃないのが獣人ちびっ子隊だ。
あーたんvsぐーたんの戦いでは、ギリギリであーたんの勝利。
肉体スペック的にはぐーたんの方が上だったので、あーたんの技と策略がぐーたんに勝った訳である。
うーたんvsめーたんの戦いは、うーたんの辛勝。凄まじい近接戦闘は、決して4歳そこらのちびっ子がやる様な事では無かった。
自主的にあぶれたしゅーたんは、黒霧先生と試合して指一本で完封され、ふて寝しながら浮遊している。
彼女等に限って言えば、このみと同じくあの戦いに参戦し、直接邪神の断片とぶつかり合った。
中でもうーたんとめーたんは、その戦いの前に一度死線を潜っている。
——力への渇望が違うのだ。
その後は、黒霧のやつの提案で突如発生した僕vs獣人ちびっ子隊と言うエキシビションマッチを、圧倒的な回避力と撫でスキルで制し、授業参観は終了と相成った。
◇
「あーん、もぐもぐ……んく……ママのご飯美味しいの〜」
「僕が作った訳じゃないけどね」
授業参観が終わった後は、給食試食会である。
献立は、栄養価の高い海藻サラダ。とろりとした食感のエッグドロップスープ。何とは言わないが豚肉の竜田揚げ。甘くてしっとりとしたスイートパンプキン。米。上級ポーション。
ポーションはあくまでも健康を維持する為に使われるので、週に一回の提供だ。
……まぁ、レベル50も行けば、よっぽどの偏食か食品自体が高レベルでない限り、食で体調を崩す事は無いが。
国民皆兵、最低でもレベル50くらい。と言うのは、そこら辺の政治的じじょーもあるのだ。
500万近くを養うには生産力がネックだが、最悪レベル50以上に育てて毎日上級ポーション一本と言う事も…………無きにしも非ず。
いやまぁ、食事と言うのは人に良い事と書くのだし、本当に最悪の事態にならない限りそんな事はしないがね。
うーたんには自分で食べる様に言いつけ、めーたんにも一回だけしてやり、れーたんとも交流した。
そんなこんなで試食会も終わり、シエスタの時間で皆が寝たのを見送ってから、ログアウトした。
やや遅めの昼食である。





