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第11話:揉みたい

 運営様よりR18指定を受けたため、修正いたしました。(2019年3月2日)


 元の小説は修正作業が終わり次第『ノクターン』に掲載予定です。


 イオリーンが正式にイングリッドの家に同居することになって暫くのこと。


 とても平穏であり、イングリッドの性欲もクラミルの安眠を妨害しない程度には静かな日々である。


「……ぁあ~、ハルちゃんのほっぺにチュッてしてぇ」


 いつものように、クラミルが用意したパパスコ社の朝食パンを食べながらテーブルを囲んでいる最中のイングリッドの発言。



「はぁ~、だったら揉みに行ってくださいね。

 でも無理矢理やって警察にタイーホされたら保釈金払いませんからそのつもりでいてください」


「あ、あんた私という女がいながら他の女にも手を出す気!?」



 イングリッドは二人の顔を交互に見る。


 そして、もそもそと飼い葉を咀嚼する冷めたクラミルには「愛はほっぺにチュッから始まる」と説く。


 顔を真っ赤にし、怒りをあらわにするイオリーンには「ワタシのラブキッスで心は広くなっているはずだ」と説く。


 クラミルは出会って最初に乳を揉まれてイングリッド専用愛馬となった過去の自分を思い出し、

 イオリーンは食事のたびにご飯にふりかけられるラブ触手液でパンパンに張った自分のお腹を撫でてさらに顔を赤くする。


 イングリッドはこういう人間であると、二人は言葉だけで思い出して呆れや怒りすら超越した境地に達してしまったのだ。

 これはもう、宗教のようなものであり、イングリッドは愛という名の鎖で彼女らを虜にしているのだ。



「で、掃除屋ギルド受付嬢にして未だにワタシに靡かないハルカトーゼを落とそうと思うんだ」


「あー、それはつまり落とし穴とかではなく、恋に?」


「ゥイィィ~グザクトリィ~、その通り!」


 チェケラ、と陽気な掛声と共に真面目だか不真面目だか判断出来ないイングリッド。


 意味もなく机の上に立ち上がるが、本当に意味がないので再び椅子に座り直す。



「私だけじゃ物足りない訳?」


「おいおい、イオリーン。自分のお腹見てみ?

 ワタシのラブ触手液を飲み過ぎて朝食のパンも喉を通らねぇだろ?

 もう一人いればそれが半分になるぜ?」



 イングリッドの触手から放出されるラブジュースは栄養満点でケフィア以上に濃厚美味なので三食イングリッドのジュースでも問題はない。

 体温くらいの熱で凝固を始めるため、ヨーグルトめいた食感もお口を気持ちよくする要因である。


 それと付け加えておくと、ゆっくりと身体に吸収されるので害はないのだが、吸収には時間が掛かるので愛を感じられるが嬉しい悲鳴というやつだ。


 しかし、パパスコ社のパンはポイントシールを集めるとサリー&ガストンのグッズが手に入るため毎朝きちんと食べたいものである。

 勿論、味が良いのも理由ではある。パパスコ社は最高のパン会社なのだ!


 イオリーンは再び考える。

 確かに自分一人でイングリッドの愛を受け止めるのは体力的にきついし、朝のパンはきちんと食べたい。


 ならばどうするか? 答えはやはりイングリッドと同じ。もう一人同居人が増えることが望ましいのだ。



「まったく、昼間は娼館なり仕事なりに出掛けて発散しているでしょうに、夜は夜でお忙しい主ですね」


「そう言うなってクラミル。

 ワタシの愛情は触手と人間のハーフって時点で分かるだろ?」


「私みたいに性欲抑制の薬でも常用することをお勧めします」


「お前、いくらワタシのチュッチュが激しいからって薬に頼ってまで感覚を鈍麻すんなよ。

 ってか普段からワタシに冷たいのもその薬が原因じゃね?」



 イオリーンはクラミルを見る。

 一見無表情で平然としているようだが、必死に発情を隠しているのは確定的に明らかであるが視線に気づいたクラミルは静かに首を振る。


 これは薬で抑えて尚、イングリッドの吐息や雰囲気に酔いしれているが、気付かれれば腰砕けになるまでほっぺにチュッされるために耐えているのだ。


 クラミルとてイングリッドのことを嫌っている訳ではない。むしろ主として、一人の女性として心から愛している。


 だが、従者としての業務に差し支えるようでは彼女の矜持に傷がつく。だからこそ、薬で可能な限り自分の感情を騙し、平然と接する。


 まぁ、何が言いたいかと言えば、露出狂がバレないように露出を楽しんでいるのと同じ心境な訳だ。


 パンチラとて見えそうで見えないのがそそるのであって、パンモロなどクラミルの美学としては断じて認められないのだから。つまりはそういうことだ。



「でも、イングリッド。ギルド受付のハルカトーゼさんの攻略は無理だと思うわよ」


 イオリーンは話題を戻そうとする。


「あの人、体重が2トンあるそうだけど、噂ではロボットらしいもの」


「え? その噂マジ?」



 イオリーンはこの街に越してきて、ここ最近は大企業の社長貴族であることから多くの人物と会う機会を設けていた。


 その中には掃除屋ギルドのマスターも居たし、ギルドマスターと関係を持つことでギルド職員達の身体測定データの閲覧もしている。


 これもひとえにイングリッドへの愛が為せる情報収集なのだが、その過程で気づいたことなのだ。



「大体さ、あんた年幾つ?」


「おう! 聞いて驚け、ワタシは20歳くらいだ!」


 意外や意外、本人も自分の年齢をよく覚えてはいないのだが、体が植物めいて頑丈で強靭な再生能力を持つイングリッドは自堕落で爛れた性活をしていても若いのだ。


「そう、私は16歳だけど、それはまぁいいわ。

 ここに世界大戦前の情報誌があるけど見てくれる?」


 机に拡げられた情報誌にはハルカトーゼと瓜二つの人物が載っているではないか!!


 しかも説明文章によると、あらゆるニーズに応える究極メイド型ロボット、と書かれている。製造年月日は今から100年ほど前。



「これでわかったでしょ?

 つまりハルカトーゼさんはロボットなのよ!!」


「な、なんだってぇぇぇぇぇー!?」


「あ、私は知ってましたよ」


 一人、我関せずと牛乳を飲むクラミル。

 何でも彼女は、イングリッドがギルドに登録した時すでに聞かされていたのだとか。

 これまでのイオリーンとのやりとりは何だったのかと言うほどの茶番を見せつけてくれたわけだが、さてどうするイングリッド!?



「決まってるぜ!

 ハルちゃんがロボットだとしても、あのほっぺの柔らかさが作り物だとしても、愛は変わらん!」





 イングリッドは並みの百合ではない!

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