表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

逃走



「残念、逃がさないっての!」


 走り込む勢いを利用して飛び込み付きを放つノルド。真逆の位置から表れたノルド達に反応出来る筈も無く、親玉らしき中年は背から腹を突き破られ、傷口が氷結させられていく。


 脊髄を破壊され凍らされる激痛に、もがき苦しむ男の手からロケットが転がり落ちる。


 落ちた衝撃で開いた蓋には美しいビスクドールの肖像が彫られていた。


 今際の際にイラクシを見た親玉らしき中年は「何故?」と呟いて絶命した。


「お知り合いですか?」


 剣先を差すノルドに。


「いんや、全然」


 と返すイラクシ。


 聞いておいて何だけど、動揺を抑える為のやり取りでしかない。何故かって? 俺があくせく働いて建てたお家が燃えてるからさ!


 混乱そのままに、すぐさま氷球を生み出してぶつけるが、焼け石に水。火が付いてそれなりに経過してる訳で家は全焼だよ、畜生。


 むせび泣く俺に無責任にも「また稼いで建てりゃー良いじゃん」とのたまうアギラオ。


 お仕置きの梅干しヘッドロックでアギラオのこめかみを破壊しつつイラクシは手早く治療を済ませていた。


 シャリナは酷い火傷だったが化創化が解けると変異箇所の傷は疲労に置き換わる為今は綺麗に元に戻っている。


 おそらく暫くは目覚めないだろうけど、今回のやり方は褒めてやれないな、シャリナにも戦闘訓練を施さないと安心して戦ってられん。


 思考に沈み込んでいたノルドを聞きたくも無い声が引き戻す。


「我々は警邏部隊だ。速やかに武装解除して降伏せよ。君達の身分と目的の開示を求める!」


「ご挨拶だな、事が全て済んでからのご出勤、痛み入るね」


 昔馴染みの古傷が疼く。


「貴様か、この惨状を何とする? 僻地とは言え街中で炎上騒ぎとは目に余る行為だと思うがね?」


 申し開きでも?とでも言う雰囲気だ。


「相変わらず嫌味だな。誰が好き好んで我が家を焼く!? 俺達ゃ被害者だ!」


 何時に無く機嫌の悪いノルドの剣幕に驚く俺達。ぐるりと一瞥する男。


「ふむ。貴様等は軽傷、地面には無数の死体。ぼろ屑共の装備には覚えがあるな。なんだったか……。で?」


 どうでも良いとでも言う態度の男の物言いにカチンと来たアギラオが抗議しようと詰め寄ると隊員がいきなり組み付いて拘束。流れる様に地べたに組み伏せた。


「野蛮な小猿だな。躾が成っていないぞ"化け物"よ?」


「なっ、小猿!?」


 気色ばむアギラオ。


 お構い無しにピクリともしない鉄面皮で男が言い放つ。不穏な気配を感じさせる成り行きにシンタは妹を招き寄せた。


「まさかこいつが来るとわ、運が無いな。言っても聞かないとか、マジ勘弁」


 嘆息するノルド。


「やあやあ、幾ら屑と言え殺人はいかんなー貴様等? 詰め所までご足労願えるかな? 君達に人権なぞ無いがね」


 問答無用で武器を抜く男と警邏部隊。どうも男とノルドには因縁があるみたいで一触即発の雰囲気を醸し出す。


 イラクシにノルドが目線を飛ばすとゆるゆると首を振り、気にするなと仕草で答える。


「不当に捕まるのは御免だね。皆、逃げるぞ」


 ノルドは隠さずに化創化して昏倒するシャリナを抱え、森を目指し逃走。気配を薄めたシンタが馬車を回し、フォルクを回収。


 マリはアギラオを組み伏せている警邏員を、槍の柄で掬い投げ2人で馬車に取り付く。


「抵抗したな。殺せ」


 鉄面皮が言い放つ。


「あいつと何があったのか、絶対聞き出すからな~~! おっさん」


 森に向かい怒鳴るアギラオ。今回は完全に巻き込まれなんで強気だ。同意だとフォルクもギターを鳴らす。


 懸命に馬車を走らせるが相手は全員が単騎。追いやるべくマリに【黒磁縛鎖】で封殺して貰おうと頑張る。


 半数は鎖に囚われ行動が遅れるが転倒は免れる。


「無駄に鍛えられた集団だな、野郎」何も出来ないアギラオが苛立つ。


 森からもノルドであろう散発的に氷球飛んで行くが、狙いが甘く当たらない。出し惜しみして居られないとフォルクも動く。


 揺れる馬車内で靴ドラムが刻めない為威力が落ちるが、ギターだけで演奏。呪歌【アルコールニア】が発動。悪酔いを擬似的に再現する。


 これは流石に効いたみたいで更に半数が脱落、が鉄面皮は青い顔をしながらも意地なのか全速で馬を駆る。


「これなら、どう?」


 マリが長い詠唱の後に【マッドプール】を放つ。




 地面が目に見える速度で泥と化し、不用意に踏み込んだ馬の脚を深く飲み込んでいく。


 警邏隊員もつんのめった衝撃で落馬。


 泥が衝撃を逃がし即死とはなっていない様子だけど、何故か鉄面皮だけは汚れずに下馬していた。


「器用な奴」


 珍しく驚いた風にマリが呟いた。


 辛くも警邏部隊から距離を空ける事に成功したけれど、暫くはテイケンレッツには戻れない。仕方なく町の南にある森を突き進んでいるがこっちには何があっただろうか?


 合流したノルドを締め上げるアギラオを眺め、気持ちを切り替えてシンタは広い道を求めて馬首を向けた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ