第30話 憐れなボス達
第七位階上位
亀が口から光線を放った。
それはノアちゃんの小盾にぶつかり、防がれる。
光線の射出と同時に突き出された大きな頭が、大口を開いてノアちゃんに迫る。
しかしそこは3回目。ノアちゃんはバックステップで噛み付き攻撃を大きく回避すると、腰が引けた姿勢のまま鎚を振り下ろす。
「ショック!」
収束された火の下級魔法が爆発し、亀の頭部へ焼け焦げの跡を残して多少のダメージを与える。
ノアちゃんが正面を受け持つ一方で、他のちびっこ達は四肢への攻撃を続けていた。
ココネちゃんやヒヨリン、リンカちゃんが刃で亀の足を切り刻み、近接攻撃力に乏しいアキちゃんは鳥と亀と猫の協力の元亀の足を削り取る。
甲羅の中に収納された足はもはやズタズタである。
これでも、何度か足を突き出す事で攻撃を行っていたが、今や亀に暴れる余力は残っていない。
再生に魔力を奪われ、亀の命は既に風前の灯火なのであった。
と言う訳で、僕は亀が生きたまま素材を剥ぐ事にした。
◇
大分時間を食った大亀との戦いを終え、次に向かったのは水の迷宮。
ちびっことは言え今日の連続戦闘で大分マシになって来た5人がいれば、一層の攻略など容易い物で、そのままの勢いで無事二層の攻略も完了した。
リンカちゃんは新たに蛇のシャ助を仲間に迎え、絶好調のご様子。
蛇の名はサスケの間違いなのかシャケなのか、真実は威嚇音に助を付けただけである。
どうやら、亀が雄で、猫と鳥が雌で、蛇は分からんとの判断の元名付けをしたらしい。
そんなこんなで三層のボス戦を易々と突破し、四層をささっと超えて、五層。
ブルーベリルサーペント戦だ。
ブルーベリルサーペントは、青白い結晶質の外殻を持つ大型の蛇だ。
主な戦闘方法は水弾や水刃、ブレスや光線などの水魔法、噛み付きとそれに付随する軽度から中度の毒属性、それから尾が剣の様になっており、体をしならせて斬撃などもやって来る様だ。
エレベーターが地面に到達すると同時に、ピィコとカメ吉が空を飛び、ニャニャミとシャ助がボスの遠距離攻撃を撃ち落とす。
初撃の迎撃を従魔達に任せ、ココネちゃんとヒヨリンは左右へ、アキちゃんは後方へ、ノアちゃんとリンカちゃんは真っ直ぐ大蛇へ突っ込んでいった。
遠距離攻撃の全てを避けながら駆けるリンカちゃんがボスに接敵する前に、自力で飛んだピィコとぶん投げられたカメ吉が大蛇へ襲い掛かる。
先制はピィコ。
「ピィィイーーッッ‼︎」
広間に響き渡る裂帛の気合いと共に放たれた火炎の広域ブレスが、ブルーベリルサーペントの全身に降り掛かり、その結晶質の鱗を保温する。
気合い十分とは言え、水属性を纏うブルーベリルサーペントに、レベル十代半ばのピィコ程度では大したダメージを与えられない。
しかし、目的は達された。
火によって知覚が閉ざされるのを嫌ったブルーベリルサーペントは、射線から逃れようと頭部を右斜め後方にずらし——
——衝突。
僕によってぶん投げられたカメ吉がブルーベリルサーペントの喉辺りに直撃した。
響き渡る破砕音。
飛び散る青白い結晶。
ブルーベリルサーペントは今の一撃で体力のおおよそ3〜4割を削られ、カメ吉は甲羅がひび割れてHPゲージの6割少々が消し飛んだ。
頭部近傍に大打撃を受けたブルーベリルサーペントはドサリと地面に倒れ込み、あろうことか動きをとめる。
「い、いまだーっ!!」
若干引き気味のリンカちゃんの声が広間をこだまし、引き気味のちびっこ達の声がそれに応える。
……いや、別に頭を狙った訳では無いんだよ……まぁ、ちょっと狙ったのは確かだけど。こんなに上手くいく確率はそんなに高くなかった筈だ。
つまり、悪いのは僕じゃなくて上手くやったピィコだ。
斯くして、憐れなブルーベリルサーペントはちびっこの群れに囲まれて、黒い鎖で雁字搦めにされた挙句斬られ殴られ貫かれてお亡くなりになった。
◇
ちびっこ達は無事4属性迷宮を踏破した。
踏破報酬である鉄の宝箱《小》とフェイクコア《小》を入手し、魔法陣により昼空の下へ帰還する。
キリが良いのでここらで小休止だ。
疎らな人影を避け、ちょっと奥まった路地裏にある、僕が所有している空き地に向かう。
「……さて、皆、取り敢えずお疲れ様。この後直ぐに光と闇の迷宮に入るけど、少しだけ休憩にするよ」
そう声を掛けつつ、草葉が生い茂る空き地に石で出来た人数分の椅子と少し大きめな机を作り、序でにちょっと凝った装飾を施し屋根や柱を付けて……立派な休憩所が完成。
「「「「「……」」」」」
「さぁ、突っ立って無いで座ってね。飲み物はジュースで良いよね?」
ポカーンと口を開ける5人に着席を促し、飲み物と従魔の餌を用意する。
ジュースと言ったがその実アルル味のマナポーションで、餌と言ったがその実彼等の上位種の素材を使った進化を促すペレットだ。
それじゃあ、タク達にやった様に、ちびっこ達にも餞別をくれてやるとしようか。




