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精神の牢獄3



 闇色の光なんて表現はおかしいが、他に現し様が無い物体がシンタと馬のアスガルドを飲み込み、無味無臭だった部屋の様相が生臭さを纏う。


 そこかしこに血管の如く張り巡らされた凹凸が柔らかい感触を返し気持ちが悪く、シンタ達を中心に材質が肉感的に変化し内臓を連想する。


「うあ、嫌だ……うわあああああああああ!」

「ブルヒィンンンンンン」


 取り込まれていくシンタとアスガルドが断末魔を上げる。闇色の光に粗末な顔の様な影が浮き上がり一回転、醜い笑みを浮かべて膨れ上がる。


「嫌ぁぁぁ! お兄ちゃん!」


 マリナが駆け寄ろうともがくが、元から抱えていたシャリナが抱き留めて離さない様に拘束。可哀想だがこうなったら殺すしか俺達の生き残る術は無いからだ。


 逞しい馬の脚が落ちた眼鏡を踏み抜く。闇の晴れた先には四足を持つ人馬一体の胴体と2頭を生やした見上げる程巨大な"化け物"の姿があった。


 両手には鉈状の大きさに変化したシンタのブレイカーを持ち術士風の姿。割と軽装なのが逆に小賢しい。


「皆、油断するなよ」


 ノルドが号令と共に化創化、上半身が金属と入れ替わり肥大。仮面にモノアイが斜め十字に開き、側頭からは骨ばった角が大小2対伸び両肩に氷の結晶が咲く。


 化け物に青く輝くアイスロングソードを突き付ける。


 続いてマリナを避難させてシャリナも化創化。仮面を被ると全身が毛皮に包まれて面が猫顔に変化。両手が変形してボウガンに、尻尾も強靭に強化される。


 何時もの様にアギラオが【バトルソング】を歌い力を底上げ、フォルクが【エール】で速度を強化。マリが1番槍で飛び出し一撃必殺を狙う。


 肉弾戦が苦手そうに見えた化け物が軽やかにマリの蛇槍を受け弾き、周囲に力ある文字を刻み込む。


 文字が発光して幾条もの炎の槍を投擲、咄嗟にシャリナがボウガンを連射して対抗するも物量に負けて被弾。特に氷の化創士たるノルドには多大なダメージとなって降り掛かる。


「くそ、魔法を使うのかあいつ。火は勘弁!」


 お返しに氷球を打ち出し牽制。氷球は化け物の新たな魔文字であっさりと掻き消される。


「攻撃も回避も自在ってか、この野郎」


「ならば動きを封じれば良い~♪」


 妙な歌詞で歌いつつ、アギラオが鎖鎌を投擲。絡め捕ろうとするが逆にもぎ取られる。


「何してるんだ、お前は。化け物に力で勝てるかい」


 気持ち呆れ笑いのノルド。


 お構い無しに化け物が魔文字を配し、急遽跳躍。マリに斬撃を浴びせ掛ける。辛うじて盾で受け流すと、息つく間も無く待機していた風刃を浴びせられ吹き飛ぶマリ。


 冷静に怒れる目でフォルクが【エール】から【リジェネ】に曲を変更、怪我人の傷が徐々に癒される。


 傷が癒えて動きの良くなったノルドが逆襲の斬撃を次々に当てて手傷を負わせる事に成功、形勢の逆転を狙う。


 素体がシンタだからかノルドには剣筋が読み易く、化け物の剣を尽く回避。


「私だってやれるんですからね!」


 高速で機動しつつ脳内トリガーを乱打、矢が乱射され馬脚に雨の如く突き刺さる。


 機動力を削がれた化け物にマリとノルドの攻撃が次々重ねられ、遂に止めかと言う一撃を叩き込むノルド。


 油断した訳じゃないが剣がブレイカーに受けられへし折られる。


「な! 嘘だろ?」


 そのまま空中でノルドの胴を狙いもう一刀が振り切られる……、あわや真っ二つかと思ったが脇腹に開いた口がブレイカーを噛み砕いていた。

 

「【噛み付き】が頭部でだけ開く訳じゃないってね」


 おどけながら短くなったアイスソードで頭をかち割った。


 崩れ落ちる化け物。


 生き残ったが嬉しさは皆無、誰もが重い雰囲気の中、マリナが恐る恐る化け物に近寄りすすり泣く。


「お兄ちゃん……。死んじゃったのぅ? 置いてかないで……」


 悲痛な声に誰も答えられない。せめてもの手向けにとアギラオが歌う。


『吹き抜ける 風は謡う 深遠の水底にさえ』


『深く 泡の鼓動が聞こえる』


『君を失ったのは誰?』


『泥に塗れても 翼をもがれても 忘れるな』


『手を伸ばせ その手を女神は掴むだろう』


『力強く浮き上がるならば もう弄う者は居ない 涙流しても 蔑む刃は形骸の手の中』


『君にも謡う潮騒が届いたなら』


『女神さえ心に居る』


『君を失ったのは何時?』


『取り戻せ』


『泥に塗れても 翼をもがれても 忘れるな』


『吹き抜ける 風は謡う 深遠の水底にさえ』


『深く 泡の鼓動が聞こえる』



 静かに余韻が残る、マリナを抱え上げて出口に向かう俺達。


「あっ……、光ってる」


 マリナが背後を見て呟く、不審に思い振り向くと化け物が小さく萎んでいき消滅。


 シンタとアスガルドが変わりに現れた。


 走り寄るノルドが生死を確認すると生きている事が判る。


「マリナ!! 生きてるよ、シンタも馬も」


 駆け寄る皆。


 シンタの体から滲み出た不思議な光が一言。


「ありがとう」


 と言って消失、視界が白く漂白され世界が崩れる。目を覚ますと俺達は元の場所に倒れていた。


「戻ったのか?」


 ノルドが持つ剣が折れている事だけが夢じゃないと証明していた。




 


 

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