第10話 ユミ、忙しい
第三位階上位
「ようこそ、鈴守へ!」
そんなカッコいい言葉を連れていかれながら言う鈴守君。
相変わらず可愛いなぁ、もう……!
それを追い掛けて行ったアヤちゃんも可愛い。兄弟揃って可愛いなんて……本当に最高だよぉ。
鈴守君はこれからお務めで大変だし、私も頑張らなきゃね!
決意も新たにグッと握り拳を作る。
「ふぅ……」
これからのお仕事を前に、軽く深呼吸をした。さぁ……始めようかな!
「それじゃあ皆。疲れてる所悪いんだけど、早速準備手伝いを始めるよ!」
皆の気合いの掛け声を聞き流しつつ、これからやる事を考える。
先ず優先すべきなのは、差し入れのお昼ご飯の調理。
お夕飯の準備も今から取り掛からないと間に合わないし……各客間の準備は終わってるだろうから不備がないかのチェック、後は……設営はもう終わってるのかな? まだだったら宮代君と雨谷さんにはそっちに行って貰おう。
◇
「——宮代君と雨谷さんは設営に向かってね。時間は掛かっても良いけど、10時くらいには色々送られて来るから、終わり次第本殿に帰ってきてね、ね?」
「了解」
用意された各人の部屋に荷物を置き、改めて集まった各員へ指示を飛ばす。
鈴木君は学生祭場の準備に戻ったし、チサトとリッちゃんキョウちゃんは客間の確認に、後のミユとユリちゃんと飯高さんは、私と一緒におばさま方のお手伝いで料理を作る。
「ミユ、ユリちゃん、飯高さん、付いてきてね」
「あぁ、ちょっと待った、ユミ」
ぞろぞろと移動を開始した所で、宮代君から待ったが掛かった。
「何かな?」
なるべく手短にして欲しいんだけど。
「ユミは今日特に忙しいんだし、ケイの説明係は俺がやった方が良いだろ」
「……」
はぁ? ……はぁ、これだから宮代君は。
「……宮代君は雨谷さんにしっかり教えてあげて欲しいな」
「おう。それはそれとして、俺が2人に教えた方が良いだろ? ミサキもケイもしっかりしてるから2人同時でも問題ない。それにユミの負担も——」
「——いや、良いよ。飯高さんを招待したのは私だからね」
「それは、そうだが……」
本当にもう、宮代君はいっつもそうやって善意の押し売りをして!
雨谷さんとココネちゃんが可哀想だよ!
「それにほら、鈴守君が私に招待する様に言ったんだから、私の仕事でしょう?」
「それも、そうだがなぁ……」
もう一押しだね。えーと……そうだ!
「……それにさぁ……そう言う事って、もう少し前から言って貰わないと困るんだよ? 私にだって計画って言うのがあるんだからね。ね?」
「そ、うだな……すまん。次からは気を付ける」
「うんうん。それじゃあ宮代君は雨谷さんをしっかり教育してあげてね」
「おう」
奥の部屋に戻って行く2人を見送った。
……ふぅ。まったくもう……雨谷さんも大変だね。
「……じゃあ皆、先ずは更衣室に行くから、付いてきてね?」
◇
用意された割烹着を着込み、向かった調理場では、既におばさま達が仕込みを始めていた。
何人か私達と同じくらいの女の子もいて、その中には今年から入ったらしい私の知らない子もいる。
……鈴ヶ森女学院の人達かな? それにしては……小さいけど。
挨拶をして調理場に入る。
取り敢えず伽夏さん……はいないみたいだし、例年通り、お手伝いを始めつつ事情を聞いておこうかな。
と言う訳で、端っこで差し入れ用のおにぎりを作り始めている小さい子達の方へ行ってみる。
「ココネちゃん、おはよう」
「あ、ユミさん。おはようございます! 皆さんも、今日はよろしくお願いします」
礼儀正しいココネちゃんと軽くお話し、差し入れを作りつつ他の子を紹介して貰う。
「皆、やりながら聞いて。このお姉さんは鈴巫女補佐の資格を持ってる次期巫女頭の竜胆祐美さん。とっても凄い人だから、失礼の無いようにしてね」
「ご紹介にあずかりました。竜胆祐美です。分からない事とか困った事があったら何でも聞いてね? こっちの3人は——」
此方のメンバーを紹介した後、一人一人に自己紹介をして貰う。
最初はちょっと気が小さそうな黒髪の女の子。
「お、おはよう、ございますっ。も、森野愛です! きょきょ、今日はよろしくお願いしますぅ!」
「アイちゃんだね? よろしく」
続いて、茶髪の活発そうな女の子に先を促された、真面目そうなメガネの女の子。
「……東雲秋です。趣味は人間観察。人見知りなので失礼があるかも知れませんが、どうぞよろしくお願いします」
「アキちゃんだね。大変かもしれないけど、よろしくね」
最後に、茶髪で活発そうな女の子。
「ふっふっふー。おっはようございまーす! 野村妃里ですっ、気軽にヒヨリンって呼んでくださいねぇ!」
「うんうん。ヒヨリちゃんだね」
「ユミお姉さん達って、アナザーやってますよね? 私達も合流したいんですけどぉ……良いですか?」
「うーん。特にパーティーの制限とかはないんだけど、一応鈴守君に聞いておくよ。多分大丈夫だからね」
「やった! ありがとうございます! ふふ〜《これでタクさんと一緒にいれるぅ》」
……宮代君、また女の子誑かして……刺されても私知らないからね!
その後は、交流を深めつつ差し入れやお昼ご飯の準備を進めた。
しばらくして、駆け込んで来た巫女のお姉さんから、その一報は届いた。
「鈴守沙里奈様御一行、及び鈴森霧香様御一行、間も無く御到着致します!」
え!? ……去年よりずっと早い……まだ別館の客室確認終わってないよね? と、取り敢えず差し入れ準備はおばさま方に任せるとして……そうだっ、神堂さんに人手を融通して貰おう!




