第28話 火の迷宮 再び
第七位階上位
リン LV5
リンカちゃんは、バリバリの初期装備だった。
吹けば飛ぶレベルである。
心なしかちょっと恥ずかしそうにしながら、リンカちゃんは僕を見ている。
「うぅ……ユッキー強そう。うーん、ユッキーがいるなら、ちゃんとやっとけば良かったなぁ」
「まぁ、二十日くらいの遅れなら直ぐに追いつけるんじゃないかな?」
ココネちゃん達にはね。
「うむぅ……因みにユッキーのレベルは幾つ?」
「600ちょっとくらいかな」
「600……結構離れてるなぁ。私まだ5なんだけど……」
「なにも恥ずべき事はないと思うよ。本当に」
レベル600と比べると5も50も大して変わんないよ。等しく塵芥だ。だから恥ずかしくない。
「そんなことより、さっとレベル上げして、ささっと迷宮攻略して、さささっと好きな動物をテイムしにいこう」
「う、うん……そんな簡単にテイム出来るのぉ? うんともすんとも言わなかったんだけど」
「ふふ、我に秘策有り。だよ」
僕は意味ありげにニヤリと微笑んだ。
そう、テイムとやったらぽんっとテイム出来る感じのアレである。
それはつまりただテイムするだけのとっても簡単な作戦なのであ——
◇
最初に向かったのは、鍛錬島、訓練窟。
出てくる魔物は、ゴブリンやトカゲ、小型恐竜等で、レベルも10以下と御しやすい。
幸いリンカちゃんには高い戦闘技術と鋭い感覚があるので、慣らしも兼ねて一人で戦わせてみた。
得物は槍を使っていたので槍杖武器の楔を渡し、変装用に適当に作ったフード付きのロングコートも装備させてある。
せっかくなので姉妹に装備させてるのと同じ制服をリンカちゃんパーティーに支給しよう。
僕がゴソゴソと内職をしている一方で、リンカちゃんはゴブリンを殲滅し、トカゲを一掃し、小型恐竜を駆逐し、ボスの少しだけ大きい小型恐竜を切り伏せた。
これなら特に手を加える必要はない。
レベルを上げ、装備の質を上げていけば、放っておいても自然に強くなっていくだろう。
次の火の迷宮からテイムの仕方を教えて行こうか。
◇
所変わって火の迷宮二層。
一層に出現したスライムやゴブリン、エレメントはリンカちゃんの敵ではなく、ここに至る僅かな時間でリンカちゃんはレベル10になった。
新たに取得したスキルは、目利きと幸運。鑑定スキルによるテイム範囲の拡大が狙いだ。目利きにも多少の拡張効果があるので、取得しておいて損はない。
「さて、リンカちゃん。ここに鷹がいます」
「うーん、いるというか……ある……?」
場所は二層の入り口。
早速とばかりに飛来したレッドホークを捕獲した。
「鷹を鷲掴みなんて、皮肉がきいてるねぇ」
ニシシと笑うリンカちゃん。その発想はなかった。まぁ楽しそうで何より。
「これからリンカちゃんにはこれをテイムして貰います」
「えっ? テイム出来るのっ!?」
僕は意味ありげにニコリと微笑んだ。
「欲しい?」
「欲しい!」
「テイム、する?」
「する! 下級契約!」
リンカちゃんは叫んだ。
しゅわっと淡い光がリンカちゃんの手から溢れ、レッドホークに吸い込まれる!
「……」
「……」
「ピィ?」
「てえぇぃむぅぅっっ!!」
咆哮と共に放たれた淡い光がしゅわっとレッドホークへ吸い込まれる!
「……」
「……」
「ピィッピィッ!」
「テイム」
低めなハスキーボイスと共に零れ落ちた淡い光がレッドホークむにゃむにゃ。
「……」
「……」
「ピィィーーッ!」
「ユッキー……」
「と、この様に。通常の下級契約では迷宮の魔物を使役する事は原則出来ません」
「ユッキィィーー!!」
泣かないでよ。
肩を掴んでゆすって来るリンカちゃんを無視して、僕はインベントリから幾つかのアイテムを取り出した。
「先ずはこれ、『支配の鳥籠』。これは内部空間が拡張されていて、最大レベル100までの魔物を5体入れる事が出来ます。大きさの制限は……タク二人分くらいだね。迷宮産の魔物を使役する事を目的とした魔道具で、捕獲した魔物の支配権を強奪出来る。質問は?」
「ユッキーは捕獲出来ますかっ!」
「レベル600なので出来ません。大きい獲物は入り口に近づけると自動的に収監されます」
「重量はどうなりますか?」
「既定値以内なら完全に軽減されます。浮遊機能及び自動追跡機能搭載なので持つ必要もありません。魔力量が半分を切ると上端の魔結晶が赤くなるから、魔力が切れる前に補給してね」
テイム出来る様になると支柱の魔石が暗い赤から綺麗な青色に変わり、分かりやすく教えてくれる仕様である。
鳥籠をリンカちゃんに換装させ、次に取り出したのは魔物召喚板。
「これはモンスターカード。テイムした魔物の魂を保護して、万が一死亡しても蘇生出来る様にするよ」
通常のモンスターカードは魔導生成の魔物を召喚するが、リンカちゃんに用意したのはその上位版の魂魄を保護出来るモンスターカードである。
通常版は魔導鋼、上位版は魔賢鋼を使っている。
「可愛い従妹にはモンスターカードを10枚あげる。ついでにカードホルダーもつけとこう」
「わぁ、わぁぁ……ユッキー大好き」
「うん、知ってる」
カードホルダーという名のポーチは、モンスターカードの強化素材であるエレメンタルストーンを入れられる他、装備者の意思をトレースして拡張空間内から望みのカードをアポート出来る便利仕様である。
「それじゃあ、今回は初回限定で即テイム出来る様にするね」
「ユッキー」
「ん?」
「愛してる」
「知ってる」
「よっしゃぁテイム! ヒャッハー!!」
……鬱憤が溜まってたんだねぇ。




