第33話 潜入、誰かのお城
第七位階上位
手早く剥いた桃を齧る。
「後4日も待たないと行けないなんて……生殺しですぅ」
「祭事終わった次の日には出来るんだから、お仕事してれば良いんじゃ無い?」
シキナの膝の上で桃をむしゃりつつ、シキナの文句を聞いてやる。
……と言うか、ちょうど世界的な祭事が終わった次の日にマレビト招致って、何らかの因果関係を感じる。敢えて合わせたのかな?
「うぅ、それはそうですけど……ユキちゃんがいけずですぅ」
「スタートダッシュを決める為の予習期間だと思えば良いと思うよ。祭事終わったらしばらくお休みなんだし」
「でもでもぉ……最前線には追い付けないですよねぇ。どうせやるからには——」
「——半日で追い越せるけどね」
沈黙。
山の上故にやや涼しげな青風が吹き抜け、遠くから聞こえる人々の声を蝉の鳴く声が覆い隠す。
扇風機の機械的な風が氷室から持ってこさせた大きな氷に当たり、冷たい空気が室内を循環していく。
そんなある種最高の環境で、僕は——桃を齧る。
もぐもぐ……。
「……ま、またまたぁ。私が良く知らないと思ってちょさないで欲しいなぁ……なんて」
「敵さえ倒せればレベル上がるんだから、直ぐ追いつくよ。計算上、4日後なら大体半日やれば追い付けるだろうね……僕が手助けすればね」
「成る程……やはりおかしいのはユキちゃんだったか」
あらゆる全てを無視して僕は桃をむしゃる。
◇
桃の時間を終え、アナザーにログインする。
森の迷宮を探索中のちびっ子達は、今頃アラン&カナデのパーティーと合流している事だろう。
……なんで森の迷宮にいるのかは分からんが……きっと象の肉を食べに行ったとかだと思う。
後、メィミーがソロで雲の迷宮をうろちょろしている……と言うか……どうやってか浮遊スキルを取得したみたいで、雲の迷宮をぷかぷか漂流している。
……一応念の為、飛行装備を付けたフィロ・M・フィリクロを派遣しておこう。
それじゃあ、城の迷宮に挑みに行こうか。
連れて行くメンバーは、大体人間サイズで20人くらいが良いだろう。
戦闘自体は修行の意味合いが強いので、既に強いレーベやロッテの様な人材は不要。強いかそうでもないか微妙なラインの子は連れて行こう。
メンバーは、ウルル。リッド。メロット。ラース。サンディア。レイエル。ミルちゃん。ディルヴァ。ニュイゼ。ルーベル。ミュリア。アルフラム。ルクス。白雪。氷白。レイーニャ。レミア。ルカナ。ルェルァ。リオン。桃花。
僕と補助の黒霧を入れたら23人。
他のメンバーは城の難易度や攻略後の事情次第で働いて貰うので、今は休ませておく。
イェガが持ち帰った緑色の星等を含む無数の装備品を分配し、上級ポーションや魔結晶等の回復アイテムを其々に持たせ、ジョブスキルや騎士団効果等を重ねて少しでも強化を施し、出発の準備は整った。
さっさとクリアして、マレビト招致の準備をしないとね。
◇
配下を揃えて向かった城の迷宮。
そこには、文字通りの大きな城が聳え立っていた。
場所は外壁の内側、綺麗に揃えられた木々や噴水が飾る広場の中央。
庭園は城を囲う様に存在し、その外側には巨大な外壁がある。
外壁には大きな門が付いているが、それはただの飾りで、壁自体に入る事は出来ても外に出る事は出来ない仕様だ。
また、庭園の四方にある噴水からは浄化された高純度魔力水が出る他、花壇には多彩な薬草の類いが育ち、ポーション作成に使える素材が沢山入手出来た。
城への入り口は4ヶ所。
最終的に合流する事になりそうだが、取り敢えずチームを4つに分けて進んで見る事にする。
チーム分けは、ウルル率いる、リッド。ラース。ルーベル。ミュリア。ルクスの6人チーム。
ミルちゃん率いる、ディルヴァ。ニュイゼ。レミア。ルェルァ。リオンの6人チーム。
アルフ君率いる、レイエル。白雪。氷白。桃花の5人に黒霧の補助を付けた6人チーム。
最後に、メロット。サンディア。レイーニャ。ルカナ。僕の5人チーム。
「それじゃあ皆、行こうか」
「……ん、頑張れ」
「〜〜♪ーー!!」
「にゃー……ほんとに行くのかにゃ〜?」
「何よ、猫娘は弱気ね。私は行くわよ」
全員行くんだよ。
いやまぁ、メロットとサンディアは平常運転だとして、レイーニャが乗り気じゃないのは、レイーニャが石橋を叩いて渡る慎重にゃんこだからだろう。
いきなり強くなったから基礎の方を徹底的にやっておきたい様だ。
対して、ルカナがいつにも増してやる気な理由は……系譜上叔父か大叔父くらいに当たるテリーが自分を庇って死んだ事に、少し思う所があった様である。
即ち、強くなろうとしている。
その動機は概ねプライド5割、親愛1割。その他4割くらいの配分だと思われる。
そんなお先真っ暗な我がチームを率いて、無駄に豪華な装飾の施された大門を開き、中に入る。
大門の先は、大広間。
その中央に立つのは、一体の異形。
水神の使徒 LV650MAX
人型をした水は、僕等が広間に入ると同時に、ゆらゆらと立ち上り、巨大化する。
いや、核となる部分は人型のままか。
——水を纏う水の化身。
肉体と同調する様に膨れ上がる殺気。
さぁ、攻略を始めよう。




