第32話 光の迷宮
第七位階上位
闇の迷宮を踏破し、光の迷宮に入った。
二層に出てきた魔物は……エルクーンなる翼の生えた石らしき生物だ。
何処と無くクリオネに似ており、乳白色の体には特に顔等に該当する部位は無い。
今後の天使調査の為にも、100匹程捕獲しておいた。
尚、リンカちゃんの従魔は、天使になるかもと伝えたら名前がテンテンになった。愛称はテンちゃんだ。
その後、三層に出たエルデクーンなるややデカい謎生物を撃破し、四層をささっと突破して五層に至った。
「さて、次は天使だろうが……属性相性的にリンカちゃんの鎖から逃れるのは非常に困難だ。多分悪魔より楽だと思うよ。何か質問は?」
正直悪魔がアレだったので、天使も僕の知るソレとは違うかもしれないが、天使と言うからには光属性だろう。
相反する闇属性の鎖から逃れるには……魔力操作能力次第だがそう簡単では無い。
見回す僕に、おずおずと手を挙げたのはノアちゃんだ。
桃髪の彼女は不安そうにやや俯き、上目遣いで僕を見る。
「あの……て、天使って事は……人型、ですか?」
「……僕が知ってる限りなら、天使も悪魔もその多くは人型を取る様に思う。ただ、さっきの悪魔は僕の知っている悪魔とは少し違かったから、天使も違う可能性は高い」
安堵の息をつくノアちゃん。
可能性は高いとか言ったが、実際の所どうかは分からない。
悪魔と悪魔獣の差、天使とエルクーンの差次第、もっと言えば悪魔の定義、天使の定義次第でその姿形、在り方は大きく変わってくる。
例えば、悪魔にはバフォメットやサキュバスみたいに幾つか種類があるが、その全てが大分類の上では悪魔種だ。
デモンビーストも悪魔種だから、デーモンと呼んでも差し支えは無いだろう。
敢えて説を唱えるなら、悪魔獣と悪魔の差は、生まれ出ずる時の知力や自我の差では無いだろうか?
その後悪魔獣が成長し、強い自我と大きな知恵を持った時、デーモンと言う種族になりたいと思った者はデーモンと言う種族に進化し、そうじゃない者はUnknownとして生き続ける。
繁栄したUnknownは種の名を与えられて種族として定着するのだろう。
例えばそう、竜の悪魔王、ベルゴの種族が悪魔竜だったのは、ベルゴが悪魔獣から進化し、独自の種族として進む道を選んだからではなかろうか?
これで悪魔竜が繁栄すれば何かしらの名前で呼ばれる事になるのだろう。
こう言った悪魔のソレと同様に、天使にも何かしらの定義があれば、この先に待ち受けるボスが人型以外の可能性はある。
……逆に言うと、この先にいるボス次第で、天使と言う名の重みがどの程度なのかが決まる訳だ。
他の子達は特に質問は無い様だったので、お決まりの布陣を敷く事に決定するミーティングを終え、ボスの待つ大部屋に到着した。
果たして、そこにいたボスは——
——人型のシルエットだった。
◇
そう、人型のシルエットだった。
ただし肉体はエルクーンやエルデクーンと同じ乳白色の石材らしき物で、それが人型をしているので、天使型のドールと言っても過言では無いだろう。
ちびっ子達が天使と戦っている間に、エルクーンのドロップ品を解剖してみた所……どうやらこの乳白色の鉱物は、聖属性の魔力を多分に含んだ純度の低い魔石である事が判明した。
つまりエルクーンと言う生物は……精霊で言うなら種精霊。その本質は天使の卵……と言うか天使の蛹であると言える。
ボスとして登場した天使は、肉体の形状を人型に取る事で羽化の時に人型になる様に調整されている段階である。
だから、ボスの腕をもいで成長させれば、腕の無い天使が誕生するだろう。
要するに、ボスは名前こそ天使だが、天使寸前の生物と言うのが正しい。
エルデクーンに何が起きて人型になるのかは未解明だが、そこら辺は追い追い確認していこう。
そんなこんなで、光の迷宮はふん縛られた天使未満がボコボコにされて終了した。
基本の4属性と光、闇の迷宮を突破した事で、ココネちゃん達のレベルは30を越え、リンカちゃんは20の半ばに至った。
レベルは現在のボリュームゾーンに迫っているし、装備のおかげもあって戦闘力では100位以内に入るだろう。
新たに行ける様になった6つの迷宮も、彼女等なら自力で突破出来る筈だ。
折角なので、本日最後の餞別をくれてやる事にした。
其々の武器を属性鋼から精霊鋼にランクアップ。
其々と話し合い、より上位の魔法等を付与。
従魔の1段階進化。
これ等の軽作業をパパッと終えた所で、良い時間だ。
「それじゃあ僕はおやつの桃を食べに行くので……皆は森の迷宮を踏破してね」
転移して現れた黒霧に身を任せ、僕の代わりにロッテを皆に付けて、ログアウトした。




